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ダービー制覇のアナザーストーリー『1人じゃ無理だった…3人で掴んだ夢』

  • 2017年06月29日(木) 18時01分
ノンフィクションファイル

▲1人では無理でも3人集えば大きな力に…夢を叶えた3人の男の物語 (撮影:大恵陽子)


“馬主”と聞けば、お金持ちというイメージを抱く。財を成し、気に入った競走馬を購入し、日本ダービーを目指すという夢を競馬ファンなら一度は描いたことがあるかもしれない。しかしJRAで日本ダービーを勝てるような馬を買えなくとも、地方競馬で3人で力を合わせてダービーを勝った人たちがいた。地方競馬の馬主登録の経済的要件は年間所得500万円以上(一部例外あり)。地方競馬の馬主である医師・南條浩輝氏、中小企業経営・山口正行氏、中小企業役員・飯田孝明氏はブレイヴコール(牡3、諏訪貴正厩舎)で兵庫ダービー(6月15日、園田ダート1870m)を勝利した。1人ではできなかったダービー制覇の舞台裏に迫る。(取材・文:大恵陽子)


初めてのセリ、震える手で落札


 ブレイヴコールの代表馬主・南條氏は、3人で馬を共有することになったきっかけをこう振り返った。

「私はこれまでJRAを引退した馬を購入して地方競馬で走らせていましたが、やっぱり新馬を持ちたいという夢がありました。でも、新馬を買った経験や購入後の育成などノウハウがなかったので、いつも愛馬を預けている諏訪調教師に共有してくださる馬主を紹介していただきました」

 そこで紹介されたのが山口氏。馬主歴18年でJRAの馬主資格も保持している。

「馬主歴の分だけ失敗談も山ほどあります(苦笑)。1人で馬を所有していると金銭面も含めて冷静な判断ができなかったかも、と思うことがあるのですが、3人での共有だと少し客観的に判断を下せるように思います」

 また時を同じくして飯田氏も新馬から競走馬を購入したいと望み、諏訪師に相談していた。

「競走馬って購入できたとしても預託料など維持するのにそれなりの費用がかかるので、馬主資格は持っているものの1人で所有する勇気が持てませんでした。でも、そろそろまた馬を所有したいと思っていたんです」

 同じ時に同じ願望を抱いていた3人が集まり、ビールと焼き鳥を片手にサマーセールのカタログを眺める日々が始まった。

 予算は200万円。予算内で購入できそうな馬を何頭かピックアップし、仕事の調整をつけて3人で北海道へと飛んだ。

 ところが、近年売却額が好調なセリではなかなか予算内で落札できる馬がいなかった。

「狙っていた馬が400万円からセリがスタート、ということもあってなかなか購入できずにいました。もうこのまま買えずに大阪に帰らないといけないかな…と思っていたところ、諏訪厩舎と縁のある馬がいるというので見に行ったのが、のちのブレイヴコールでした。お父さんのカルストンライトオを彷彿とさせるマッチョな体形でしたね」(南條氏)

 3人で話し合いの末、ちょっとだけ予算をオーバーさせて同馬を落札しにいった。

「セリ会場に来ること自体初めてで、金額をコールする手が震えて、落札のハンマーが鳴るまでは胸の鼓動が大きく響いていました」(南條氏)

 共有馬主の仲間に見守られながら南條氏が震える手で契約書にサインをしたという。

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