◆netkeiba編集部より御挨拶 昨年末より休載となっておりました当コラム『地方競馬に吠える!』が、リニューアルして再開する運びとなりました。
新タイトルは『喝?あっぱれ? 斎藤修の喜怒哀楽』。地方競馬、そして世界の競馬をも知り尽くしている斎藤修氏が、気になるトピックスについて「喝」「あっぱれ」のジャッジをしつつ、独自の見解を語ります。
また、掲載日時も金曜18時から火曜18時にお引っ越し。より“面白い地方競馬” “面白い海外競馬”の世界を、読者の皆様にお届けしてまいります。
初回の「あっぱれ!」は地方通算7000勝を達成した的場文男騎手
昨年末からお休みをいただいていた『地方競馬に吠える!』でしたが、編集部の方々のお気遣いによって、『喝?あっぱれ? 斎藤修の喜怒哀楽』という、どこかで聞いたこともあるようなコラムタイトルで復活させていただけることになりました。
なぜ「吠える!」が「喝・あっぱれ」になったのか。「吠える」のコラムが始まったのは2006年。2001年の中津競馬から、2004年末の高崎、2005年3月の宇都宮まで地方競馬では廃止が相次ぎ、どん底だった時期です。それゆえに「吠える!」という内容になったような気がします。
ところがここ5年ほど地方競馬も回復基調となり、「吠える!」というネタばかりでは無理やりという感じもあり、実はいいことを褒めるネタも増えてきていました。そういうわけで、復活にあたっては「あっぱれ」なことも扱ってもよろしいという判断となったようです。
さらに、「不定期でグルメネタもお願いします」ということのようなので、ときおり競馬場のグルメネタも取り上げていくことになると思います。そして、特に地方競馬にこだわらなくてもいいということなので、中央や海外のネタも取り上げるかもしれません。以上、前フリがかなり長くなりましたが、今後ともよろしくお願いいたします。
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そして初回はまず「あっぱれ!」から。地方通算7000勝を達成した的場文男騎手をあらためて取り上げる。
7月1日、都内のホテルで『的場文男7,000勝祝賀会』というパーティーが行われ、まことに僭越ながら招待をいただいたので出席させていただいた。
的場文男騎手(中央)と地方競馬教養センター時代の同期、森下博騎手(川崎・左)、山崎尋美調教師(川崎・右)が祝福のあいさつ(写真提供:荘司典子)
的場騎手本人のあいさつはともかく、こうした立食パーティーではありがちなことだが、ゲストの話や騎手仲間のインタビューともなると、すでにアルコールが入っていることもあって場内は喧騒となり、ほとんど誰も聞いちゃいませんという状態。ところが、「的場文男騎手本人が選んだ記憶に残るベスト15レース」というコーナーとなり、スクリーンに映像が映し出されると雰囲気は一変。ほとんどのゲストがそのレース映像に見入っていた。今以上に迫力たっぷりな若かりし頃のレース映像もあり、それこそがマトバさんのスゴイところなのだ、とあらためて認識させられた。
5月17日に地方通算7000勝達成した際には、競馬関連の番組ではもちろんのこと、一般のニュースでも取り上げられ、NHKでも特集が組まれるなど、ご覧になった方も多いことだろう。
的場騎手にとって7000勝はひとつの目標であり、さらにもう少し先には佐々木竹見さんによる7153勝(中央2勝含む)という日本記録の更新という目標もある。7000勝を達成したこと自体がもちろん「あっぱれ!」なのだが、還暦を迎え、7000勝を達成してもなお、衰えることなく活躍を続けているということが、今回の「あっぱれ!」なのだ。
的場騎手は今や重賞を勝つごとに最高齢重賞勝利記録の更新となるのだが、6月21日の船橋・京成盃グランドマイラーズをリアライズリンクスで制したことで、今年すでにその記録は4回更新された。つまり的場騎手は今年重賞を4勝。これは今年の南関東の重賞勝利数で、森泰斗騎手と並んで最多タイの記録となっている。60歳となった今でも、一昨年、昨年と2年連続で地方全国リーディングとなった騎手と同じレベルで活躍しているのだ。
さすがに全盛期のように年間200勝、300勝というわけにはいかないが、今年も7月3日現在で68勝。130勝を挙げた昨年とほぼ同じペースで勝ち星を積み重ねている。
的場騎手の今年7月3日までの南関東での成績を分析してみた。1番人気、2番人気馬に騎乗したときの成績を見ると……
1番人気:82-32-19/39.0%-62.2%
2番人気:72-18-14/25.0%-44.4%
※数字は左から、騎乗数-1着-2着/勝率-連対率
ちなみに現在南関東リーディングの森泰斗騎手の同様の数字を見ると……
1番人気:231-86-46/37.2%-57.1%
2番人気:156-32-26/20.5%-37.2%
たしかに不動のリーディングとなった森騎手であれば、馬の能力以上に過剰な人気になることもあるだろうが、それにしても人気に対しての信頼度ということでは的場騎手のほうが総じて高いのだ。
その森騎手だが、7000勝祝賀会には、右足にはギブス、そして松葉杖、それでもきちっとスーツ姿で来ていた。そこまでして来なくてもと思い、会がお開きになるころに話を聞いてみると、「マトバさん、すっごい好きなんすよ。なんというか、競馬に対する情熱がスゴイじゃないですか」
後輩や若手からもこうして慕われ、尊敬される。だからこそ60歳でも一線級で現役を続けていられるのだろう。的場文男というオトコは、どこまでもスゴイ。