名牝アムールブリエがフランケルと夢の交配へ/吉田竜作マル秘週報
◆怪物との子供がいずれ見られることになる
マイケル・タバート氏は学生時代に参加したPOGで「自分の(所属するグループが)考えていた選択をしてくれないことにストレスを感じた」そうだ。
後に「本物の馬主になれば、思った通りにできる」という夢をかなえ、活躍馬の筆頭ハナズゴール(14年豪GIオールエイジドS勝ち)は、この春にはルーラーシップ産駒を出産。夢は次世代へと広がっている。
この世界に携わる人からすれば、自分が関わって活躍した馬に、好きな種馬をつけて、その産駒を走らせるのは本当にうらやましい話。特にトレセンのホースマンは強くそう思うようだ。
「すごいよね。本当に夢のある話だよね」とは松永幹調教師。天皇賞馬ヘヴンリーロマンスの子イグレット(牝=父Distorted Humor)の話から少し脱線した時に出てきたのがこのフレーズだった。
イグレットの半姉で、交流重賞6勝と活躍したアムールブリエは、キズナの子を受胎したまま渡欧し、現地で出産した後に、新たにフランケルを種付けする…といった話を前田幸治オーナーから聞いたのだという。「だから生まれる子供の父親のキズナも、英語表記になるんだよ」
キズナ×アムールブリエはノースヒルズの結晶とも言える配合。これもオーナー冥利に尽きるのだろうが、さらに胸が高鳴るのはフランケルとの産駒。かなり気の早い話だが、これから無事に出産、そして新たに種付けといけば、怪物との子供がいずれ見られることになる。いや、もしかしたら現地でデビューして、ゆくゆくは凱旋門賞挑戦!?いずれにせよ、大オーナーならではの、スケールの大きな話だ。
話をそもそものイグレットに戻そう。15日に最初のゲート試験を受けたが、残念ながら不合格。しかし「1つ上のキエレと違って性格は扱いやすい」とのことなので、近いうちに最初のハードルはクリアすることになるだろう。それでも松永幹調教師はこの血統をよく知るがゆえの不安を感じている。
「この血統は栗毛に出ると走らないんですよ。キエレもそうだったし、この馬が生まれた時も、まず最初に“毛色はどう出ました?”って。栗毛と聞いて正直ガックリ。問題はそこだけなんですけどね」
果たして毛色のジンクスをイグレットは破れるのか?「いずれにせよオクテ。ゆっくりいかせてもらいます」とのことなので、長い目で見守っていきたい。
オーナー絡みの話をもうひとつ。「社長が引き取ったみたい」と福島調教師が言う“社長”とはテイエムの竹園正継氏。そして引き取ったのは種牡馬ニューイングランドだ。「テイエム軍団」の現2歳世代にはその産駒が実に7頭。中でもすでに入厩済みなのがテイエムオオアマミ(牝=母テイエムクレナイ)で、九州産馬ながら一般馬相手にオープンで健闘しているテイエムヒッタマゲの半妹にあたる。
「兄に比べれば少し線は細いが、まあ牝馬だからね。馬は悪くないよ。順調に調整していけそう」と感触も上々なのだが、面白いのがその血統。いまさら「○○のクロス」とか「奇跡の配合」というのは時代遅れかもしれないが、ダビスタで青春時代を食い潰した人間からすれば、「プレイメイト(種牡馬ウッドマンらの母)の3×4」は垂ぜんもの。九州産だけにデビューは当然、小倉となりそうだが、そのスケールにとどまらない走りを期待せずにはいられない。