メイン行事は「馬上結婚式」
7月29日と30日の両日にわたり、JRA日高育成牧場内特設会場にて「うらかわ馬フェスタ2017」が開催された。
まず29日夕刻に「第32回シンザンフェスティバル」前夜祭から開幕。オープニング直後にまず今年度の第32代ミスシンザンとして選出された山本千夏(ちか)さんと、浜田侑佳(ゆか)さんが紹介された。以後、この2人は浦河町の観光大使の役割を兼ねて、来年1月に京都競馬場で行われる「シンザン記念」の表彰式にプレゼンターとして出張する予定になっている。
今年度のミスシンザンに選ばれた浜田さん(写真左)、山本さん(写真右)
続いてG1優勝馬生産牧場表彰(過去1年間に地方を含むG1レース優勝馬を生産した浦河町内の牧場を表彰する)としてホワイトフーガの梅田牧場が表彰され、その後、メイン行事の「馬上結婚式」と進んだ。
馬上結婚式には、毎年全国から応募があり、今年は、岐阜県の辻賢都さんと莉穂さん、そして、道内千歳市の田中将人さんと美和さんの2組が選ばれ、晴れの舞台に立った。
JRA日高育成牧場の全面的な協力により、用意された儀仗馬車に1組ずつのカップルが乗り、会場をぐるりと半周してステージ前で下車する演出は、全国的に見てもひじょうに珍しいことから人気が高い。
儀仗馬車で会場入りされる新郎新婦
辻さんご夫妻は、昨年も応募したがあえなく落選。今年2度目の応募で見事に幸運をつかんだ。
揃って競馬好きなお2人は、京都競馬場の横田貞夫場長からサプライズで今秋のエリザベス女王杯当日の特別来賓席への招待状を手にすると大変な喜びようであった。
笑顔で手を振る辻賢都さん、莉穂さんご夫妻
また田中さんご夫妻は、四国・香川県出身で、将人さんは現在ノーザンファームにて騎乗スタッフとして働いている“業界人”である。一度故郷に帰り一般企業の営業マンとして働いていたものの、馬への思いを断ちがたく北海道にやってきたというパイオニア精神溢れる若者だ。
やや緊張気味の田中将人さん、美和さんご夫妻
なお、MCでも紹介されていたが、カップルの乗る儀仗馬車を曳くのは東京競馬場からはるばる“出張”してきたイッツ号。そして、先導を務める3騎には、日高育成牧場で繋養されているセイウンワンダーとモンストールの名前もあった。
中央でも活躍したモンストール(写真左)とセイウンワンダー(写真右)
このところ続けて土日のどこかで必ずと言っていいくらいにこのイベントは雨に祟られるが、今年は前日こそ小雨に見舞われたものの両日ともによく晴れ、久々に好天の下で開催される幸運に恵まれた。
土曜日は開始早々から会場には多くの人々が詰めかけ、それぞれジンギスカンとビールに舌鼓を打ちながら、職場や仲間内とのパーティーを楽しむ光景が見られた。
日が暮れてあたりが暗くなってきた頃からは、恒例の競馬グッズオークション、そして、じゅんいちダビットソンによる「お笑いトークライブ」も始まり、会場に集まった人々は舞台前に移動して大いに盛り上がっていた。じゅんいちダビットソンは、周知の通り、サッカー本田圭佑選手のそっくりさんだが、その本人は折から7月中旬にイタリア・ACミランからメキシコ・CFパチューカに電撃移籍したばかり。期せずしてトークショーはまたとないタイミングの良さであった。
さて、翌30日(日)は、シンザンフェスティバルと並行して、「第51回浦河競馬祭」が隣接する1600mダートコースで開催された。道路を挟んだふたつの会場を行き来しながら、来場者はたっぷりと馬イベントを楽しめる位置関係である。
この日は、シンザンフェスティバルの方は主に子供向けのアトラクションを用意しており、巨大滑り台、ボールプール、クライミングウォールなどが「キッズ冒険ランド」として朝からオープン。さらにパントマイム、バルーンパフォーマンス、ヨーヨー釣りなどもあって多くの親子連れが訪れていた。
伝統の浦河競馬祭では、来る10月8日東京競馬場にて行なわれる「第9回ジョッキーベイビーズ・北海道予選」に最も注目が集まった。今年は12人がエントリーしてきたことから、急きょまず6人ずつ2レースに分割して予選レースを実施することになった。その後、時間を置いてそれぞれ上位4人ずつ計8人により「代表決定戦」を行ない、いずれも1着でゴールインした高橋駈(かける)さん(小6、浦河ポニー乗馬スポーツ少年団所属、騎乗馬アパネネ)が、北海道代表の座を獲得した。
北海道地区代表決定戦を制した高橋駈さん
乗馬歴6年、ジョッキーベイビーズ予選は4回目の挑戦という高橋さんは「東京競馬場でも今日のように優勝したいです」と笑顔で語っていた。
表彰式で笑顔を見せた高橋駈さん
なお、ここ数年、浦河競馬祭は出走馬の減少に悩まされているが、今年は軽種の部に、カキツバタロイヤルが出走して、注目を集めた。父ロイヤルタッチ、地方所属ながら重賞6勝を含む70戦15勝、1億7350万円を稼ぎ出した11歳馬で、現在はクラックステーブル(日高町)にて種牡馬生活を送っている。2レースの軽種予選1700mにまず姿を現したカキツバタロイヤルは、見事1着でゴール板を駆け抜け、未だ剛脚の健在なところを見せつけていた。
11歳でなお健在ぶりをみせたカキツバタロイヤル
午後に行なわれた「シンザングランプリ」では、距離が2500mと長く、4着に敗退したが、こういう名前の知られた名馬が出走してくるのも草競馬ならではの風景だ。
軽種はやや寂しい出走頭数になったが、反対にポニーは充実しており、今年は、午後の「浦河ダービー」(ポニー決勝)に、19頭もの出走があった。騎乗するのは全員が子供ばかりで、さすがにこれだけ頭数が揃うと見応えがある。明日を担う馬産地の子供たちが勝負服に身を包んで必死に馬を追う光景は微笑ましくもあるし、頼もしい。
実に19頭立てとなった浦河ダービー
因みにこのレースの1着はメルモに騎乗した大池晴駈(はるく)君(小3)。兄姉たち4人が過去にジョッキーベイビーズに出場している“競馬一家”の3男坊で、この子も来年以降はジョッキーベイビーズ出場を目指すことになりそうだ。
最後に、この日の昼休みに行なわれた「全日本馬キャラダービー」について。地元浦河の「うららん」「かわたん」を始め、JRAの「ターフィー」君、ホッカイドウ競馬の「ホクト」君と「ナナセ」ちゃん、ばんえい競馬の「リッキー」と今年も6騎、というか6体が揃い、炎天下の中、熱いレースが展開された。毎年思うことだが、このキャラクターの中に入るお役目の人には、心から敬意を表したいと思う。本州の夏から見ればいくらか涼しいとはいえ、今の時期にこのレースはかなり過酷である。レース前、テントの下で太陽光線を避けながら、隙間から団扇で風を送られている馬キャラたちを見て、外見の愛くるしさとは裏腹に正直なところ「なんと残酷なレースであることか」と感じた。何事もなく無事に終わったことを素直に喜びたいと思う。
かわいらしい馬キャラたちが顔を揃えた