日本を代表するホースマンたちの解説「マスターズ・アイ」(村本浩平)
◆「一頭だけ馬が違っている」
6月17日の函館開催から始まったJRA北海道シリーズ。7月29日からは開催場所を札幌へと移し、6週間に渡って白熱のレースが行われていく。
その開催が行われる日曜日(場合によっては土曜日も)、メイクデビューや2歳オープン以上のレースが開催される際のパドックで、日本を代表するホースマンたちの解説が行われていることをご存じだろうか?
そのパドック解説とは「マスターズ・アイ」。ちなみに解説と言っても、グリーンチャンネルといった放送を通して発信しているのではなく、「マスターズ・アイ」は「ツイキャスシステム」を用いた配信という形を取っている(iPhone、Androidのアプリである「ツイキャス・ビュワー」をダウンロードしていただくと、視聴することが可能となっております)。
札幌競馬場内では一部の場所で解説を聞くことは可能なようだが、基本的には「ツイキャスシステム」で聞いていただきたいところ。ということは、別に札幌競馬場にいなくとも、ご自宅でグリーンチャンネルなどのパドック映像を見ながら、「マスターズ・アイ」の解説に耳を凝らすということも可能ではあるのだ。
この「マスターズ・アイ」は2015年から始まっており、今年が3回目。札幌開催は芝1800Mのメイクデビューが組まれることも多く、来年のクラシック候補たちもデビューの場所にこの舞台を選ぶことも珍しくなくなってきた。
それを実証してくれたのが、昨年、芝1800Mで行われた最初のメイクデビューを優勝。その後、阪神JF、オークスも優勝したソウルスターリングである。その際、解説を担当してくれたのが、ソウルスターリングの生産牧場である社台ファームの吉田哲哉氏であり、また、サラブレッドクラブラフィアン代表の岡田紘和氏だった。
吉田氏は実際に牧場で見てきた視点からソウルスターリングの成長過程を、岡田氏はソウルスターリングの父であるフランケルとの比較から、馬体考察をしてくれた。その話は聞き手となっていた自分にとっても大変興味深いことではあったのだが、二人ともにそのメイクデビューではソウルスターリングを推奨。その言葉通りに勝利をあげてくれただけでなく、その後の活躍を見た時には、歴史の一証人になれた気もした(少々、オーバーではありますが…)。
今年の「マスターズ・アイ」も自分は、今年札幌開催で行われる最初の芝1800Mのメイクデビューの聞き手を担当させてもらうこととなった。今回、解説を行ってくれたのは、昨年に引き続いての登場となった岡田紘和氏と、生産者としてだけでなく、セリに向けての中期育成でも優れた管理を行っている平野牧場の平野謙二氏。7頭立てと頭数的には寂しいメンバーとなった、このメイクデビューではあるが、それを補うほどの注目馬が出走していた。今年の日本ダービー馬、レイデオロの全弟となるレイエンダである。
勿論、岡田氏と平野氏の二人にはレイエンダに関する話をじっくりと聞いていたのだが、共通した感想は「キングカメハメハの良さが馬体に出ている」、「毛色こそ違っているが、馬体の印象などはレイデオロともよく似ているのでは」との言葉だった。
実は配信を行う前に、周回するレイエンダを二人にはじっくりと見てもらったのだが、「一頭だけ馬が違っている」「完成度が高いだけでなく、馴致も良くできている」とも話していた。それだけレイエンダの姿が衝撃的だったのだろうが、勿論、二人揃ってレイエンダを推奨馬としてあげていた。
結果はご存じのようにレイエンダの快勝。道中は最後方の位置取りとなったものの、馬なりのままで前の馬を捕らえにかかり、最後の直線ではルメール騎手のゴーサインに応えると、あっという間に後続との差を引き離していった。昨年のメイクデビューを勝利したソウルスターリングは、2着馬との着差こそクビ差だったが、牡馬を相手にしても全く退かなかった勝負根性を証明してみせた。そう思うとレイエンダは、積んでいるエンジンの違いと操縦性の良さを、この1戦で証明したと言えるだろう。ノーザンファーム早来の育成時から、「距離の不安は感じられません」との言葉も聞かれており、兄弟による2年連続のダービー制覇も見えてくるような勝利だったと言える。
いずれにせよ、「マスターズ・アイ」で紹介できた2歳馬の中から、また来年のクラシック候補を紹介できたのは嬉しい限り。ちなみに今週(8月6日)の5レースに行われるメイクデビューでも配信が行われますので、スマートフォンをお持ちの方は、是非ともアプリをダウンロードしていただいて、日本全体、あわよくば世界からもホースマンたちのパドック解説をお聞きください! ちなみに不肖村本の聞き手回ですが、次回は8月27日のメイクデビュー。放送内で何回噛むか、カウンターを持って計測だ!(笑)。