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種牡馬の産駒価格と獲得賞金を振り返る(須田鷹雄)

  • 2018年07月31日(火) 18時00分


◆ディープインパクトは割高?コストパフォーマンスが良いのは…

 セレクトセールでのディープインパクト産駒の価格を見ていて、やはりダービーなど頂点中の頂点に手が届く可能性のある種牡馬はプレミアムが付きやすいということを再認識した。ハーツクライも同様の存在になりつつあり、それに比べるとダイワメジャーなど距離のもたないタイプはそこまで価格がハネないように思う。

 そもそも、種牡馬ごとのセール価格と実際の成績(賞金のバランス)はどんなものなのか、セレクションセールも終わったこのタイミングで一回整理してみようと思う。

 集計方法は以下の通り。
1.現3歳以上の全産駒が対象
2.中央競馬平地での賞金+付加賞金のみが対象

 この集計方法に問題があることは分かっている。若い現役馬がこれから稼ぐ賞金が無視されているし、6着以下の奨励金がノーカウント。地方側のダートグレードで稼いだ賞金が無視されるのでダート種牡馬には不利。種牡馬になった場合の価値もカウントされない。さらに、産駒の頭数が少ないと、1頭の大活躍馬の影響で賞金の指標が大きく上ブレしてしまう。主取馬の存在が無視されるという問題もある。

 作業を簡略化するためこれらを無視したうえで、最後の問題だけは、平均値でなく中間値も算出することで、ある程度の解決をはかってみようかと思う。

 ディープインパクト産駒は239頭が総額186億4389万円で取引され、賞金総額は105億932万円。平均は7800万円と4397万円。中間値は5616万円と1180万円。

 賞金が進上金を引いて80%になることを考えると、ここに「若い馬の賞金上積みぶん」を50億くらい見て、かつ後継種牡馬のシンジケート代金や牝馬の繁殖価値を考慮してもちょっと追いつかない。しかもこれはディープ牡馬が4000〜5000万円で買えた時代を込みにしての話なので、「いまから買うディープインパクト産駒」はさらに厳しいことになる。

 比較対象として何頭か見てみよう。ハーツクライは244頭が60億4123万円で取引され、賞金合計58億6333万円。平均が2475万円と2403万円。中間値1836万円と362万円。ディープインパクトと比べると回収できている。今後は馬代金側の高騰がどう影響してくるかだ。

 キングカメハメハは313頭が100億9532万円で取引され、賞金は82億7375万円。平均は3225万円と2643万円。中間値2362万円と500万円。回収の度合いはハーツクライほどではないが、それなりに回収している。

 ダイワメジャーは228頭が53億6290万円で取引され、賞金は44億6149万円。平均は2352万円と1956万円。中間値1890万円と612万円。賞金の中間値が高いので、大すべりのリスクが少ないというか、少数の大当たりが賞金を支えている度合いの低い種牡馬と言える。

 さらに日高生産馬の比率が高いところでクロフネ。380頭が77億8611万円で取引され、賞金は57億7965万円。平均は2048万円と1520万円。中間値1517万円と310万円。

 地方ノーカウントルールが不利なことを承知でゴールドアリュール。255頭が31億6143万円で取引され、賞金はなんと37億6871万円。平均は1239万円と1477万円。中間値945万円と280万円。ここで挙げた中では唯一賞金が取引代金を上回った。

 つまりここまでは「ハーツクライとゴールドアリュールが良かった」ということになるが、前者は高騰を始めており、後者は現1歳世代が事実上の最終世代。気付いたときにはなんとやらだが、この手の状況に早めに気付いている人が本物の馬主として上手く立ち回れるのだろう。

 POGは馬代金が反映されないのでどうしてもディープインパクトでゴリ押しのようなことになってしまうが、ゲーム性というのはあったほうが面白い。せめて穴馬を選ぶ場合などだけでも、今回のような視点を盛り込んでみてはどうかと思う。

須田鷹雄+取材班が赤本紹介馬の近況や有力馬の最新情報、取材こぼれ話などを披露します!

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