今年22回目を迎えるユニコーンステークスは「出世レース」として知られている。
2011年の秋にも、この連載で出世レースについて書いた。あれから6年弱。ユニコーンステークスの勝ち馬を中心とする上位入着馬の出世ぶりは、相変わらず見事である。
このレースを勝ち、のちに交流レースを含むGI優勝馬となったのは、1996年シンコウウインディ、97年タイキシャトル、98年ウイングアロー、99年ゴールドティアラ、2000年アグネスデジタル、03年ユートピア、05年カネヒキリ、13年ベストウォーリア、15年ノンコノユメ、16年ゴールドドリーム。
過去21回のうち、実に10回の勝ち馬がGIホースになっているのだ。そのほか、04年3着のパーソナルラッシュ、11年2着のグレープブランデー、13年3着のサウンドトゥルー、14年2着のコーリンベリーものちにGIを勝っている。
このレース、第5回の00年までは、9月の終わりか10月の初めに中山ダート1800m(97年は東京ダート1600m)で行われており、特にその5年の勝ち馬の出世ぶりが目覚ましかった。
シンコウウインディは、このレースを勝った翌97年のフェブラリーステークス。タイキシャトルはここを勝った97年のマイルチャンピオンシップとスプリンターズステークス、翌98年の安田記念、仏GIジャックルマロワ賞、マイルチャンピオンシップ。ウイングアローは2年後、00年のフェブラリーステークスとジャパンカップダート。ゴールドティアラは00年の南部杯。アグネスデジタルは00年のマイルチャンピオンシップ、01年の天皇賞・秋、マイルチャンピオンシップ、香港カップ、02年のフェブラリーステークス、03年の安田記念などを勝っている。
創設当初は、このユニコーンステークスと、大井のスーパーダートダービー(10〜11月)、盛岡のダービーグランプリ(11〜12月)を旧4歳ダート三冠シリーズとしていた。ユニコーンステークスができる前年の1995年、中央のクラシックに地方馬の出走枠が設けられ、笠松のライデンリーダーが桜花賞トライアルを勝って注目された。また、中央のライブリマウントやホクトベガなどが地方の重賞を勝ちまくるようになるなど、95年は中央と地方の「交流元年」と言われた。
その流れでダート三冠がつくられ、三冠達成ボーナスまで用意されたのだが、ウイングアローが1、1、2着と惜しいところまで行っただけで、達成馬は出なかった。そして、のちの番組改変によって、現在のような形になった。
ダート三冠の体系を確立させるつもりが、日本を代表する出世レースをつくることになってしまったのだから、競馬は難しい。
ここ数年、ユニコーンステークスは出世レースとしての格をとり戻してはきたものの、輩出した馬のタイプの幅広さという点では、秋に中山で行われていたころにはおよばない。
なぜ、秋に行われた3歳限定のダート重賞が、これほどの名馬を送り出すことになったのだろう。
初代勝ち馬のシンコウウインディから、タイキシャトル、ウイングアロー、ゴールドティアラ、アグネスデジタルと、5年連続のちにGI馬となったこれらの馬はみな、芝のレースにも出ている。ひとつ言えるのは、能力が高いことは確かだが、芝とダートの適性が見きわめづらい馬が、3歳の秋にダート重賞で好走したら、のちに出世している、ということだ。
理由はわからないが、傾向として確かな結果が出ているのだから、秋口に3歳限定ダート重賞を設置しておけば、のちのち大舞台で楽しませてくれる馬がまた現れる可能性が高くなる、と考えていいような気がする。
しかし、今その時期にある中央のダート重賞は、古馬も出られるシリウスステークスだけだ。逆に言うと、シリウスステークスに3歳馬も出られるから、近い時期に3歳限定のダート重賞は必要ない、とみなされているのか。交流重賞も古馬相手となるレースばかりで、3歳限定重賞は、8月上旬のレパードステークスが最後になっている。
面白いもので、やはり、と言うべきか、レパードステークスは結構な出世レースになっている。勝ち馬を列挙すると――。
第1回の09年はトランセンド、10年ミラクルレジェンド、11年ボレアス、12年ホッコータルマエ、13年インカンテーション、14年アジアエクスプレス、15年クロスクリーガー、16年グレンツェント。まだ8回と歴史は浅いのに、トランセンド、ホッコータルマエといったのちのGI馬や、順序は逆だがGIを勝っていたアジアエクスプレスのほか、ダート重賞で活躍する馬たちの登竜門になっている。
こうなると、余計に「いらない」と言われそうだが、秋の中山に、「出世レース」になり得る3歳限定のダート重賞があってもいいように思う。今年のユニコーンステークスで有力視されていたアディラートなどが除外され、活躍の場をひとつ失ったのを見ると、ウーンと考えてしまった。重賞だと賞金が高くなるので、芝でそこそこ走るパワー型の馬が出てくる可能性もある。そうなると、「残念菊花賞」まで行かなくても、「残念セントライト記念」「残念神戸新聞杯」的な意味合いを持つようになり、なかなか面白いレースになるかもしれない。