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騎乗者不足の原因は何か?

  • 2005年04月19日(火) 19時18分
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 4月は入学や進学、就職などあたらしい出発の月でもある。日高の騎乗者を養成する二つの機関でもこの春、新しい研修生を迎え、新年度のスタートを切った。

 「馬事通信」(道新スポーツ社)4月15日号によれば、まず3月30日にJBBA日本軽種馬協会の「軽種馬生産育成技術者研修27期生」12名が開講式に臨んだことを報じている。倍率は約3倍。今後1年間かけて、生産と育成に関する技術を身に付けることになる。

 研修生の出身は全国各地に及んでおり、長崎、大阪、愛媛、岐阜、高知、東京など。就職率100%と定着率80%を超えているとのことで、15年に及ぶこの研修制度が日高の各育成牧場の業務に果たしてきた役割は大きい。

 同じく、日高では4月12日、BTC軽種馬育成調教センター日高事業所の「第23期育成調教技術者養成研修生」の入校式も行われた。こちらは18歳から24歳までの男女20名(男子18名、女子2名)が入校。やはりカリキュラムは1年間かけて、調教技術者を育てることに主眼を置いている。この課程の卒業者はこれまで270名に及び、前述のJBBAと合わせると、ざっと500名以上の人材を競馬サークルに送り出してきたことになるだろう。

 ところが、先々週の当コラムでも書いたように、依然として日高では「人手不足」に悩む育成牧場が少なくない。とりわけ騎乗者不足が深刻なのである。毎年新たに技術者が養成され、彼らが育成の“現場”に新規参入してくるのに加え、民間でも例えば中央競馬の厩務員を目指す若者を「研修生」として受け入れているところもあり、それなりの補充はなされているはずなのに、相変わらずの人材不足というのはいったいどこに原因があるのだろうか?

 その答えはただ一つ。途中で辞めて行く若者が多いからである。なぜ途中で辞めてしまうのか?その理由は各人各様なのだろうが、馬という動物を扱うことの特殊性から、どうしても労働時間は他業種と比較すると長くなるし、落馬などの危険度も高い。つまり相当な「3K職場」なのである。

 しかし、競馬サークルに新規参入してくる若者の中には、夢と憧れの部分だけが肥大し現実の厳しさに対しての想像力がやや欠如している人も少なくない。基本的に「馬が好きな人」でなければ長続きしない職業ということなのだ。「競馬好き」ではなく、動物としての馬を好きな人、という意味である。

 そして、もう一つの人材不足の原因は、「優秀な人材が中央競馬の厩務員として辞めて行くこと」にもある。

 現場の経験が3年間必要と言われる競馬学校の厩務員課程を目指す若者は多い。というより、そもそもが日高で騎乗者として働く目的がそこにある、と言い換えてもいいだろう。満27歳まで受験資格があるので、それまでは厩務員になるために育成牧場で働いても、年齢制限を超えてしまったところで急激に労働意欲を失うケースもあるらしい。「厩務員になれないのならば、ここにいてもしょうがない」と考えるようになり、その結果辞めて行くというパターンである。

 かくして、この業界の人手不足はなかなか解消されないまま、その穴埋めを外国人に求めるケースも依然として多い。最近はオセアニアに加え、フィリピンやマレーシアなどの東南アジア系もずいぶん増えたようだ。BTCにいると、実に国際色豊かで驚かされる。

 とはいえ、どこの育成牧場でも、基本的には「日本人の技術優秀な若者」を欲しがっている。言葉の問題もさることながら、「外国人は玉石混交」との認識を持つ経営者が多いのである。果たしてこの人材不足が解消するのはいつのことになるのだろうか?

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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