▲林騎手のインタビュー最終回、テーマは「最後の騎乗を終えてからの日々」
障害通算2000回騎乗を区切りに引退した、林満明騎手のインタビューもいよいよ最終回。最後のテーマは、最後の騎乗を終えてからの日々。ガラッと生活が変わった林騎手、いま没頭していることがあるそうで…!? そして、とあるファンとの心温まる交流も明かしてくれました。文末にはプレゼントのお知らせもあります! (取材:東奈緒美)
いま、一生懸命就活してます(笑)
東 最後の騎乗を終えられて以降は、毎日どうされているんですか?
林 一生懸命、就活してます(笑)。今朝はたまたま乗る馬がいなかったんだけど、あちこちの厩舎で手伝いはしてきました。
東 しばらくはフリーの立場で助手さんのような仕事を?
林 そうやね。騎手免許を返してしまうとトレセンに残れないので、所属先が見つかるまでは免許もそのままで。
東 仕事以外で、何か新しく挑戦してみたいことなどありますか?
林 いや、とくに…(苦笑)。あ、でも今は家庭菜園を一生懸命やってるよ。プランターが中心ですけどね。
東 夏野菜が美味しい季節ですね! どんな野菜を作っているんですか?
林 カボチャ、冬瓜、ゴーヤ、里芋、きゅうり、インゲン…。
東 すごい! これからもっと規模を広げていくとか?
林 いやいや。あんまり大々的にやると大変だからね。
東 全部おひとりでやってらっしゃるんですか?
林 いや、嫁さんと一緒に。僕は野菜中心、嫁さんは花が中心なんだけどね。
東 ご夫婦で共通の趣味を楽しまれるなんて素敵ですねぇ。
林 まぁ暇だからね(笑)。
東 さて、今回ですね、この取材に合わせて林さんへのメッセージを募集したところ、ファンの方たちからこんなにたくさんのメッセージが届きました(メッセージをプリントアウトして林さんにお渡ししました)。
林 これ、もらって帰っていいの?
東 もちろんです! 特徴的なのは、長文のメッセージが多いこと。ファンのみなさんの熱い思いが綴られています。
▲「特徴的なのは長文のメッセージが多いこと、熱い思いが綴られています」
林 (メッセージに目を通しながら)終わってからではなく、もっと早くからこういう声が聞きたかったなぁ(笑)。
東 ファンからの応援は、やはり力になっていましたか?
林 そうやね。応援してもらえばもらうほど、頑張ろうっていう気持ちになれた。でも、(ファンが増えたのは)アップに乗るようになったここ数年ですよ。最後の騎乗のときもそうだったけど、「今日はやけに人が多いなぁ」みたいに感じるようになって(笑)。
東 みんな林さんのファンですから(笑)。そういえば、最後の騎乗あと、上から下まで全部スタンドのファンにプレゼントされたとか。
林 あ、長靴(ちょうか)と調教ズボンね。ムチだけはね、騎手になりたいっていうファンの子がいて、その子に宅急便で送りました。
東 それはサプライズで?
林 うん。たまにファンレターをくれる男の子でね。騎手を目指しているということは、中学生くらいかな。
東 手紙のやり取りなど、ファンとの直接的な交流はけっこうあったんですか?
林 いや、返事を書いたのはその子だけ。「林騎手を目指している」なんて言われたら、やっぱりうれしいからねぇ。まぁ、「俺でいいのか?」とも思うけど(笑)。
東 その男の子、憧れの林さんからサプライズでムチが届いてめちゃくちゃうれしかったでしょうね。ジョッキーになりたいという気持ちがさらに強くなったでしょうし、応援したくなりますね。
林 もちろんです。
東 その子はムチを通して林さんの思いを受け取り、林さんはそのムチに夢を託した。本当に素敵なお話ですね。「やり切った」という言葉とともに、改めてカッコイイ終わられ方だなって。
林 いやいや、カッコ悪いよ。「怖くなったから(馬を)下ります」なんてさ(苦笑)。ただ、(今年の)障害リーディングトップのまま辞められたっていうのはなんだかカッコイイよね(笑)。
東 そうですね(笑)。それ以前に、いろいろな葛藤を抱えながらも、ジョッキーとして30年以上馬に乗り続けてきたというのは本当にすごいこと。カッコいいです。
林 馬に乗ること以外、何もできないからね。あとは、やっぱり人に恵まれたことが大きい。乗せてくれる人がいなかったら成り立たない仕事だから。どんなに巧くても乗せてもらえなければどうしようもないし、僕みたいに下手でも乗せてもらえたから続けてくることができた。
東 長きにわたり、支えてくださる方がいたというのも林さんの功績だと思います。
林 ずっと乗せ続けてくれた調教師が何人もいたけど、みんな定年を迎えて現役を退いてしまったからね。最後はもう中竹さんしかいなかったから。
東 たくさんいらっしゃる調教師さんのなかでも、やはり林さんにとって中竹先生は特別な存在ですか?
林 特別だよね。兄弟子やし、いろいろ言っても最後は全部任せてくれたし。
東 馬を信じて、調教師を信じて。そこには揺るぎない信頼関係が築かれていたんですね。
林 少なくとも僕はね。中竹さんが僕を信じてくれていたのかどうかはわからんけど(苦笑)。
東 今、一番思い出される中竹先生とのエピソードというと?
林 それはやっぱり、タマモグレアーでのハナ差2着(2010年中山大障害・1着バシケーン)でしょう。あれは本当にショックやったな…。でも、とりあえず(中竹厩舎の馬で)GIIを2つ勝てたからよしとするか。なんかそういうのも僕らしいでしょ(笑)。
東 ご自分でそう言ってしまう林さんが素敵です(笑)。いろいろお話を伺って、林さんがファンから愛された理由が本当によくわかりました。最後に、応援し続けてくれたファンのみなさんにメッセージをお願いします。
林 はい。これからも障害レース、障害ジョッキーを応援してください。あとは、今後助手になれたら、パドックで馬を引っ張ったり、騎手さんの足を上げたりできればいいなぁと思っているので、競馬場で僕を見かけた際には声を掛けてください。
▲「これからも障害レース、障害ジョッキーを応援してください」と林騎手
東 調教助手として頑張ってらっしゃる林さんの姿を見られる日も近そうですね。
林 だといいんだけどね。みんな僕のこと気付いてくれるかなぁ。それがちょっと不安です(苦笑)。
(文中敬称略、了)
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