◆コンデュイットの近親を日本人が購買か
英国における2018年最初の市場となる「タタソールズ・フェブラリーセール」が、2月1日と2日の2日間にわたってニューマーケットで開催された。
フェブラリーセールとは、繁殖牝馬、1歳馬、2歳馬、現役馬と、様々なカテゴリーの馬が出てくるミックスセールで、2か月ほど前に行われたディセンバーセールの縮小版のようなマーケットなのだが、一昨年までは15万ギニーも出せば最高価格馬が手に入り、平均価格が1万ギニー台で、中間価格は1万ギニー以下という、ニューマーケットで開催されるマーケットの中では年間でもっとも下のクラスの馬たちが取引される市場だった。そして、一昨年までは開催が1日だけのワン・デイ・セールであった。したがって、筆者がメディアでこのセールの動向を取り上げたことは、これまで一度もなかったはずだ。
ところが、上場申し込みが増えて2日間開催となった昨年、イーストンエンジェルという準重賞勝ち馬に、50万ギニーというフェブラリーセールとしては破格の高値が付いて、市場関係者を驚かせた。更に、上場頭数が増えたゆえ総売り上げが歴代最高となったのは当然のこととして、平均価格(1万6968ギニー)も中間価格(8000ギニー)も歴代最高をマーク。マーケットとしての位置づけが変わりつつあることを予感させた。そして、その変貌が決定的になったのが今年のマーケットで、もはやメジャーな市場の1つと言ってもおかしくなくなったフェブラリーセールの結果を、ここでレポートさせていただくことにする。
指標は、総売り上げが前年比40.1%アップの803万7150ギニー、平均価格は前年比58.4%アップの2万6880ギニー、中間価格は前年比12.5%ダウンの7000ギニー、前年10.3%だったバイバックレートは、今年16.9%となった。
最高価格馬は、上場番号379番として登場した現役馬のウィリージョン(牡3、父ダンシリ)で、驚くなかれ190万ギニー、日本円にしておよそ3億1920万円という、オクトーバーのブック1かと見紛うような価格での購買となった。
同馬は、G1愛プリティポリーS(芝10F)やG1ジャンロマネ賞(芝2000m)を制したイジートップの2番仔で、祖母ジージートップがG1オペラ賞(芝2000m)勝ち馬。3代母カラースピンがG1愛オークス(芝12F)勝ち馬で、その産駒にチャンピオンステイヤーのケイフタラや、チャンピオン古牡馬のオペラハウスらがいるという、超がつく良血馬である。
1歳秋にタタソールズ10月市場に上場され、チャイナホースクラブをはじめとしたパートナーシップに32万5000ギニーで購買され、ウィリアム・ハガス厩舎に入厩。10月16日にヤーマスのメイドン(芝7F)でデビューし、ここを2.1/2馬身差で制して見事デビュー勝ちを飾っている。
2歳時はこの1戦のみで終了した同馬に、ブックメーカーのスカイベットが2000ギニーへ向けた前売りで41倍、スタンジェームスがダービーへ向けた前売りで67倍のオッズを掲げている、すなわち、有力とまでは言えぬまでも、戦線の片隅に名前が出ているクラシック候補が、ウィリージョンなのであった。壮絶なバトルの末、落札に成功したのは、ハイライズやポストポンドを所有したことで知られる馬主シェイク・モハメド・オベイダ・アル・マクトゥームの代理を務めたロジャー・ヴァリアン調教師だった。今後は、ハガス厩舎からヴァリアン厩舎に転厩して、春のクラシックを目指すことになる。
なおシェイク・モハメド・オベイダは、昨年秋のタタソールズ10月1歳セールで、ウィリージョンの1歳年下になる半弟(父ドゥバウィ)を、セッション2番目の高値となる260万ギニーで購買している。昨年誕生した50万ギニーという、このセールにおける歴代最高値は、セール初日の段階で既に3頭が更新をしていた。
そのうちの1頭で、日本人による購買と見られているのが、上場番号149番として登場したテティス(牝5、父インヴィンシブルスピリット)である。バリーマコールスタッドの自家生産馬で、叔父にG1キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(芝11F211y)など4つのG1を制したコンデュイットがいるファミリー出身のテティスは、マイケル・スタウト厩舎からデビュー。現役時代は6戦1勝、G2ロックフェルS(芝7F)2着などの実績を挙げた。
昨年春に繁殖入りし、1月13日に初仔となる父ロペドヴェガに牝馬が産まれたばかりのテティスは、当歳馬とともにセールスリングに登場。最終的には55万ギニーで代理人のジョン・マコーマック氏が購買している。
来年以降も、フェブラリーセールは目が離せない市場になったと言えそうである。