▲英ダービーを勝ったのはW.ビュイック騎手騎乗のマサー、前走の英2000ギニーでは3着だった (撮影:栗山求)
6月2日に行われた英ダービー。ディープインパクト産駒のサクソンウォリアーは4着に敗れたが、翌3日には同産駒のスタディオブマンが仏ダービーを優勝。日本に繋養されている種牡馬の子が欧州主要ダービーを初めて制するという歴史的快挙を果たした。
ディープインパクト産駒のヨーロッパでの活躍ぶりは、数値面で見ても驚異的だと言う。この先、ディープインパクト系がヨーロッパで発展するとなれば、日本の生産界では何が起こるのか。世界レベルの血統の動きと、日本の生産界が今やるべきことを、英ダービーの熱気を現地で体感してきた血統評論家・栗山求氏が言及する。
(文=栗山求)
敗れたサクソンウォリアー、母の距離適性が強く出ているのか
6月2日、イギリスのエプソム競馬場で行われた英ダービー(GI・芝12ハロン6ヤード)は、既報のとおりゴドルフィンのマサー(6番人気)が優勝。1番人気に推されたディープインパクト産駒サクソンウォリアーは4着に敗れた。
パドックで入れ込むそぶりが見られ、スタートで躓き、最後の直線で進路を締められるという不利があった。しかし、これらはありがちな敗因に過ぎず、やはり実力が足りなかったと見るべきだろう。
距離も敗因のひとつかもしれない。ディープインパクト産駒らしい伸びのある馬体はマイラーではなく中距離馬のそれで、エイダン・オブライエン調教師は昨シーズンから「中距離向き」と評価してきた。しかし、母メイビーはカルティエ賞最優秀2歳牝馬に選出された名牝ながら7ハロンを超える距離では一度も勝っていない。
サクソンウォリアーの英2000ギニーの勝ちっぷりの良さと今回の敗戦。これらを鑑みると、母の距離適性が強く出ている可能性は否定できない。次走、6月30日の愛ダービー(GI・芝12ハロン)は、地元に戻っての一戦で、英ダービーほどのスタミナは要求されないコース設定。サクソンウォリアーにも勝機はあるはずだ。仮に敗れるようなら、距離を短縮して10ハロン路線に転身するのではないか。
▲サクソンウォリアーの次走は6月30日の愛ダービーの予定 (撮影:栗山求)
翌3日、フランスからビッグニュースが飛び込んできた。シャンティイ競馬場で行われた仏ダービー(GI・芝2100m)を、ディープインパクト産駒スタディオブマンが見事勝ったのである。道中は中団で折り合い、最後の直線、密集した馬群の激しい追い比べから1/2馬身抜け出した。日本に繋養されている種牡馬の子が欧州主要ダービーを初めて勝った瞬間だった。