阪神JFより一段と力強くなったラッキーライラック/チューリップ賞
◆桜花賞は「ノーザンFの生産馬」の独占状態か?
10頭立ては1994年に重賞に昇格して以降、最少タイの出走数なので、馬券の妙味は少ないものの、桜花賞の最重要トライアルであることに変わりはない。本番に向け、有力馬の力量をしっかり把握したい。
最近10年の桜花賞で「1〜3着」した30頭のうち、約3分の2近い「18頭」がこのチューリップ賞出走馬である。今年は、シンザン記念のアーモンドアイ(生産はノーザンF)、クイーンCのテトラドラクマ(同じくノーザンF)、フェアリーSのプリモシーン(同じくノーザンF)などが桜花賞に直行する予定なので、13年、15年のように桜花賞の1〜3着馬がみんなチューリップ賞組などということはないだろうが、ここに出走の有力馬ラッキーライラック、リリーノーブル、そして伏兵の多くもノーザンFの生産馬である。
オーナーこそ異なっても、ひょっとすると本番=桜花賞の上位馬は例によってことごとく「ノーザンFの生産馬」によって独占状態になるかもしれない。
最近10年の桜花賞で馬券に関係した18頭のチューリップ賞出走馬のうち、ちょうど半分の9頭が、「阪神JF→チューリップ賞→桜花賞」という阪神1600mの王道路線組によって占められるが、このチューリップ賞には12月の阪神JFで上位1〜3着を占めた「ラッキーライラック、リリーノーブル、マウレア」がそろって出走してきた。
きまった路線に、きまったブリーダーの、きまったような血統背景をもつ馬の対戦となると、クラブ所属の馬が多いのと、管理するトレーナーが別々であることを除くと、まるでヨーロッパのクラシック路線のように思える。1戦だけの型破りの挑戦で、新星の可能性を秘めるサラキアも、シルクレーシングの所属だが、ノーザンFの生産だ。
人気でも、阪神JFを1分34秒3(上がり33秒7)で快勝した当時より一段と力強くなったラッキーライラック(父オルフェーヴル)にかかる期待は大きい。
輸入馬の母ライラックスアンドレース(父フラワーアレイは、アイルハヴアナザーの父でもある)は、その祖母ステラマドリッド(父アリダー)がもう20年も前に輸入されているように、日本で多くの活躍馬を送って大人気の牝系。ミッキーアイルも、ダイヤモンドビコーも、ハーツクライの一族もみんな同じファミリーである。
もし、危ない一面があるとすれば、昨年の新種牡馬になる父オルフェーヴルが、このラッキーライラックが3戦3勝(重賞2勝)、ロックディスタウンが3戦2勝(重賞1勝)して頭角を現しているのに、ここまで現3歳世代は全国で111頭がデビューしながら、勝ち馬はたった「14頭」しかいないこと。大物を出す代わりに、走らない馬も多いのはステイゴールド系の特徴とされるが、最初のうちは必ずしも産駒の評価が高くなかった父ステイゴールドにしても、さすがにここまで勝ち上がり率が低くはなかった。
あまり早い時期の勝ち上がり率の高くないルーラーシップでさえ、この3歳世代は109頭の出走で、勝ち馬は約2倍の「29頭」もいる。オルフェーヴルは特異なのである。
それに1番人気の阪神JFでとくに敗因はないのに9着に凡走したロックディスタウン(次週のフラワーC出走か)の印象を重ねあわせると、大物らしい快走が期待できると同時に、ひょっとして肝心なときに……。オルフェーヴルは怪しい種牡馬かも知れないのである。
1戦だけのサラキアは、母サロミナ(その父はニジンスキー系ロミタス)が3戦無敗のまま独オークスを勝っている。桜花賞向きのマイラーとも思えないが、その父ロミタスは、まるで時計不足と考えられた良馬場の凱旋門賞を、なんと2分24秒49で独走したデインドリームの父でもある。レース内容に注目したい。