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アスクハードスパン(牡 栗東・河内洋 父ハードスパン、母イルバチオ)
母イルバチオはアイビスサマーダッシュ(GIII)の勝ち馬。母の父ロイヤルアカデミーはスピード値の高い種牡馬として知られる。芝短距離で通算25戦全勝の豪州女傑Black Caviarは2代父がロイヤルアカデミーだった。父ハードスパンは全日本2歳優駿(GI)を勝ったサマリーズの父で、日本で供用されたのはわずか1年。本国アメリカでの成績が予想以上に優秀だったため、すぐ呼び戻されて帰ってしまった。
シャトルで渡ったオーストラリアで芝のG1馬を出し、アメリカでもアーリントンミリオン(G1・芝10f)の勝ち馬を出しているので、芝適性もそれなりに備えているが、日本での種付けで誕生した現2歳世代がダート5勝、芝1勝という内訳であるように基本的にはダート向き。本馬は母が芝重賞の勝ち馬なので、芝とダート、どちらでもやれそうだ。いずれにしても短距離馬だろう。
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シエラ(牝 栗東・須貝尚介 父オルフェーヴル、母ゴールデンドックエー)
七夕賞(GIII)と小倉大賞典(GIII)を勝ったアルバートドックの半妹。母ゴールデンドックエーはラスヴァージネスS(米G1・ダ8f)の勝ち馬。その全兄Unusual SuspectはハリウッドターフカップS(米G1・芝12f)を勝った。母の父Unusual Heatは北欧の歴史的女傑Rossard(デンマーク産馬で同国とスウェーデンのダービーなどビッグレースを勝ちまくる)の息子で、米G3で2着となった程度の競走馬だったが、種牡馬としては大方の予想を上回る成功を収めている。2代母Penpontはニュージーランド産馬。牝系は19世紀から同国で育まれた独特のものだ。
母はダートG1を勝っているが、兄も、母の父も、牝系も基本的には芝向きなので、芝適性に関しては問題ない。父オルフェーヴルは現役時代に三冠を制し、フランスに遠征して2年連続で凱旋門賞(G1)2着。初年度産駒からロックディスタウン(17年札幌2歳S-GIII)、ラッキーライラック(17年アルテミスS-GIII)と2頭の重賞勝ち馬を出している。本馬はエレクトロアート≒Nureyev 3×3を持つので配合構成は上々。完成するのは遅めかもしれないが高確率で走ってきそうだ。芝向きの中距離タイプ。
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センテリュオ(牝 栗東・高野友和 父ディープインパクト、母アドマイヤキラメキ)
全兄トーセンスターダムはきさらぎ賞(GIII)、チャレンジC(GIII)を勝ったほか、オーストラリアに移籍後トゥーラックH(豪G1・芝1600m)を勝って念願のG1ウィナーとなった。他にネオスターダム(父ネオユニヴァース/15年アーリントンC-GIII・5着)、ラシンティランテ(父アグネスタキオン/12年フィリーズレビュー-GII・6着)などの兄弟がいる。母アドマイヤキラメキは現役時代にダート短距離で4勝。
クラフティワイフ牝系に属する良血がセールスポイントで、半弟にトーセンジョーダン(11年天皇賞・秋-GIなど重賞4勝)、トーセンホマレボシ(12年京都新聞杯-GII)がいるほか、カンパニーやヒストリカルなど、近親に多数の活躍馬がいる。本馬はトーセンホマレボシの4分の3同血でもある。母の父にエンドスウィープが入り、母はMr.Prospector 3×4のクロスを持つので手堅いスピードを伝えている。本馬も兄姉と同じく重賞で活躍するすることを期待したい。
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ソリッドドリーム(牡 栗東・角居勝彦 父Frankel、母Danedream)
母デインドリームはドイツ産馬で、牝馬ながら凱旋門賞(仏G1)、キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(英G1)、バーデン大賞(独G1)[2回]、ベルリン大賞(独G1)を制した女傑。凱旋門賞は後続に5馬身差をつけ、勝ちタイム2分24秒49はレコードだった。「Lomitas+デインヒル」という組み合わせは独オークス馬サロミナ(日本に輸入されエルフィンSの勝ち馬サロニカを産む)と同じ。本馬はその初子。父Frankelは英愛首位種牡馬9回の大種牡馬Galileoの最高傑作で、現役時代はイギリスのマイル路線を中心に走って14戦全勝(G1は10勝)の成績を残した。
ワールドサラブレッドランキングでは史上最高の「140」というレーティングを獲得している。初年度産駒からソウルスターリング(17年オークス-GI、16年阪神ジュベナイルフィリーズ-GI)、Cracksman(17年英チャンピオンS-G1)などを出し、種牡馬としても好スタートを切った。母方にドイツ血統を持つFrankel産駒といえば前出のソウルスターリングや先週の2歳戦で勝ち上がったシグナライズと同じ。本馬はデインヒル3×3という大胆なインブリードを持っている。どのような競走馬となるのか興味深い。ちなみに、Dubawiを父に持つ本馬の半弟は先月、英タタソールズ1歳セリで150万ギニー(約2億2500万円)の高値で落札された。
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フィエールマン(牡 美浦・手塚貴久 父ディープインパクト、母リュヌドール)
4分の3姉に現3戦2勝のルヴォワール(父ハーツクライ)がいる。母リュヌドールは伊仏でリディアテシオ賞(伊G1・芝2000m)を含めて3つの重賞を勝ち、04年のジャパンC(G1)にも出走しており7着。同じ3歳馬だったハーツクライに先着を果たしている。母の父Green Tuneは仏2000ギニー(G1・芝1600m)とイスパーン賞(仏G1・芝1850m)の勝ち馬で、Nijinsky+Ocean's Answer(≒Storm Bird)+Mr.Prospectorという配合構成はマジックストーム(ラキシスとサトノアラジンの母)と酷似している。
2代母Luth D'Orは極上の異系血統で配合に奥行きを与えている。初子と2番子は競走馬になれず、3番子となる前出のルヴォワールは3歳秋時点でわずか3戦。体質的に強い血統とはいえず、本馬も両前肢に深管骨瘤が出てデビューがやや遅れた。しかし、無事入厩を果たしたので症状は治まっているだろう。サンデーサラブレッドクラブが1億円で出資者を募った大器。2400m路線で本領を発揮するだろう。