これからは早期デビューが「王道ローテーション」に!?(村本浩平)
◆来年の「赤本」の取材時期も早めなければ、という気も…
競馬ユニット「ドリームカムカム」の相方である、辻三蔵さん(笑)も6月12日のコラムで書かれていたように、今年の2歳戦はノーザンファーム生産馬(含む育成馬)の活躍が目覚ましい。
どのぐらい活躍しているかについては、辻さんのコラムに目を通していただくことにして(笑)、ここからは少しだけ自慢をしていきたい。筆者は赤本の「オススメ10頭コーナー」で、「ノーザンファーム生産馬&育成馬に限定!」というルールで10頭のオススメ馬をチョイスしているのだが、その中からグランアレグリアとサートゥルナーリアがデビュー緒戦から圧巻の勝利。6月24日のメイクデビュー阪神にもアドマイヤジャスタが出走し、スタートのタイミングこそ合わなかったものの、直線で追い込んで2着に入着した。
今週もダノンチェイサーが30日のメイクデビュー中京でデビューを予定。取り上げた他の6頭も順調に来ており、年内には10頭全てが勝ち上がっているどころか、その中から重賞勝ち馬も出てくるのでは! という気すらしてくる。
今年の「オススメ10頭」を選ぶに当たっては、牧場スタッフの方の期待が感じられた馬だけでなく、「仕上がりが進んでいて、かつ、早い時期の入厩も望める」点も重要視した。その結果が6月終了時点における、取り上げた4頭のデビュー(予定)ともなっているのだが、数年前なら6月デビュー馬を指名することは、
「早熟かもしくは仕上がりが進んでいるものの、その後の成長力には欠ける」
という見られ方をしていたはずだ。
しかし、近年のクラシック戦線における活躍馬を見ると、6月デビューの馬は決して珍しくなくなっている。昨年も6月3日のメイクデビュー阪神を勝利したケイアイノーテックがNHKマイルCを優勝。ダービーを制したワグネリアンも7月のメイクデビュー中京を勝利するなど、2歳夏にデビューを果たした馬が、その後は余裕のあるローテーションを組まれながら、クラシックの出走権を掴む例も珍しく無くなってきた。
これまで「王道ローテーション」と言えば、10月の東京や京都でデビューする2歳馬のことを指していた。北海道の季候が良くなる春から秋にかけてみっちりと乗り込まれ、まさに心身共に成長した状態で厩舎へと移動。そこで環境に慣らされながら、時計を出していき、まさに狙ったレースを勝ち上がり、その後はクラシックへの階段を上っていく…という活躍馬は数多くいたはずだ。
しかしながら、近年のクラシック戦線における活躍馬を見ると、今後の「王道ローテーション」の概念は、「早期デビュー」ともなっていくのではという気もしている。
クラシックレースに欠かせない種牡馬となったディープインパクトだが、昨年は2歳戦だけで50頭の産駒が57勝をあげている。これはディープインパクトの2歳世代としては過去最高の数字なのだが、その中身を紐解くと10月と11月に新馬戦であげた勝利が圧倒的に多い。つまり、ディープインパクト産駒は、得意とする東京と京都でデビューさせるべきなのは間違い無く、その意味では「王道ローテーション=秋」の概念は残っていくはず。だが、その一方で同じレースに出走して勝ち上がれなかったディープインパクト産駒も数多くいるはずだ。
その意味でも仕上がりの進んでいる馬、もしくは、更なる上積みが見込めながらも、現時点での完成度でも他馬を凌駕できるような馬に関しては、ディープインパクト産駒だとしても、6月、あるいは7月にデビューをさせていくという方法論は正しいと言える。
これを可能としているのは、美浦や栗東のトレセンの近くにある「外厩」の存在であり、この時期の2歳戦に属した調整とノウハウを持ち合わせている、ノーザンファーム天栄、しがらきの育成馬の活躍が目立つのも納得がいくところである。
しかし、ノウハウを持ち合わせているからと行って、全てが上手く運ぶわけではない。騎乗育成に入る前段階であるイヤリングでの管理、当歳時の管理、もっと先まで見て行くと、母体の中での管理までの全てがトラブル無く、順調に運んでいるからこそ、早期デビューは成り立つからだ。また、デビュー後の管理もしっかりと行えることで、早期デビューの馬たちの大多数が、無事にクラシックに歩を進めていることも忘れてはいけないだろう。
と、ここまで書いていると、来年の「赤本」の取材時期も早めなければいけないのでは、という気がしてきた。こうなったら、1歳時からやんわりとでも取材を始めるべきなのでは? とも考えたのだが、さすがにそれは「取材的に早熟ですよ」と、牧場スタッフの皆さんからたしなめられてしまうのかもしれない(笑)。