▲キタサンブラックがGI4勝を飾った2017年、JRAの業績はどうだったのか?(撮影:下野雄規)
「11.8→15.8→21.3」。何の数字か、わかる人は皆無であろう。実はこれ、バブル経済と言われた1988年から90年にかけてのJRAの年間売り上げの伸び率(%)である。87年に1兆9731億4219万200円と2兆円に届かなかった売り上げは、90年には3兆984億5725万9500円へ。たった3年で3兆円の大台を突破したのである。
2019年4月限りで「平成」が幕を降ろすことも影響したのか、昨年来、バブル期を回顧するような企画が各メディアをにぎわした。バブル時代は日本の競馬にも強いインパクトを与えたが、近年の業績回復の傾向にも、バブル期と似た臭いがしないわけではない。地方競馬やセリ市場の好況を見ればなおさらである。今回は5年に及んだ業績回復期の状況をおさらいし、この流れにどの程度の持続性があるかも考えてみたい。
2つのGI増設も伸び率は縮小―中央
冒頭で述べた通り、中央の業績はバブルの後押しで急伸し、90年代に入っても勢いは持続。95年には阪神淡路大震災の影響で微減となったが、その後は持ち直して97年に4兆円の大台を達成。そこから、長期不況の影響で低迷期に入り、11年3月の東日本大震災が追い打ちをかけた。結局、同年の売り上げは2兆2935億7805万3600円。97年のピーク時から42.7%も減少した。
翌12年は福島が再開するなど、開催の正常化で4.4%回復したが、特殊要因抜きの回復は13年から。といっても、同年の伸び率はわずか0.4%で、本格回復は14年からと言える。ここから昨年までの伸び率(%)は「3.7→3.6→3.4→2.9」と推移しており、バブル期とは比較にならない。
特に昨年の場合、いくつかの特殊要因も絡んでいた点に注意が必要だ。第一にGI競走2つの新設がある。大阪杯、ホープフルSの2つで、16年の約100億円から約265億円に伸びた。
また、降雪で1月2週の中京、京都がそれぞれ月曜と火曜に順延。2月2週の小倉も月曜に順延となった結果、開催日数増の効果で、京都を除けば売り上げが伸びた。代替開催による増加分も約136億円に上り、2つを合わせると約300億円になる。16→17年の純増額は約767億円で、結局、「真水」は467億円。14-16年は前年比875億-897億円伸ばしており、伸び方はかなり鈍った。
もちろん、今はJRAほどの巨大な事業体が、5%を超える規模で業績を拡大できるような時期ではない。人口減と高齢化が進み、政府・日銀がいくらカネをまいても、個人所得と消費は伸び悩んでいる。この状況で上記の数字を残したのは上出来と見るべきか。
発売チャンネル別の動向を見ると、ネット投票のみが前年から5.9ポイント増で約1兆8395億9014万円。売り上げ全体の67%と、初めて3分の2を超えた。一方で、現金投票は縮小が続いているが、例外的に伸びが大きいのが川崎、浦和の両ウインズだった。
川崎は発売金(売り上げに出走取消による返還分を加えた額)が前年比9.7%増の268億1448万3900円。全国6位に浮上した。浦和はまだ全開催日発売をしていないが、前年比11.9%増の124億4072万200円。また、地方の共同トータリゼータシステムを使用する各地のJ-PLACEの合計も585億3910万2700で前年比7.8%伸びた。この辺は、器が小さいとは言え、地方が中央を大きく上回る率で売り上げを伸ばしている点と関係がありそうだ。
地方は暦年で5000億円台回復
その地方競馬は、昨年1-12月の売り上げが5407億6893万3500円で前年比13.3%増。暦年で5000億円の大台を回復した。地方は4-3月の会計年度を採用しているが、年度でも5000億円突破は確実で、この場合、16年ぶりとなる。