▲ファンディーナ・インカンテーションを生産した、谷川牧場の谷川貴英代表
日高地区を中心に、40軒あまりの牧場が集まって運営する一口馬主クラブ・“ターファイトクラブ”。1世代当たりの募集頭数は20頭ほどと決して規模は大きくはないが、かつてはローマンエンパイアやビーナスライン、そして最近ではファンディーナやインカンテーションなど定期的に活躍馬を送り出している、伝統と実績のある名門クラブだ。
その活躍馬を輩出する秘訣がどこにあるのかを探るため、この度netkeibaでは、牧場・クラブ関係者へのインタビューを敢行。前編となる今回は谷川牧場代表、谷川貴英氏のインタビューをお届けする。(取材・文:田中哲実)
生まれた瞬間、牡馬と見紛うほどガッチリしていたファンディーナ
――今年の谷川牧場の成績は大変素晴らしいものがありますね。とりわけファンディーナとインカンテーションの2頭が重賞を制覇していて、しかもいずれもターファイトクラブに提供されている馬たちです。まず、ファンディーナのことから伺いたいと思います。この馬の母ドリームオブジェニーはどのような経緯から谷川牧場に来たのですか?
谷川 ドリームオブジェニーは、イギリスのタタソールのセールで買い求めました。2011年12月ですね。私の場合は、どちらかというとヨーロッパ志向でして、アメリカよりは、イギリス、フランスなどの血統に惹かれます。
――それはどういう理由でしょうか?
谷川 個人的な感覚かも知れませんが、ヨーロッパの方が歴史と伝統の重みのようなものを感じるのです。競馬の規模や格式といった根幹部分があまり変化せずに、一定のレベルを保ち続けているという印象です。
――すると、自然に目はヨーロッパの市場に向いて行くことになりますね?
谷川 はい。タタソールのセールはとても好きですね。まずカタログでリストアップし、候補を40頭前後に絞ります。そして現地に行き、実馬を見て優先順位を自分なりにつけて、セリに参加します。
――ドリームオブジェニーはどんな馬でしたか?
谷川 血統も年齢も重要ですが、私たちの場合は予算的な制約があるのでそうそう高い馬は買えません。ドリームオブジェニーは、当時3歳末で、年明けに4歳になるという若さでした。厩舎に行って馬を見せて頂いた時に、立ち姿の美しさとバランスの良さ、それに漂ってくる雰囲気の良さのようなものにすぐピンと来まして「これだ」と思ったその瞬間、この馬を落札しようと決めたのです。
▲現在はディープインパクトの種を宿しているドリームオブジェニー
――価格はどれくらい?
谷川 確か12万5000ポンドです。その頃(2011年末)、ポンドが安くて、1ポンド125円くらいのレートでしたから、比較的安く手に入れることができました。
――それで2012年から繁殖牝馬として谷川牧場に繋養されますね。最初の年の配合種牡馬がヴィクトワールピサ。そして生まれたのがナムラシングンです。これはどんな馬でしたか?