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雨に咲いた花

  • 2005年04月18日(月) 16時53分
 4月13日、浦和「桜花賞」。10番人気ミライが大殊勲の逃げ切りだった。花散らしの冷たい雨。脚抜きのよい典型的な高速馬場になり、それがミライの潜在能力を100%引き出した。「一歩でも先に行こうとスタートに集中した」(金子騎手)。追い込み得意の同騎手としては珍しいほど、腹を括った先行策。2番手に人気のヨウヨウが控え、結果この馬が壁になったことも勝因だろう。1000m通過が62秒8、馬群がバラけたわりにペースは上がらず、ミライ自身の上がり49秒3〜36秒7だから、差し馬が届く道理が正直ない。ただし1600m1分39秒5は過去51年のレースレコード。馬場と展開、恵まれたことは確かだが、前2年の勝ち馬、メモリヒメ、カネマサヴィーナスあたりとは「大駆け」の質とレベルが違っている。

桜花賞(サラ3歳牝馬 定量 南関東G3 1600m不良)

 (1)ミライ       (54・金子) 1分39秒5
○(2)ヨウヨウ      (54・内田博) 2
△(3)テンセイフジ    (54・石崎駿) 1.1/2
 (4)インフレッタ    (54・甲斐) 1.1/2
△(5)シンデレラジョウ  (54・左海) 3
……………………………
▲(6)アウスレーゼ    (54・張田)
△(8)スコーピオンリジイ (54・酒井)
◎(10)セブンチャンピオン (54・佐藤隆)
△(11)クリストサファイア (54・今野)

単3440円 馬複4580円 馬単18000円
3連複23020円 3連単243670円

 ミライは父トーヨーリファール。昨夏の新馬、特別で連勝、それも900m→1400mをあっさりこなし、豊かなスピードと競馬センスをアピールしていた。が、その後骨折で半年のブランク。3月浦和を軽い相手に勝ったものの、今回は半信半疑の評価だった。折り合いの付くレースぶりから一介の逃げ馬ではなく、次走「東京プリンセス賞=5月12日大井1800m」が、再び試金石になるだろう。半姉に13年トゥィンクルレディー賞2着のカコ。

 過去と未来…、何ともネーミングが面白い。安池成実調教師は重賞初制覇がいきなり南関東クラシック。女性調教師としては、昭和50年北海道競馬、大川よね調教師以来2人目の快挙ということ。安池師自身は元川崎のジョッキーで、昭和79〜85年、35勝を挙げている。かつて地方競馬のよき時代にあった「レディスカップ」をアジャストメントで優勝した記録も持つ。「こんなレースを勝てるなんて夢のまた夢…」と、表彰式の彼女は感慨ひとしお。うっすら涙ぐんでもいるようだった。

 ヨウヨウは内田博騎手が一分の隙もないレースをした。自身1600mで1分40秒を切り、今回に限ると相手をほめるしかないだろう。懸念されたイレ込みもパドック、返し馬からは問題なかった。次走というならむしろ大井コースへのフィーリングがテーマになる。3〜4コーナー、石崎駿Jで早めに動けたテンセイフジが再び前進。ただ同馬の場合、細く写る馬体がいつも気になって仕方ない。インフレッタ、シンデレラジョウも、レース巧者ながら今日の結果が力通り。逆にアウスレーゼは返し馬でも外々へ終始もたれ、実績のある右回りで改めて狙う手がある。

 ◎のセブンチャンピオンは後方のまま見せ場なし。ここまで馬場が悪くなると…は言い訳だが、当日10キロ減、馬体の張り、気合などもひと息にみえた。ともあれ大井向きは間違いなく、プリンセス賞へどう立て直してくるか。まだ未練は残っている。

        ☆        ☆        ☆

 花粉症もようやく峠をすぎたようだ。通年の20〜30倍とされたスギ花粉、報道によればすでに8割が放散終了ということらしい。例年、さして重症にならない記者も、このひと月ばかりはポケットティッシュを毎日2個ずつきっちり使った。花粉99%シャットという新型マスクも試してみたが、これはなにやら息苦しい。競馬場はスギに限らず樹木に恵まれた場所である。今年初めて花粉症…という友人知人も少なくなかった。

 競走馬に花粉症はないのだろうか。誰もが思う疑問らしく、ネットにはそんな書き込みを多くみた。検索を続けていくと「日本ウマ科学会」なるサイトに行き当たった。ただし花粉症に関してはQはあってもAはない。答えるに足りぬと判断されたか、それとも解明が困難なのか。ごく普通には、原因不明の惨敗を喫した人気馬に疑惑がかかる。例えば先週JRA桜花賞ならアンブロワーズあたりだろうか。が、彼女もパドックでくしゃみをしたり、眼が腫れあがっていたりという様子はない。

 浦和桜花賞当日。低温、小雨模様で花粉は「やや多い」程度の予報だったが、スタンドに座る若いカップル、仲むつまじく手をつなぎ、おそろいの立体マスクをかけていた。ファンファーレが鳴る。赤いミニスカートの彼女が彼氏をみて微笑した。「さとしくん、応援のときはマスク外していいからね…」。馬群が4コーナーにさしかかり、さとしくんはマスクを外して一声した。桜花賞大波乱のあと、堅く決まった最終レース。それでも3連単は1400円ついた。二人は顔を見合わせてにっこりした。さとしくんは、彼女を思いやる伊達マスクだったのだろう。ほほえましい。確かにほほえましいけれど、次の瞬間、記者は何やら鼻の奥がむずかゆくなり、忘れかけていた。大きなくしゃみを連発した。

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日刊競馬地方版デスク、スカイパーフェクТV解説者、「ハロン」などで活躍。 恥を恐れぬ勇気、偶然を愛する心…を予想のモットーにする。

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