▲山あり谷ありの騎手人生、浮上のきっかけになったこととは
昨春のコンビ結成から5勝2着2回。豊富なスピードで安定した成績を残しているテイエムジンソクと古川吉洋騎手。昨年チャンピオンズCで僅差の2着から東海S勝利を経てフェブラリーSでの巻き返しが期待される。しかし、人馬共にここまで順風満帆だったわけではなかった。後編では、福永祐一騎手や和田竜二騎手らがいる「花の12期生」でGI制覇一番乗りをあげながら、年間4勝時代を経て再ブレイクを果たした古川騎手に迫る。そして、今週末のフェブラリーSにかける思いとは。(取材・文:大恵陽子)
「花の12期生」で誰よりも早く手にしたGIタイトル
古川吉洋騎手がデビューしたのは1996年。同期には天才・福永洋一騎手の息子・福永祐一騎手、JRA初の女性騎手の増沢(旧姓:牧原)由貴子騎手、田村真来騎手、細江純子騎手、JRA初の双子騎手の柴田大知騎手・未崎騎手らがおり、メディアでは「花の12期生」として華々しく取り上げられた。
「(福永)ユーイチや(和田)竜二は最初からすごかったですね。自分は12期生には入っていても“花の”12期生に入っている感覚はなかったです。単純に『同期、すげーな』って。もちろん負けたくない気持ちもありましたけど、単純にすごかったですからね」 やや俯瞰的に当時の報道を見ていた。
デビュー2年目の暮れ、阪神3歳牝馬S(現・阪神JF)をアインブライドで勝利し、GI初制覇を遂げた。GI制覇は同期で一番乗り。2着には現在調教師になった高橋亮騎手とキュンティアがいた。
「人と馬に恵まれました。アインブライドを管理する宮先生が最初から『(騎手を)変える気はないから、気にせず乗って来いよ』っておっしゃってくださっていたんです。あの時はパドックからすごく馬の調子がいいのも感じ取れました。今でもそうですけど、でも当時は若かったんで、冷静な『勝ちたい』じゃなくて、夢中な『勝ちたい』でしたね。ゴールしてパッと横を見て2着が(高橋)亮だって気づきました。そして『俺、勝ったんだ!』って」 無我夢中で追い続け、同期の誰よりも早く手にしたGIタイトルだった。
しかしこの後、年間4勝しか挙げられない年があるなど、トンネルに突入した。
「何でかと言われると困りますが、僕の何かが悪かったんでしょう。山あり谷ありというか、だいぶ谷が多かったですね」