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マイル王へ前進

  • 2005年04月04日(月) 14時13分
 春が遅れている。時は4月、しかし最高気温が容易に15℃まで達せず、しかも朝夕は北風がどうにも冷たい。コートの襟を立て、首にはマフラーのナイター観戦。ただこうなると先延ばしの楽しみも出てくるわけで、それは競馬場の夜桜だ。前にも書いたこと。大井競馬場のモノレール口から入場してゆっくり歩くと、右手に見事な枝ぶりの桜を堪能できる。今週後半、ちょうど五分咲きあたりになるか。あでやかさ、は
かなさ、せつなさ、そして潔さが、桜の「愛される理由」だろう。競走馬の運命にも
何やら似ている。

マイルグランプリ(4月6日大井 サラ4歳上 別定 南関東G2 1600m)

◎トミケンマイルズ  (57・張田)
○ブルーローレンス  (57・左海)
▲ナイキアディライト (57・石崎駿)
△ベルモントソレイユ (57・早田)
△ジーナフォンテン  (55・佐藤隆)
△ナイキゲルマン   (57・山田信)
△カセギガシラ    (57・酒井)
 イシノファミリー  (57・金子)
 クールアイバー   (57・鷹見)
 プルザトリガー   (55・内田博)

 トミケンマイルズの距離適性、充実度を素直に買う。昨春からマイラーの資質を開花させ、サンタアニタトロフィー、京成盃GMと重賞2勝。それもサンタアニタは2着(ナイキゲルマン)に決定的な4馬身差。1600mを1分38秒5、過去25年歴代3位の時計で駆け抜けた。当時、1000m通過が59秒2。超ハイペースを3番手で追い掛け、直線外から抜群の瞬発力。しばしば取りこぼしがあるぶん大物感、絶対感となるとひと息だが、今季はいかにもここ照準、全力投球というステップを踏んできた。ブルーローレンスの切れ味に屈した前走東京シティ盃も、3ヶ月ぶりを考えると負けて強し。お手馬2頭(ジーナフォンテン)から迷わずこちらを選択した張田騎手。ブラウンシャトレーの金盃勝ちなど、今季きわめてリズムがいい。

 格は統一Gを2勝、帝王賞2着のナイキアディライトで断然。ただしここまで良績はすべて逃げ。自身久々で、エビスファイターあたりに絡まれると楽観できない面がある。逆に、前走イメージ一新の末脚をみせたブルーローレンスは本質的に1400mよりマイル向き。別定戦、鞍上のテン乗りが大きな鍵になるだろう。以下、前走待機策が裏目に出たベルモントソレイユ、7歳牝馬ながら豪脚健在ジーナフォンテン。いずれにせよ、的場文、石崎隆の両ジョッキーが負傷欠場で、馬と人とのコンビが大きく動いている。トミケンマイルズ中心はいいとして、相手の選択は正直なところ迷いに迷う。月曜日の雨が馬場に残れば、レース巧者カセギガシラまで。

     ☆       ☆       ☆

 コスモバルクが苦境に立たされている。3月26日中山「日経賞」でよもやの失速。「天皇賞・春」への望みを断たれてしまった。2着以内が必須となるステップレース。ジャパンC・2着馬がなぜ無条件で出られないか、その理不尽はひとまず置いて、今回の場合、バルク自身のレースぶりに誰もが首をひねるだろう。スローを我慢できなかったこと、当日4キロ減が誤算だったこと。しかしユキノサンロイヤル、トウショウナイト、重賞未勝利馬のワンツー。平凡な勝ちタイムからもレベルは正直知れている。なぜこんな結果になってしまうか。何やら思いはやるせない。

 今回、岡田繁幸オーナーは鞍上を千葉津代士に替えてきた。実績、経験とも十分な道営屈指の腕達者。現実にスタートから前半は折り合いもスムーズで、まったく非のない騎乗にみえる。が、バルクは2コーナーで早くもジレたようなフォームで先頭、結局その時点で勝負への集中力が切れている。わからない。仕上がり云々ではおそらくないし、力関係、距離適性、すべて条件を満たしていた。精神面のスランプ―。そしてそれを誘発したとすれば、丸1年、絶え間ない環境変化とたび重なる長距離輸送か。人間の転勤、それも単身赴任と考えれば、そのストレスは想像できる。

 コスモバルクにはファンが多い。気っぷのいい徹底先行であること。野武士然としたサクセスストーリーを持つこと。知人、友人としばしば話す。だいたい結論は決まっている。「逃げて欲しい。そうすれば強いんだから…」。岡田氏は岡田氏の思惑があってもちろん当然。有馬記念はジャパンCで負けたゼンノロブロイ、その直後を進む戦略を五十嵐冬樹に授けている。ただ結果は不完全燃焼。デビュー以来初めて、見せ場も作れずレースが終わった。今回日経賞、何やら引きずっていないだろうか。こうなると能力以前の問題でもある。

 武豊騎手がバルクに乗りたい、そうもらしたという説がある。大歓迎。ごく素直にそう思う。かつてオグリキャップ復活、その起爆剤となった豊騎手。彼がバルクに道を開いてやれないか。いずれにせよ今のバルクは、「馬が口を利けたなら…」、そんなことを切実に思わせる。岡田オーナー、田部調教師、そしてジョッキー。「馬優先主義」を基本に、3者の意思が統一されないと、次の「宝塚記念」も展望がみえてこない。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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