▲ならではの技を駆使して多くの馬を勝利に導いた佐藤哲三さん、その騎乗論とは
元ジョッキー・佐藤哲三さんとの対談、3回目の今回は『騎乗論』がテーマ。騎乗スタイルは各々が日々進化を模索しているところで、今の佑介騎手は「前に行く競馬」を意識していると言います。その変化はもちろん哲三さんも気づいているところ。さらには「馬の体も昔とは違う」と哲三さん。「肩甲骨」「ほふく前進」「背中を制圧」「1完歩で5cm」…哲三語録から導き出される究極の騎乗論とは!? (取材・構成:不破由妃子)※撮影協力:京都センチュリーホテル 「京料理 嵐亭」
(前回のつづき)
アーネストリーのような競馬ができるために必要なこと
佑介 哲三さんの騎乗論について、もっと突っ込んだお話をしていきたいと思っているんですけど、アーネストリーのような競馬ができるようになると、引き出しが増えますよね?
哲三 そうやね。行く設定と行かない設定って、そもそも行ける馬じゃないとできない。前に行ける馬は、競馬のパターンが3つ、4つと広がっていくから。だから、それが可能な馬を見つけて作っていきながら、自分もスピードを殺さない騎乗を模索していくというか。
▲2011年の宝塚記念(写真)を含む重賞5勝を挙げたアーネストリーと哲三さんのコンビ (C)netkeiba
佑介 正直、自分が今までやってこなかったタイプで、むしろ苦手意識があったくらいなんですが、ここにきて感じているのは、自分のような乗り方で動かそうと思うと、逆にそういう馬のほうが動かしやすいのかなと。
哲三 うん、そう思うよ。実際、場面場面で、損得の得を取る乗り方をするようになってきていると思うし。日経賞のミライヘノツバサ(7番人気2着)も、負けはしたけど、そういうイメージで乗ったんじゃないかなって。少し前までは、あえてポジションを下げたところで形を作っていたけど、最近はそれがなくなってきたよね。
佑介 それは意識的に変えてます。今思えばですが、デビューして数年は、たとえば僕が100%の力を引き出す騎乗をしたとしても、本当は150%くらいの許容量がある、それくらい良い馬に乗っていたんですよね(苦笑)。
哲三 後でも前でも、形を作ろうとかあんまり考えてなかったよな。でも、そんな佑介に俺は普通に負けてたからね(苦笑)。「くそ! 腹立つな」と思っていたけど、気付いたら、いつも下がっていってくれるようになって、ああ、ありがたいと思ってた(笑)。