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2月で定年を迎える岩元調教師にお話を聞いてきました

  • 2018年02月06日(火) 18時00分
職人

定年となる岩元市三調教師




「竜二自身が努力し、つかんだのがオペラオー」


 今年も2月に突入。節分の開催で記録が続出しましたね。

 まずはきさらぎ賞(GIII・京都芝1800m)。サトノフェイバー(牡3)が好スタートから先頭を奪いました。直線では「よっしゃー! フルチャンがキターーーーーー!」「頑張れ! 行け!」と力いっぱい応援。キャリア1戦の勝利は、レース史上初の快挙だそうです。おめでとう! 南井厩舎の皆さんもおめでとうございます。皐月賞(GI・中山芝2000m)へ楽しみが広がってきました。

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サトノフェイバーと古川騎手が重賞制覇!


 テイエムジンソクで東海Sを制し今年重賞2勝目、フルチャンのフェイバーが始まってますね。いやフィーバーですね。

「馬に乗るのが大好き。だから初心から変わりなく乗り続けているだけです。いい馬に乗せていただいていますから」と控えめなコメントだったけど、花の12期生の活躍から目が離せません。フルちゃん、ハナ差の勝利は大きいですよ。GIの舞台で待ってます。

 南井調教師も大活躍、今年は早くも7勝され好スタートです。僕も昨年頂いた300勝記念キャップをかぶって応援します。

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南井調教師も古川騎手も大活躍です


 東京新聞杯(GIII・東京1600m)を制した矢作厩舎のリスグラシューは25年ぶりの4歳牝馬の勝利。古馬になって急成長を見せましたね。今後は阪神牝馬Sからヴィクトリアマイルを目指すそうです。精神面でのパワーアップは、大きな成長につながっていきますね。まだまだ寒さが厳しいですが、春が楽しみです。

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 春が来る前に、長年競馬の世界で活躍された調教師の引退が迫ってきます。僕にもご縁が深い岩元調教師にいろんな話をお聞きしました。

常石 先生、今日はよろしくお願いします。長い間お疲れ様でした。何年やってこられましたか?

岩元 ありがとうございます。そうだね。騎手もちょっとしてたから51年くらいになるね。

常石 半世紀以上ですね。騎手時代も大活躍されたでしょう。バンブーアトラスでダービーを制覇され通算578勝、そして調教師で497勝(取材時)。合わせて1000勝以上は、すごい記録だと思います。今でも毎朝調教に乗っておられるでしょう。先生の馬に対する思い、どんなところにあるんですか?

岩元 うわー、難しい質問ですね(笑)。馬に乗らないとわからないことがいっぱいあるでしょう。自分にはそれしかできないからね。19歳の時にこの世界に飛び込んでから、いろんなことがありましたね。

 初めて園田競馬場へ連れて行ってもらって競馬を見たとき、必死で馬を追う騎手の姿を見たときに感動しましたね。俺の体にぴったりだと思ったんです。とっても小さな体だったからね。

常石 僕も一緒です。兄がでっかいので、僕に「お前にしかできない仕事があるよ」と教えてくれたのがきっかけです。

岩元 いろんなことがありましたね。同じ鹿児島出身の山下一男騎手の紹介欄を見て布施正厩舎を訪ねました。デビューまで7年かかりましたが、布施先生はよく走る馬に乗せてくれました。ありがたい話ですね。1980年には桜花賞で1番人気のラフオンテースにも乗せてもらいました。乗り味がよくバネのいい馬で、いろんなことを教えてもらいましたね。

 経験が大きな仕事につながると思いますから、やはり走る馬に乗って自分で考え、学んでいくことが大事ですね。

常石 だから和田騎手がテイエムオペラオーに乗り続けたんですね。乗り替わりはよくある話ですが、当時は考えなかったですか?

岩元 僕を信頼して乗せてくれた師匠のことを思うと、乗り替わりはなかったですね。今の時代、乗り替わりが多く乗せ続けるのは難しいですが、いろんな競馬場で乗せて経験を積ませて、それに応えてくれたんだと思います。竜二自身が努力し、つかんだのがオペラオーでしょう。それは凄いことだと思います。

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「竜二自身が努力し、つかんだのがオペラオー」(撮影:下野雄規)


常石 先生の経験からの信念ですね。僕も中尾正調教師から「馬主に結果を見せないといい馬に乗っていけない。しっかり考えて乗るように」と言われていましたね。岩元厩舎とは近かったので先生のスタイルをそばで見ることができ、いい刺激になっていました。

岩元 僕は馬主に恵まれていましたね。竹園正繼さんは同じ鹿児島出身ということもあり、昔からの付き合いがありました。

常石 オペラオーの仕上げに何か工夫されたことはありますか?

岩元 1戦ごとに強くなっていったので馬自身がつくっていったと思います。もちろん和田騎手自身の工夫もあったんだと思います。あそこまで走ってくれた馬に感謝しています。何も言うことは、ありません。いい仔が生まれてくれたらいいですね。

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着ているのはオペラオーのジャンパーです


常石 和田騎手にメッセージはありますか?

岩元 竜二ですか?技術は私をはるかに超えているから、何も言うことはないですが、いつまでも勝負師として頑張ってほしいです。竜二は勝負服を厩舎へ必ず自分で取りに来ます。こういった心得が大事だと思います。

常石 最近は外国人の騎手が多くなってきましたがどう思いますか。

岩元 最近のファンは馬を見ないで騎手で馬券を買って応援をしてくれる傾向にありますが、馬をしっかり見てほしいですね。それと新人騎手が乗りにくくなっていますね。みんなで考えて育ててほしいです。

 外国の騎手が何もわからない国に騎乗しに来るのは、ハングリー精神が強いのだと思います。日本の騎手も、強い精神力が大事かな?

常石 そうですね。日本競馬はとっても条件がいいと言われていますよね。馬も強くなったし、馬具もいろいろ出ていますよね。

岩元 最近は施設がよくなっていますが、これからは調教師も騎手も厳しくなってくると思います。私はいい時代に騎手と調教師を経験させていただき、よかったと思います。自分のスタイルができなくなったら潮時と思っていたので感謝です。何事も覚悟を決めやっていかないといけませんね。終わりにも覚悟ですよ。

 馬はとっても素直な動物です。応援してやってください。ありがとうございました。

常石 とってもいいお話を聞かせていただきありがとうございました。僕も覚悟を決めて頑張ります。

岩元 厩舎が近くだったし竜二と仲良しだったのでよく見ていましたよ。努力家だったね。落馬をして残念だったけどまた会えてよかった。頑張ってほしい。応援していますよ。

常石 ありがとうございます。見ていてくださいね。感謝の気持ちでいっぱいです。

 先生の優しさと思いやりがひしひし伝わる取材でした。途中「待っててね」と席を外され、わざわざ僕とおかんのお茶を買ってきてくれました。ご馳走様でした。

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 最後に、和田騎手にも一言いただいてきました。

常石 岩元先生に最後のメッセージをお願いします。

和田 ずっと僕の師匠だし、絶対に越えられない師匠なので最後なんて思っていないです。これからもよろしくお願いします。

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 つねかつこと常石勝義でした。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

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