今週の大井競馬は早くもトゥインクル開催。3月のナイターは正直夜風が相当冷たい。4月前の大井ナイターは初めてのこと(川崎は一昨年から実施)。売り上げの長期低迷、年度末ゆえの挽回策。何やら主催者の切迫感が伝わってきてしまう。ともあれ、今回の目玉は「京浜盃」。大器シーチャリオットが登場し、必見というムードになった。4戦3勝、G1・2着のダーレー2期生。とりわけ、前走の雲取賞は初コースを圧巻の勝ちっぷり。しかも当時18キロ増の馬体だから夢が広がる。一枚余分に着込み、できればホカロンなどもポケットに入れて観戦がいいだろう。「時代の寵児」は、やはり肉眼でその強さを体感したい。
京浜盃(3月23日 大井 サラ3歳 定量 南関東G2 1700m)
◎シーチャリオット (55・内田博)
○トウケイファイヤー (55・有年)
▲メイプルエイト (55・張田)
△ワタリファイター (55・左海)
△ハリケーンストーム (55・真島)
△ビービーレアル (55・酒井)
△ジルハー (55・金子)
「京浜盃」は思い入れの強いレースだ。勝ち馬の多くが2冠、3冠を達成し、むしろ本番の勝ち馬より、インパクトで優っている印象すらある。忘れられない馬が勝ってきた。78年、創設時のハツシバオー(3冠馬)に始まり、ホスピタリティ、サンオーイ、ロジータ、さらにジョージタイセイ、キャニオンロマン、トーシンブリザード・・・。ここで主役を確定すれば、JRA、地方と関係なくトップホース(少なくともダートでは)の評価ができる。南関東の重賞で最も重みのある一つと思う。
シーチャリオット。ダーレーのブランドはさておき、現実に馬自身の「成長力」と「進化」に目を見張る。新馬(1000m)→平和賞(1600m)連勝はもちろん、プライドキムに完敗した全日本2歳優駿(1600m)のあと、ショックどころかむしろそれをバネにした逞しさが何より凄い。その雲取賞、1600mで1分40秒2。地方3歳馬同士では別次元という切れをみせ、寮馬マズルブラストにもその時点で力関係をはっきりさせた。パドックでしばしば馬っ気を出すなど、気性面の若さだけが今後の課題か。ごく普通に流れに乗れば圧勝で通過だろう。父シーキングザゴールド。血統背景はともかく、手脚がすらりと伸びた体型など、むしろ中〜長距離向きを思わせる。
トウケイファイヤーはハイセイコー記念を含み7戦5勝。デビュー時はあまり目立たなかったが、一戦ごとに力をつけた。そのハイセイコー記念は2番手から横綱相撲。1分40秒7の時計も過去20年に遡って最も速い。クラシックへここから始動は予定通り。シーチャリオットに肉薄できれば、今後もいいライバルとなるだろう。メイプルエイトは道営から転入後あっという間の4連勝。相手強化は確かだが、すでに大井克服済み。カコイーシーズ産駒だけに勢いに乗っての怖さはある。3連単で面白いのがワタリファイター。昨秋の平和賞はシーチャリオットの2着。前走の浦和しらさぎ賞も久々で24キロ増ながら直線伸びて見せ場を作った。
☆ ☆ ☆
ダイオライト記念(3月16日 サラ4歳上 定量 交流G2 2400m良)
△(1)パーソナルラッシュ (55・安藤勝) 2分36秒4
◎(2)タイムパラドックス (56・武豊) 2
▲(3)ヒシアトラス (56・横山典) 頭
○(4)モエレトレジャー (55・金子) 7
△(5)ジェネスアリダー (56・桑島) 1.1/2
……………………
△(6)サクラハーン (56・山田信)
(8)ゴシップコラム (56・内田博)
単勝480円 馬複440円 馬単960円
3連複190円 3連単1460円
パーソナルラッシュの完勝だった。好枠モエレトレジャーが馬なりで逃げたが、その「馬なり」は1000m通過が66秒4で極限と言っていい超スロー。パーソナルはサクラハーンと並び外の2番手。何度か口を割りそうなシーンもあったが、そこは鞍上の腕がカバーする。3コーナー手前、絶妙のタイミングで手綱を緩めた。同時に直後からヒシアトラスがスパート。モエレトレジャーは抵抗できず呑み込まれる。「4コーナーの手応え、後ろ(タイムパラドックス)との距離から、今日は大丈夫と思った」(安藤勝己騎手)。上がり36.9秒の瞬発力。昨秋、盛岡・ダービーGP圧勝(レコード)は、やはりダテでないということだろう。ゲートを五分に出て流れに乗ればエンジン全開。帝王賞目標に進みそうだが、本質的に気分優先。常に評価が難しい馬ではある。
タイムパラドックスは中団よりやや後ろ、川崎記念と同じ位置取りから3〜4コーナーまくる作戦。「1周目をスムーズに走れなかった。外枠なら良かったかな…」(武豊騎手)。それにしても終始首を左右に振ってハミをとらず、何ともリズムの悪い走りに見えた。直線あと1F、絶望的な3番手からヒシアトラスを捕らえたあたりはさすがだが、強い馬に前々で動かれると不器用さがそのまま結果に出てしまう。いずれにせよ、今日は鞍上らしくない競馬で終わった。ヒシアトラスは、前を行く勝ち馬を意識した乗り方で満点だろう。結果的に距離がやや長かったか。前走のフェブラリーS好走時とやや落差があり、初めての地方ダート、経験の差も響いている。モエレトレジャーは結果的に力負け。チャレンジャーらしい先行策は期待通りでワクワクしたが、勝負どころでもう一段加速できないと、今後も展望が厳しくなる。
☆ ☆ ☆
15日、平成17年度南関東重賞の賞金額が発表された(施行日程は1月に決定済み)。50重賞(船橋・ブルーバードカップ休止)、うち20レースが賞金減、増額は統一G1昇格の「かしわ記念・船橋」1つだけで、当然ながら厳しく寂しい数字である。1着賞金、帝王賞8000→7000万円、ジャパンダートダービー6000→5000万円など交流重賞にも手が入り、文字通り窮余であり最後の一策。ない袖はふれない、確かにそうだが、これによって競馬の価値自体が下がってしまう、ファンサイドにはそのことがやはり怖い。
遅々として容易に進まない日本競馬界全体の改革というもの。そういえば14日、栃木・宇都宮競馬が50余年の歴史に幕を閉じた。競馬法改正、馬券発売の民間委託など、まだまだ可能とみえる企業努力をあっさり放棄してしまう主催者たち。競馬のための競馬・・・、そんな言葉は「経済問題」を前にした時、まるで寝言ということか。しかし、ひっそりと一つまた一つと確実に消滅していく大人のオアシス。自己中心、低レベルの物言いで申しわけない。記者個人としては、もうそう遠くもない「自分の老後」が心配になっている。