▲今週は、来年の2月に定年を迎える師匠・岩元市三調教師のお話
今週は、来年の2月に定年を迎える師匠・岩元市三調教師のお話をお届けします。若き日の和田騎手の代表馬テイエムオペラオー。年間無敗記録を達成するなど、その強さゆえに外野の声も小さくはなかったですが、デビューから引退まで、岩元師は一貫して和田騎手を起用し続けました。現在はフリーという立場であっても、師弟の絆は変わらないどころか、より一層強まっているよう。師匠の定年までに達成したい目標、師匠との知られざるエピソードを明かします。(取材:東奈緒美)
(前回のつづき)
定年までに何としても、通算500勝を達成させたい
東 来年の2月に定年を迎える岩元調教師についてお話を伺いたいんですが、残り約5カ月となった今(取材時点)、どういった心境ですか?
和田 先生も500勝がかかっていますからね。そういう区切りとなる目標もありますし、僕は僕で一戦一戦大事に乗りたいなと思っています。
東 岩元先生の500勝達成は、やはり和田さんにとっても大きな目標なんですね。
和田 そうですね。ただ漠然と日々を過ごすよりも、ひとつの区切りとして目標があるのはいいことだと思うから。今は自分のことより先生の500勝を目指していることのほうが面白いですよ。乗り役同士でも、いつもその話をしてるんやけど、また負かしよるんですわ、他のヤツが。腹が立つことにねぇ(笑)。
▲先生の500勝を目指してって話をしてるんやけど、負かしよるんですわ(笑)
東 そこは勝負の世界ですからね(笑)。区切りの数字まであと6勝ですね。
和田 そうですね。最低でも月に1勝すれば…と計算していたんだけど、先月(9月)は勝てなかったんですよねぇ。
東 先生が引退されることについて、正直、寂しいなぁというお気持ちはありますか?
和田 寂しいというか…。まぁ、いつかこのときがくることはわかっていましたからね。
東 覚悟をしていたと。
和田 そうですね。フリーになってからだいぶ時間が経ったとはいえ、今も変わらず面倒を見てもらっていて、頼りにしているところがあるから。フリーになったといっても、僕は所属しているつもりでずっとやってきましたし、最後まで岩元厩舎を優先するというスタイルも変えるつもりはないですし。
東 和田さんにとって、本当に大きな存在ですね。
和田 先生のようなホースマンでありたいと思ってます。その目標は、先生が引退したからといって変わるものではないですから。なにしろ、70歳になった今でも馬に乗ってますからね。しかも、僕に先着してくる(笑)。
東 今でも乗られてるんですね! すごい!
▲「70歳になった今でも乗られてるんですね!すごい!」
和田 バリバリ乗ってますよ。ウチの先生は気合いが違いますからね。もし馬に乗れなくなったら、定年を待たずに辞めるって言うてはったけどね。
東 乗れなくなるより定年が先にきてしまった感じですね。すごい先生ですね、ホントに。
和田 先生には尊敬の気持ち以外にはないよね。ただ、逆に引退してからが心配。馬に乗らない生活になって、どうされるんだろう…って。乗馬用の馬でも用意してあげようかな(笑)。
東 引退されても、トレセンには頻繁に来られるのでは?
和田 いや、先生はそういうタイプではないと思う。まぁ俺が開業していたら別やったと思うけど。もし俺の厩舎があったら、ご意見番として先生の席を絶対に用意しておくからね(笑)。そういう意味では、厩舎を継がなかったというのはちょっと…。いいのか悪いのかわからんけど、多少心残りではあります。
東 そうなんですね。
和田 でもまぁ、乗り役として、自分は自分でやりたいことがまだまだたくさんあるので。
東 今、お話が出ましたけど、調教師に転身するという選択は、ご自身のなかにあるんですか?
和田 今のところ具体的に考えてるわけではないけどね。さっきも言ったように、乗り役としてやるべきことがたくさんあるので。調教師としてもやってみたいことはあるけどね。言いたいこともたくさんあるし(笑)。でも、調教師さんも大変だよね、ホントに。
東 将来の選択肢のひとつではあるんですね。
和田 そうですね。いざそういう気持ちになったときに魅力があれば。でもまぁ、仕事はほかにもありますしね。やる気があれば、何をやっても面白いんじゃないかと思うし。もしかしたら、東さんのポストを狙うかもしれない(笑)。
東 取られる〜(笑)。和田さんのイベントとか、ファンのみなさんのあいだでは大人気ですものね。
和田 俺はただ笑かしてるだけやから。難しいことは何もしてない。まぁ実際は、笑かしてるのか笑われてるのか、ようわからんけどね(苦笑)。
(次回へつづく)