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香港競馬が急上昇?豪州セールで高額馬を多数購買

  • 2018年04月18日(水) 12時00分


◆ディープインパクト産駒やエピファネイア産駒も登場

 4月9日から11日までオーストラリアのシドニーで行われた、「イングリス・イースター・イヤリングセール」のブック1は、最大手のアロウフィールド・スタッドから、ディープインパクト、エピファネイア、ロードカナロアの産駒が上場されたことで、日本でも話題となった。

 市況から記せば、上場頭数が前年に比べて10%以上多かったため、総売り上げは前年比6.5%アップの1億1645万7500ドルと伸びたが、平均価格は前年比2.1%ダウンの34万7634ドル、中間価格が前年比3.8%ダウンの25万ドルという、落ち着いたマーケットとなった。

 注目のディープインパクト産駒は、3頭カタログに記載されていたうちの1頭が欠場。上場番号11番として登場した、G1クールモアクラシック(芝1500m)勝ち馬アルヴァータの4番仔となる牝馬は、牝馬としてはセッション4番目の高値となる110万ドルで、調教師クリス・ウォーラーと代理人ガイ・マルカスターのタッグが購買。上場番号70番として登場した母チャーミングエステルの牝馬は、先月のG1ドバイワールドC(d2000m)で3着に入ったムブタヒジなどの馬主として知られるシェイク・モハメド・ビン・ハリファ・アル・マクトゥームが100万ドルで購買している。

 また、上場番号35番として登場した、父ロードカナロア・母バリローチェ(その父ディープインパクト)の牡馬は、ダレン・ウィーア調教師と代理人ジョン・フットのタッグが55万ドルで。上場番号405番として登場した、父エピファネイア・母トラヴェシーア(その父ディープインパクト)の牝馬は、ノーザンファームが26万ドルで購買している。

 今年のイースターセールで筆者の目を引いたのは、香港ジョッキークラブによる活発な購買だった。3日間を通じて6頭の1歳馬を、総額460万ドル(約3億9300万円)で購買し、なんとセールのトップバイヤーになったのである。

 オーストラリア産馬やニュージーランド産馬は香港競馬の中心的存在で、オセアニアのセールにおける香港ジョッキークラブの購買は、これまでも頻繁に行われてきた、しかし、これだけの価格帯(購買馬の平均価格766,666ドル=約6550万円)の馬を揃えたことはこれまでなかったはずで、いささか驚かされている。

 中でも、上場番号223番の牡馬と、上場番号416番の牡馬は、いずれも100万ドルと、香港ジョッキークラブの購買としては初のミリオン越えとなったことが、地元・香港でも話題となっている。

 両馬はいずれも、父がアイアムインヴィンシブル(その父インヴィンシブルスピリット)だ。現役時代の勝ち鞍はG3までで、G1ではグッドウッドH(芝1200m)でテイクオーヴァーターゲットの2着となったのが最良の成績だった馬だが、種牡馬としては、初年度産駒からG1ニューマーケットH(芝1200m)やG1クールモアスタッドS(芝1200m)を制したブレイズンボウが出て、13/14年シーズンのファーストシーズンサイヤーチャンピオンとなったのがアイアムインヴィンシブルだ。市場でも売れ筋の種牡馬となっており、今年のイースターセールでも香港ジョッキークラブ購買馬を含めて、5頭の産駒が100万を越える価格で購買されている。

 上場番号223番の牡馬は、LRアレグザンドラS(芝1600m)を含めて3勝している他、7つの重賞で入着を果した活躍牝馬マリアンヌの初仔となる。そして、上場番号416番の牡馬は、昨シーズンのG1サウスオーストラリアンダービー(芝2500m)勝ち馬ヴォラタイルミックスの半弟という良血馬である。

 香港ジョッキークラブが中国本土に建設中の新しいトレーニング施設を巡って、豪州が香港からの馬の輸送に厳しい条件をつけたことに対する示威表明として、1月にゴールドコーストで行われたマジックミリオンセールを、香港ジョッキークラブはボイコットしている。その分の予算がこちらに廻ってきたという見方も出来るが、いずれにしても、香港ジョッキークラブがかつてない規模の予算を組んで、このセールに臨んだことは紛れもない事実である。

 香港ジョッキークラブによる団体購買だけでなく、香港バイヤーの個人による購買も活発だった。例えば、セール2日目に上場番号268番として登場した父ファストネットロックの牡馬を、180万ドルというセッション2番目の高値で購買したジョージ・ムーア・ブラッドストックは、香港のトップトレーナー、ジョン・ムーアの子息が運営する仲介業者である。氏名こそ明かさなかったものの、これが香港のオーナーの依頼による購買であったことを、ジョージ・ムーアは購買後に明言している。

 香港に流入する若駒たちの水準が、急上昇していることは間違いなく、これに前述した、中国本土の新トレーニングセンターの効果が相乗すると、香港調教馬が近い将来、飛躍的に強くなる可能性があると、覚悟を決めておいた方が良さそうである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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