先週に引き続いて、「ユニオンオーナーズクラブ」の募集馬ツアーについて書く。
午後4時半までかかった募集馬展示会も終わり、ツアーに参加した会員のうち「日帰り組」は、そのままとんぼ返りで千歳空港へ舞い戻ったという。仕事などの都合がつかずに一日しか休めない人もたくさんいるようで、こうした強行日程もやむを得ないのだ。何やら、サッカーの「弾丸ツアー」を連想してしまう。
一方、日程に余裕のある会員は、その後、静内町内のウエリントンホテルでの「親睦会」へと移動することになった。不肖私も友人に誘われて、この親睦会に足を運んだ。
午後6時半。会場となったホテルの大ホールには、思い思いの服装に身を包んだ会員と、背広にネクタイ姿の募集馬提供牧場関係者ら総勢約200人ほどが集まり、なごやかな雰囲気の中で親睦会が始まった。
パーティーは立食だった。中央に料理が並び、バイキング形式でそれぞれが好きなものを好きなだけ皿に盛り付け、自分のいるテーブルまで戻って食べる。足腰が疲れたら、壁際に並んだ椅子に腰掛けて小休止である。
よく日本人は立食パーティーに慣れていないと言われる。テーブルには椅子がないので、たまたま偶然ついたテーブルを取り囲む面々は、必ずしもそこに居続けなければならない理由がないのだが、なぜか大半の人がそこを動かずにいる。「自分のポジションはここだ」と考えてしまうからなのだろう。グラス片手に、会場内を回遊しながら、いろいろな人と会話を楽しむという社交が苦手な国民なのかも知れない。私とて同様で、結局ずっと最後まで同じ場所でひたすら食べ続けることになってしまった。(田舎者丸出し!)
私のテーブルには、一人で参加したというN県の公務員Kさんや、某原子力発電所勤務のUさん夫妻などがいて、それぞれからユニオンクラブ歴や所有馬のこと、他に入っているクラブのことなど聞かされた。
Kさんは40代後半。大学生の息子が二人いて教育費に頭が痛い、と嘆いていた。しかし、それにしては、クラブで馬を持つほどだから余裕があるように思える。いったいどこから馬の経費が出て来るのですか?と訊ねると、酔った勢いからか「実はちょっと不動産収入がありまして・・・」と“告白”してくれた。そんなことだろうと思った。やはり副収入でもなければ、普通の勤労者で、大学生二人に仕送りする生活の中では、とても馬に振り向ける余裕はないはずだから。
そうこうしているうちに「ビンゴゲーム」が始まった。全員にカードが配布され、番号を読み上げられるのはどこにでもあるビンゴゲームだが、ここでは賞品が何と「募集馬用金券」だった。もちろん、これは会員のための親睦会であり、あくまで「気持ち良く募集馬にお金を出して頂く」ための余興なのである。
番号がどんどん進み、やがて「リーチ」のかかった人が前に集まり出した。しかし、見ていると、提供牧場関係者は皆無で、会員の姿ばかり。もっとも、考えてみると、例えば私が仮にビンゴ一等賞を当てても誰にも賞賛されないのと同じで、提供牧場の関係者が募集馬の金券を貰ったとしてもしょうがない。あくまで会員の人々を楽しませる余興なのだと判断し、早々に私もカードを「原発勤務ご夫妻」にプレゼントした。
ところで、会員の人から問われたことで返答に窮したのは「○○牧場の提供馬で、走るのはどっちだと思うか?」という質問。いくら知った牧場でも、ここでうかつなことは言えない。また「○○厩舎と××厩舎はどっちがいいか?」という質問も困った。まぁ、ご自身で判断されるのが一番ですね、とやんわりと逃げておいた。
閉会は午後8時半。おそらくはこの後、三々五々連れ立って静内の夜の町を飲み歩いた人も多かったはずだ。現在19あるクラブ法人にそれぞれ多数の会員が在籍し、自身の懐具合に応じた出資をしてささやかな馬主気分を味わっている。これもまた「日本の競馬」を支える大きな力となっているのかも知れない。