3月23日、大井「京浜盃」。シーチャリオットが予想以上、期待以上の強さをみせた。夕刻から雨脚が強まり、泥田と化した不良馬場。トウケイファイヤーが掛かり気味にハナを切り、以下ビービーレアル、ガイアヘッド。シーチャリオットは4番手の外目につける。1000m通過62秒0。思ったほどペースは上がらず、しかしチャリオットは鞍上の指示通り我慢がきいた。4コーナー、馬場の真ん中に進路をとり、ほんのひと気合つけただけで突き抜ける。前走雲取賞のVTR。着差は当時2馬身→今回5馬身と広がったが、これはマズルブラスト、トウケイファイヤーの力量差というより、チャリオット自身の充実が大きいだろう。1700m1分46秒0は、京浜盃過去28年でNo.3。その強烈なインパクト、歴代の勝ち馬、何に似ていると聞かれればホスピタリティ(昭和57年)と答えたくなる。ホスピタリティは大井8戦8勝、転じたJRA、セントライト記念など3戦2勝。結局日本馬には負け知らずで引退した。少し古いファンの方ならイメージが通じるだろうか。
京浜盃(サラ3歳 定量 南関東G2 1700m不良)
◎(1)シーチャリオット (55・内田博) 1分46秒0
○(2)トウケイファイヤー (55・有年) 5
▲(3)メイプルエイト (55・張田) 2
△(4)ビービーレアル (55・酒井) 頭
△(5)ワタリファイター (55・左海) 1.1/2
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△(7)ジルハー (55・金子)
△ハリケーンストーム (55・真島) 競走中止
単120円 馬複260円 馬単330円
3連複330円 3連単780円
シーチャリオットは、当日501キロ。デビュー時466キロの馬体を二回りほども増やしている。首の高い走法、先頭に立って遊ぶ仕草などは相変わらずだが、この結果が出てしまえば、単に馬自身のフォーム、気性と納得できる。「太くはないが余裕の仕上げ。それで楽勝だからこの先は総ナメもあるでしょう」。自信のコメントを残し、機上の人(ドバイ行き)となった川島正行調教師。エンジンが違う、パワーが違う。“ダーレー”のブランドはひとまずおいて、同馬自身のスケールと成長力に脱帽したい。春シーズンは南関クラシックに全力投球の予定と聞いた。おそらくJRA勢、プライドキムのレベルなら2歳優駿の借りはあっさり返せる。「馬が大きくなって力強さも増してきた。(道中)あせらなくて大丈夫。それだけ言い聞かせながら今日は乗った」(内田博幸騎手)。手脚のすらりとのびた体型、大跳びの走法。距離はむしろ長めの方がいいはずで、今後の推移、陣営の判断しだいでは芝挑戦も十分視野に入ってくる。
トウケイファイヤーはちぎれた2着でも善戦だった。「行く(逃げる)つもりはなかったが、結果としてイメージ通り乗れなかった。ただ相手は相当強い」(有年淳騎手)。それでもチャリオット独走の中、インを差し返す形だから人馬とも得た収穫は大きいだろう。自身1700m1分47秒0は通年の勝ち馬レベル。好敵手とはいえないまでも、ハイセイコー記念覇者の地力を再認識。若い鞍上も次走はふっ切れた形でチャレンジできる。メイプルエイトは張田騎手が大事に乗って末脚温存。最後の最後で3着に届いた。3連単馬券、1→2→3番人気で珍しく堅い決着。ただメイプル自身さらに上を目指すとき、先につながる内容かは微妙でもある。以下ビービーレアル、ワタリファイター、ジルハー、すべて現状の力通りか。強いていえば良馬場でワタリの末脚だが、今日改めて返し馬などみるといかにも不器用。このタイプは稽古のよさがなかなか実戦に直結しない。
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26日「ドバイワールドカップ」。アジュディミツオーは6着だった。道中3〜4番手の外を終始力強い行きっぷり。しかし600mを超す長い直線、あと1Fで脚があがった。スタートひと息で理想の逃げが打てなかったこと。1番人気ロージズインメイ(ブリーダーズC・2着)が勝ち、レース自体やはり世界レベルであったこと。それでも“日本代表”として、恥ずかしくない走りではあったと思う。「描いていた競馬はほぼできた。経験を積めばこの差(14馬身)は必ず詰まってくる」(内田博騎手)。同レースは6着まで賞金対象(17万ドル=1720万円)。その意味でも立派な“アウェー”の戦いだった。
「こちらにきてすべて順調。本番も気持ちよくゲートに向かえた。これだけの強いメンバーで大きくはバテていない。今の力は出し切れました。さまざまな収穫があったと思う」(川島正行調教師)。内田騎手も含め、その“収穫”とは、アジュディミツオーのみならず、あとに続く馬、たとえばシーチャリオットにも深く関わるものなのだろう。ともあれ先駆者となったアジュディミツオー。帰国後順調なら、5月6日、今季G1に昇格した「かしわ記念=船橋1600m」を目標に調整される。