エイシンバッケンが亡くなったのは、あまりにも悲しい出来事でした。
栗東の中尾秀正厩舎所属だったエイシンバッケンが、大井リーディングに輝き、数多くのビッグレースを勝ってきた大井の荒山勝徳厩舎(小林分厩舎)に仲間入りをしたのは8月下旬。

8月26日撮影分、まだ入厩したばかりの頃
10月4日の東京盃(大井・1200m)から11月3日のJBCスプリント(大井・1200m)というローテーションを立てて調整が行われてきました。目指すは重賞初制覇、そして、JpnIウィナーに!
荒山厩舎がある千葉県印西市の小林分厩舎にもすっかり慣れ、至って順調に進めていたそうです。私が最後に会ったのは9月6日。おやつの乾草をムシャムシャと食べていました。あまりにも夢中に食べているので、頭にエクステのように乾草をくっつけていた姿が、とても微笑ましかったです。

9月6日撮影分 あまりにも夢中になって食べていて、乾草をエクステのようにつけていました
追い切り本数をこなしていくごとに、体も中身も動きも、どんどん良化していったそうです。この写真は約1か月前に撮ったものなので、最近では体つきが全く変わり、一週前追い切りでもすばらしい動きを見せていたそうです。関係者の楽しみもどんどんふくらみ、東京盃まであと1週間に迫ったところで……。
東京盃の最終追い切りを前日に控えた9月28日。いつものように朝5時くらいに馬場入りをして、いつものように内馬場で調教を行い、いつものように調教を終えようとした際に、馬場で突然バタンと倒れ、もう動かなかったそうです。関係者によると、死因は心臓まひとのこと。
まだ5歳、突然襲った悲劇。レースでも追い切りでもなく、調教中の非常に珍しいケース。人も馬も生き死には、明日どうなっているかわからない……。いつものように過ごすという普通の日常が、どれだけ尊いものであるか……。
オーナー様や関わってきた皆さんの悲しみを考えると、心がとても痛みます。そして、中央ファンの皆さんにたくさん愛されていた馬だったんだなぁということも痛感させられます。
エイシンバッケンは中央7勝馬で、今年のフェブラリーSは4着(優勝馬から0.3秒差)、根岸S3着(優勝馬から0.6秒差)、5月のオープンレースも優勝したばかり。成績だけを考えても、これからどんな活躍をするのか誰もが楽しみにしていました。
「大井競馬場でどんな走りをするのか、一度、見たかったです」(荒山調教師)

9月6日撮影分 おやつの乾草をムシャムシャと
エイシンバッケンのご冥福をお祈り申し上げます。