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生産馬を仕上げる社台グループの技術とノウハウ(村本浩平)

  • 2017年09月12日(火) 18時00分


◆ゆくゆくは「名牝系」として牧場の財産ともなっていく

 今年の札幌2歳ステークス。勝利したのはオルフェーヴル産駒のロックディスタウン。この勝利でオルフェーヴルは、今年初年度産駒をデビューさせた種牡馬で最も早く重賞勝ち馬を送り出したことともなった。

 この勝利を生産牧場である白老ファーム、また中期育成を手がけた早来ファームの関係者と共に喜んでいたのが、ノーザンファーム空港のC-5厩舎とS-3厩舎で厩舎長を務める中川晃征厩舎長と、育成厩舎のスタッフだった。

 ロックディスタウンは、中川厩舎長の元で管理された馬である。

「入厩時から馬っぷりの良さが目立っていました。何のトラブルも無く、順調に来ていましたし、必ず結果を残してくれると信じていました」

 オルフェーヴルといえば、父ステイゴールドから卓越した運動神経だけでなく、時には制御仕切れないほどの闘争心もレースの中で見せてきた。だが、中川厩舎長はロックディスタウンや他のオルフェーヴル産駒に携わった際に、こうした気性の問題はほとんど感じなかったと話す。

「ロックディスタウンの姉であるキャットコインも育成に携わらせてもらいましたが、むしろ姉の方が気性が激しかった印象があります。その経験があったからこそ、気持ちを重点においた調教を行ってきましたし、それでも姉より気性面では遙かに扱いやすかったです」

 ロックディスタウンが気性面で全く問題が無かったことはメイクデビュー、そしてこの札幌2歳ステークスの走りでも証明されていた。折り合いが付いて、なおかつ行きたいときに反応良く動けるからこそ、あの仕舞いの脚に繋がっていく。しかし、この時期から2歳重賞を勝てたことは、管理をする二ノ宮厩舎と、中川厩舎長を中心とした、ノーザンファーム空港牧場スタッフの連携が上手く行ったからだと言えよう。

「オルフェーヴル産駒の初重賞となる馬を、自分の厩舎から送り出せたことは嬉しい限りです。牧場にいた頃からみるみる成長していったような印象もありますし、このレースの走りや馬体を見てもまだまだ成長してくれるはず。距離の不安もありませんし、どれほどの馬となってくれるか楽しみでなりません」

 ちなみに白老ファームで生産された2歳世代からは、新潟2歳ステークスをフロンティアが優勝。先日行われたメイクデビュー阪神でも、オルフェーヴルの全妹となるデルニエオールが兄を彷彿とさせるような末脚を使って勝利している。まさに今年の2歳世代は白老ファームにとっての「黄金世代」となりそうな気もしてくるが、こうした生産馬を仕上げていく、社台グループの各育成牧場の育成スタッフの技術、そして、父母共に血統をよく知るノウハウが勝利に繋がっていることを、ロックディスタウンが改めて証明してくれたような気がする。

 POGの時期とは離れてしまったが、秋華賞トライアルとなった紫苑ステークスを勝利したディアドラ。今年春のクラシックでも好走を見せ、桜花賞とオークスにも出走。この夏に札幌で行われた1000万下のHTB賞では、牡馬を向こうに回して勝利をあげて重賞初戴冠へと繋げた。

 この紫苑ステークスの勝利で13戦目とタフに走っているディアドラは、ノーザンファーム早来の佐藤厩舎の育成馬。この勝利で現3歳世代の早来育成馬は、牝馬の育成を行う4つの厩舎全てから重賞馬が誕生したこととなる(リスグラシュー…アルテミスS、ミスエルテ…ファンタジーS、アドマイヤミヤビ…クイーンC)。

 牝馬の活躍は自身が繁殖入りした時だけで無く、牝系全体の評価を上げることにも繋がっていき、ゆくゆくは「名牝系」として牧場の財産ともなっていく。それを重賞制覇という最高の形で果たした厩舎長や育成スタッフ、そして4つの牝馬厩舎を束ねる日下和博調教主任の手腕には改めて敬意を表したい。

須田鷹雄+取材班が赤本紹介馬の近況や有力馬の最新情報、取材こぼれ話などを披露します!

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