ディープインパクト産駒が数多く海外に行ってしまったら!?(村本浩平)
◆サクソンウォリアーの活躍を見た海外のバイヤーが…
5日の早朝、イギリスのニューマーケットから素晴らしいニュースが届けられた。
安平・ノーザンファーム生産のディープインパクト産駒、サクソンウォリアー(Saxon Warrior、牡3)が、デビューからの4連勝で英2000ギニーを優勝。ディープインパクト産駒の欧州クラシック制覇は、仏1000ギニーを制したビューティーパーラー(Beauty Parlour、牝9)以来の快挙であるだけでなく、サクソンウォリアーは英クラシック二冠目となる英ダービーでも、俄然注目を集める存在ともなった。
この知らせに、日本産馬に限っては海外での成績を含めたPOGをされていて、その上、海外のクラシック制覇は「ポイント10倍!」ルールで(書いている自分でもよく分からないが(笑))サクソンウォリアーを持たれていた方は、日本ダービーを前にして優勝が確定したことだろう。
同じ5日には、アメリカのチャーチルダウンズ競馬場で行われたGIターフクラシックSにおいて、こちらもノーザンファーム生産のヨシダ(Yoshida)がGI初制覇。こちらはハーツクライの産駒となる。
ちなみにサクソンウォリアーは、クールモアグループからノーザンファームに預託されたメイビーに、ディープインパクトを配合された馬。一方、ヨシダは2015年のセレクトセール1歳セクションにおいて、ウィンスターファームが1億152万円(税込み)で競り落としている。
この結果を見て、というよりも、この後のサクソンウォリアーの活躍によって左右される面も大きいが、今年のセレクトセールではディープインパクト産駒が、海外のバイヤーによって次々と落札されていく可能性が出てきたと言える。
海外の競走馬市場は1歳セリが主流であることを考えると、ディープインパクト産駒のターゲットとなるのも1歳セクションとなりそうだが、そこで購入できなかったバイヤーが、当歳セクションに流れていく可能性も否定できない。
「そんなのPOGに関係ないじゃん!」とお思いの方、実は指名馬選びに影響が出てくるかも知れないのだ。鍵となっているのは、サクソンウォリアーが勝利した後の、日刊スポーツに掲載されていたノーザンファーム、吉田勝己代表の言葉である。
「生まれたときから素晴らしい馬だった。譲ってほしいとお願いしたくらい」
その世代におけるノーザンファームで誕生した、ディープインパクト産駒をほぼ全て見ているであろう、吉田代表にそこまで言わしめたサクソンウォリアー。ひょっとしたら、この3歳世代におけるディープインパクト産駒のNo.1ホースは、サクソンウォリアーだった可能性もある。
今年のセレクトセールも、血統、馬体共に、世界最高水準のディープインパクト産駒が続々と上場されていくはず。その時、サクソンウォリアーの活躍を見た海外のバイヤーが、「俺も! 俺も!」と購入していった結果、ディープインパクト産駒のトップホースたちは、そのほとんどが海外に行ってしまっているのかもしれない。
となると、ますます「海外ポイント10倍POG」を認知させなくてはいけない! とも思ってしまうのだが、冗談はそこまでにして(笑)、国内におけるディープインパクト産駒のトップホースが減ってしまうことは、それ以外の種牡馬の産駒にもクラシックを勝つチャンスが出てくるということでもある。対処法としては、ほぼ間違い無くクラシック期間は海外でレースをしていないはずのクラブ所属馬から、ディープインパクト産駒を選ぶべき、という考察もできる。
まずは今年のセレクトセールの結果を見てからの話になりそうだが、もし、ディープインパクト産駒が数多く海外に行ってしまった際に、セリの落札馬からどんな種牡馬の産駒を指名すればいいのか? ともなる。しかしながら、その答えは簡単。ロードカナロア産駒を指名しておけばいい。
まあ、それは初年度産駒たちの競走成績を見れば一目瞭然だが、2世代目に当たるこの2歳は育成スタッフも、より特徴や成長過程を掴んで調教を行っている。昨年よりもよりベストな時期にデビューが可能となるだけでなく、厩舎に入ってからもレース選択や距離適性まで、更に個々の産駒にあったローテーションが組まれていくだろう。
そのノウハウは3年目産駒、4年目産駒と蓄積されていく。しかも、配合される牝馬も更に質が上がっていくことは疑いようがなく、こうした繁殖牝馬の力を借りて、更に産駒成績も上がっていくこと請け合いである。
にもかかわらずロードカナロア産駒は、まだ海外のバイヤーには、そこまでセンセーショナルな種牡馬とはなっていないはず。つまり、ロードカナロアのトップホースたちは、この先もしばらくは日本のバイヤーによって購入されていくはずであり、POGファンの皆さんも来年以降のドラフトでは、安心して産駒選びができそうだ。
ところで今年のセレクトセール、ディープインパクトに続く、ミリオンホース(1億円以上の取引馬を数多く輩出する種牡馬)は、ロードカナロアであると断言する。その答えも簡単。サンデーサイレンスを血統に持たないロードカナロアは、現在の日本生産界でクロスをさほど考えなくてもいい、しかも話題性に溢れた種牡馬。今年も多くの繁殖牝馬を集めているが、もし今年、ロードカナロア産駒で、サンデーサイレンスを母系に持たない産駒が種牡馬となっていたとするなら、間違い無く多くの繁殖牝馬を集めていたはずだ。
昨年のセレクトセールで、ロードカナロア産駒としては初めてのミリオンホース(1億9440万円)となった、キングスローズの16(牡)を落札した(株)NICKS。アドバイザーである竹内啓安氏は、その魅力を語った後で、「種牡馬にしたいと思える馬」と話していたが、これは一流の母系を持ちながら、サンデーサイレンスが含まれていないという、キングスローズの16の血統背景のニーズも見込んでいるのだろう。
つまり、今年のセレクトセールでもキングスローズの16のような、「母系にサンデーサイレンスの血を持たないGIホース、あるいはGIホースの母」の産駒は、種牡馬としての価値も評価額として加えられていくはず。サンデーサイレンスに続き、父系を確立させてきた感のあるキングカメハメハ。そのサンデーサイレンスがディープインパクトを経て、更に父系を広げているように、キングカメハメハもまた、ロードカナロアによって、父系を広げていくだけでなく、将来は「ロードカナロア系」が構築されているのかもしれない。