Royal Highnessの16 一発でポーズ決めた体幹の強さは走る証し/吉田竜作マル秘週報
◆2歳馬となると時には30分近くポーズが決まらないが…
かつてナムラクレセント(08年菊花賞3着、11年天皇賞・春3着)を担当していた房野助手は、福島厩舎の解散に伴い、杉山厩舎へと転厩。新たに担当しているのが目下、交流重賞路線で稼ぎまくっているケイティブレイブだ。まさに“持ってる男”…で済ましてしまうのは簡単だが、決して“引き”だけで生きている男ではない。愛馬へのこだわりはもちろん、自らの肉体にかけるこだわりも半端ではない。そんな男が以前、こんな話を口にした。
「コンビニの前でヤンキー座りしているヤツとか、電車でグダッと脚を広げて、だらしなく座っているヤツがいるじゃないですか。あれは多分、体幹がしっかりしていないんですよ。脚を広げないと体を支えられないから、ああいう姿勢になる。体幹を鍛えたら、ああいう姿勢にはならないし、もっと言うなら、ヤンキーにもならないんじゃないかって」
房野助手の“持論”が鮮やかに記憶によみがえったのは先日、大山ヒルズに2歳馬の取材に行った時のことだ。立ち姿を撮るために、カメラマンの前で静止させたくても、なかなかうまくいかない。まだ気性が幼くて、落ち着きがないことが原因と思われるかもしれないが、決してそうではない。
例えば、ある馬は静止はするものの、必ず後ろ脚のどちらかを浮かせてしまう。「こいつはどっちかの脚をすぐ休ませようとするんだよなぁ」とは立ち会ってくれた齋藤慎取締役ゼネラルマネジャー。カメラマンが「脚はそれでいいので、重心を後ろの方にお願いします」と姿勢修正のリクエストをしても、この微調整がまた難しく…。少し後ろに押すと一歩、二歩と下がってしまうし、前に引っ張ってきても、なかなか思ったところでは止まってくれない。もともとサラブレッドは速く走ることは得意でも、遅く歩いたり、止まってポーズを取ることなどは得意ではないのだ。
もちろん、レースをバリバリ使っているような馬は体幹が鍛えられているので、立ち姿を決めるのも苦にはしないが、デビュー前の2歳馬となると、そうはうまくはいかない。時には30分近くポーズが決まらず、苦労する馬もいたほどだ。
そんな中でも、実はビシッと決めてくれた馬がいる。Royal Highnessの16(牝=父Dubawi)だ。
「さすがは外国産馬。育ちが違うよな」と微妙に自虐気味だったのは齋藤氏だが、顔つきも、たたずまいも、群を抜いて大人びている。
取材時の圧倒的な完成度が、競走成績に反映されるとは限らないが、この馬が一発でポーズを決められたのは房野助手の言う「体幹がしっかりしている」からなのは間違いない。POG指名候補として、覚えておいてほしい。