▲日本の騎手免許試験を受験することとなったモレイラ騎手 (2016年香港ヴァーズ優勝時、撮影:高橋正和)
香港から6月8日、大きなニュースが飛び込んで来た。「マジックマン」ジョアン・モレイラ騎手(34、ブラジル出身)が、秋に行われる中央の来年度騎手免許試験を受験するという。モレイラは2013-14シーズンにシンガポールから香港に拠点を移し、現在に至っているのだが、8日が締め切りだった18-19シーズンの免許更新を申請せず、現地メディアの取材に対して経緯を説明したのである。
モレイラは14年から中央で120戦38勝。勝率31.7%という驚異的な数字を残している。16年8月28日には、短期免許で騎乗した札幌で1日6勝の離れ業も演じた。昨年3月にはヴィブロスでドバイターフを勝ち、4月にはネオリアリズムで香港のクイーンエリザベスII世Cを優勝。日本馬とのコンビで海外GIを3勝と、短期免許で来日する常連組にあっても、ライアン・ムーア(34、英)と並ぶビッグネームだ。
日本に腰を据えるとなれば、騎手界へのインパクトは計り知れないほど大きいが、騎手免許試験という高い壁がある。今後の展開次第では、日本の騎手免許制度の在り方が問われる事態に発展しかねない。
退路を断っての挑戦
今回の経緯は、7日に配信された香港の有力紙、サウスチャイナ・モーニングポスト電子版の記事が詳しい。同紙によるとモレイラは「難しい決断だったし、香港での過去5シーズンについて、全ての関係者に感謝を表したいが、去る時が来た」と話したという。
香港の17-18シーズンが7月15日に終了した後は、日本で短期免許で騎乗する一方、JRAの騎手免許試験に全力で準備する意向を示した。JRAは13年から英語での受験を受け付けているが、ミルコ・デムーロが初回に不合格となった経緯がある。
モレイラも万一、失敗したとしても、「来年また受ける。19年は(母国の)ブラジルに帰って騎乗する」と述べた。これは何を意味するかと言えば、19年に日本で短期免許を申請する際に、「現所属国」が必要なため、いったんはブラジルの騎手として身分を確保するということである。
騎手はどこの国で騎乗する場合も、その前に属していた国の施行体か免許機関が、「無制裁証明書」を発給しないと、身動きが取れない。ただ、香港とブラジルの競馬を比較すれば、賞金水準や世界的な注目度は段違いで、その意味では退路を断った挑戦と言える。
広がっていた香港離脱説
モレイラは01年にブラジルで見習騎手としてデビュー。自国や南アフリカで活躍し、09年からはシンガポールに拠点を移した。同国では10-13年の4季に渡って最多勝を守り、12年には年間206勝の年間最多勝利を達成。
翌13年10月からは香港に移り、13-14シーズンは途中からの参戦だったため、97勝で2位にとどまったが、続く14-15シーズンからは3季連続で最多勝を達成。17年3月5日にあげた1日8勝は香港の1日最多勝だった。