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他馬が霞むほどの鮮烈すぎる日本レコード/プロキオンS・七夕賞

  • 2018年07月09日(月) 18時00分


◆伝説の波乱重賞がよみがえった七夕賞、3連単は250万越えに

 ダート1400mの「プロキオンS」の行われた中京のダートコースは、不良馬場の発表ながら水の浮くような水分過多の状態ではなく、午前中からきわめてタイムが速かった。

 伏兵評価の馬が勝った3歳未勝利戦でダート1400m1分23秒3が記録され、同じように伏兵の勝った古馬500万下の勝ち時計は1分22秒1だった。

 当然のように快時計の予測された古馬GIIIのこのレースを勝ったのは、外国産馬マテラスカイ(父スペイツタウン)。その勝ち時計は、なんと「1分20秒3」。芝1400mのJRAレコード1分19秒0と大差ない快時計であり、もちろんダート1400mの断然のJRAレコードである。

重賞レース回顧

圧巻のJRAレコードで今年4勝目を挙げ、この先が楽しみなマテラスカイ


 武豊騎手は高速コンディションのダートの場合、いつもよりピッチを上げて進むことが多いが、今回のペースは「33秒5→44秒7→56秒3→1分07秒5→」であり、途中の通過記録はレコードとしては残らないが、1000mのJRAレコードは「56秒9」であり、1200mのそれは「1分08秒7」だから、1000m通過のタイムも、スプリント戦で数多く組まれる1200mの通過タイムも、JRAレコードを大きく上回っている。

 4歳牡馬マテラスカイは、ここまでのダート1200mの自己最高タイムは1分10秒7。ダート1400mでは5戦し1分24秒0が最高タイムだったから、それぞれ一気に「3秒2」、「3秒7」も更新したことになる。(芝1400mの最高タイムは1分22秒7)。

 4歳の今年に入って、1000万下、1600万下を2勝して、ドバイのゴールデンシャヒーンを別にすると、オープンへの格上がり初戦でもあり、今年になって6戦4勝。たしかに特異な高速コンディションが味方したとはいえ、驚異のスピード強化である。

 NHKマイルCを2着し、今月のスパーキングレディーC(川崎)を快勝したリエノテソーロ、またクラスターCを制したドスライスなどを送る父スペイツタウン(その父ゴーンウエスト)は、2004年の米BCスプリントの勝ち馬であり、この年のチャンピオンスプリンター。ダート6Fを中心に【10-2-2-2】の成績を残している。スペイツタウンはセクレタリアトの「3×4」。

 母モスタケレー(その父ラーイ)のファミリーで日本に輸入された牝馬はもちろん存在する。たまたまごく近くには著名馬は見当たらないが、さかのぼると、このファミリーの代表馬は世界の名牝として輸入された57戦21勝のタイプキャスト(3200mの秋の天皇賞を逃げ切ったプリテイキャストの母)である。

 マテラスカイの驚くべき逃げ切りには、なんとなくイメージをダブらせたい一面があり、ダート1200mをグングン飛ばして1分07秒5で通過しているから、スプリンターズSに挑戦する手だってあるかもしれない。前述のように、芝では2歳時の京王杯2歳Sを1分22秒7(上がり34秒3)がある。

 あまりにマテラスカイ(5番人気)が強烈すぎて、地力で2着に押し上げた1番人気のインカンテーション(父シニスターミニスター)以下は影が薄くなってしまったが、「44秒9-36秒2」のバランスで1分21秒1の3着に粘ったウインムート(父ロージズインメイ)のスピード能力には光るものがあった。

 ドバイのゴールデンシャヒーンに挑戦した若い日本馬は、09年のバンブーエール、昨17年のディオスコリーダー、そしてマテラスカイ。のちに強くなる傾向がある。

 快時計のプロキオンSとは逆に、発表は良馬場に回復したものの雨の影響でタフな芝になっていた「七夕賞」は、久しぶりに2分00秒8だった(前5年は1分58秒台)。

 結果的に、完調にはもう一歩、あるいは本来の能力に陰り…の出走馬が多かったためだろう、8歳マイネルミラノ(父ステイゴールド)がちょっと強気に飛ばす形になると、レース全体は「58秒2-62秒6」=2分00秒8。上がり3ハロンは「12秒6-12秒9-13秒1」=38秒6に落ち込む決着だった。

 ブービー11番人気の7歳メドウラーク(父タニノギムレット)が勝ち、しんがり12番人気の6歳馬パワーポケット(父エンパイアメーカー)が3着。かつて1番人気馬が「26連敗」もした伝説の七夕賞がよみがえったかのようだった。

重賞レース回顧

ブービー人気のメドウラークが大金星、上位人気馬は奮わず…(撮影:下野雄規)


 2着マイネルサージュ(父ハービンジャー)の好走はこのあとのサマー2000シリーズに関係しそうだが、激走したメドウラーク、パワーポケットは馬場、流れに恵まれた印象があり、このあとのレースに直結するか難しい気もする。

 プラチナムバレット(父マンハッタンカフェ)の岩崎翼騎手の落馬は心配。病院に搬送されたあとの発表が遅れている。大きなケガではないことを祈りたい。いかに規則通りとはいえ、悲鳴のあがるようなこういう大きな落馬事故で、ケガの内容も判明しないうちに岩崎騎手に対する過怠金発表というのは、とてもわたしたちの知るJRAとは思えない。以前にもあったが、それは後でいいだろう。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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