7月19日から25日まで、ご長男の加矢太さんが勤める北総乗馬クラブへ修行に出かけた小牧騎手。こんな機会はなかなかない! ということで、牧場と小牧騎手に許可を取り、小牧騎手の仕事ぶりをカメラに収めてきました。なかには加矢太さんとの貴重な併せ馬のシーンも! また、「初めて父の仕事ぶりを見ました」という加矢太さんが、小牧騎手に対する感謝と尊敬の気持ちを語ってくれました。
(取材・文/不破由妃子)
迷惑を掛けたらいけないと、誰よりも早く出勤
「いや〜、よう働いたで」と、牧場での日々を振り返った小牧騎手。ハードでありながら、いかに充実した日々を送っていたかは、写真の笑顔が物語ります。
牧場での夏時間は、朝4時に起床し、馬を放牧に出すところからスタート。その後、担当馬に馬装を施し、いざコースへ。「父は、誰よりも早く仕事に出てきていました」と加矢太さん。これに対し小牧騎手は、さすが修行の身というべきか、「自然と目が覚めるねん(笑)。それに、最初は何もかもが手探りやったから、迷惑を掛けたらアカンと思ってね。それで早く出ていくようにしてたんやけど」と、どこまでも謙虚に取り組んでおりました。
馬装を終えて、いざコースへ!
人生初となる親子での併せ馬。「加矢太とは、馬の上でいろんな話ができた。現役を続けている以上、こういう機会はなかなかないからね。まぁ、しょっちゅうあったら困ってしまうねんけど(笑)」
加矢太さんとは過去にも一度、観光地で一緒に馬に乗ったことがあるそうですが、当然、仕事として一緒に乗るのは初めて。しかも、このとき小牧騎手が騎乗していた馬は、普段は加矢太さんが担当している馬。加矢太さんいわく、「ああ、こういうふうに乗る方法もあるんだ」と、いろいろ勉強になったそうです。「親父は口では何も教えてくれません。“背中を見て盗め”という感じでしたね」と、親子でありながら師弟のような、とても素敵な親子関係を間近で感じることができました。
調教のあとは、厩舎周りの馬場でクールダウン。この後はいよいよ、小牧騎手が「何十年ぶりや」という馬の手入れ作業へ。
馬がこんなに可愛いとは…
「競馬場にいるときと違って、めっちゃ馬がおとなしくて可愛いねん」。ちなみに、このとき小牧騎手が担当していたのは、美浦・田島俊明厩舎所属のフローラルダンサー号です。
洗い場に馬をつなぎ、「普段、こないして馬に触れる機会は絶対にないわ」と言いながら、黙々と手入れを始めた小牧騎手。「馬がこんなに可愛いと思えたのは久しぶりやった」といい、こうした馬への思いが、今回の牧場修行で感じた自分自身の一番の変化だそうです。
【牧場での修行を終えて・小牧騎手のコメント】
約1週間、みっちり働きました。いや〜、鍛えられたね。最初は筋肉痛になって、ふくらはぎが痛くて痛くて(笑)。なんせ、多い日では1日5頭持ち。馬装してコースで左右6周ずつ乗って、洗い場で手入れをして馬房に馬を入れて。この繰り返しを5頭やからね。5時から始めても11時くらいまで掛かりましたわ。午後は乗馬の調教やから、僕の仕事は午前中までやったけど、牧場のスタッフは休憩を挟んで夜の7時くらいまで働いとったわ。
加矢太とも、久々に長い時間を過ごすことができました。一生懸命に働いている姿からは、本当に馬が好きなんだという気持ちが伝わってきたね。親子というより馬乗り同志、友達感覚でいろんな話ができました。馬の可愛さにも改めて気づくことができたし、自分でも「意外となんでもできるやん」なんて思ったり(笑)。騎乗停止期間中ではあったけど、有意義な時間を過ごすことができました。
急な申し出にも関わらず、受け入れてくれた社長の林忠義さん、そしてスタッフのみなさん、本当にお世話になりました。引き続き、加矢太をよろしくお願いします!
息子の加矢太さん
【加矢太さんのコメント】
子供の頃から、父と一緒に過ごす時間は少なかったので、こんなにたくさん話をしたのはおそらく初めてかもしれません。近くで見ていて一番感じたのは、本当に若いということ。トレーナーについて一緒にトレーニングをしたんですが、自分たちがついていけないくらいのレベルに父はいました。初めて会ったトレーナーもびっくりしていましたね。父の体力、運動神経、そして精神力は、本当にすごいものがあります。僕にはとても真似のできないことなので、もう尊敬しかありません。
騎乗停止はもちろん良くないことですが、息子としての本音を言えば、父が今もなお、攻めの騎乗を続けられていることに安心したりもするんです。だから、これからも人にケガをさせることなく、もちろん父自身もケガをすることなく、父らしい騎乗を見せてくれることを願っています。
自分は今、父からの援助を受けて、いい馬に乗せてもらい、馬術の世界で頑張っています。「援助できるのは現役のあいだだけやから、俺がジョッキーを辞めたら、もうそこからは自分でやれよ」と言われているので、この環境を当たり前と思わず、父のような強い信念を持って頑張っていきたいです。