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米G1を4勝した名牝から誕生したダノンラスター

  • 2018年09月19日(水) 12時00分
●エイシンポジション(牝 栗東・野中賢二 父オルフェーヴル、母エイシンパンサー)
 母エイシンパンサーは2歳6月の新馬戦(芝1200m)で鮮やかな差し切り勝ちを決めたあと、新潟2歳S(GIII)4着、ファンタジーS(GIII)3着。フォーティナイナー系の仕上がりの早さとスピードを表現した馬だった。父オルフェーヴルは初年度産駒からエポカドーロ(18年皐月賞-GI)とラッキーライラック(17年阪神JF-GI)を出し、この2頭はいずれも母方にフォーティナイナーを持っているので、本馬と配合構成が似ている。本馬はそれ以外に名牝シェリル5×5というクロスを持っている。オルフェーヴル産駒でこのクロスを持つ馬は過去2頭おり、そのうちの1頭クリノクーニングは新馬戦を勝ったあと札幌2歳S(GIII)で6着だったので悪くない。芝向きのマイラー。

●クインオブザシーズ(牝 栗東・中竹和也 父ノヴェリスト、母レジネッタ)
 桜花賞馬レジネッタを母に持つ良血馬。母の「フレンチデピュティ×サンデーサイレンス」は、コンスタントに走るものの大物は出ない組み合わせだったが、レジネッタが例外的にGIを勝ったのは、残り4分の1の部分(つまり2代母のマクダヴィア)にHyperionとSon-in-Lawの組み合わせから成る血を5本持つ(Tudor Minstrel、Flower Bowl、Abernant、Imitation、Swaps)という底力の塊のような配合構成だったことが大きい。レジネッタは母としてまだこれといった大物を出していないが、これまでJRAでデビューした4頭中3頭が勝ち上がっているので悪くない。本馬の父はノヴェリスト。いまのところ1勝を挙げたあと足踏みする子が目につくが、母は桜花賞(GI)を勝った大物なので期待したい。芝向きの中距離タイプ。

●クルージーン(牡 栗東・藤岡健一 父ロードカナロア、母エリンコート)
 母エリンコートは11年のオークス(GI)を7番人気(単勝37.2倍)の伏兵ながら鮮やかに差し切って優勝した。オークスのあと9戦して一度も掲示板に載れなかったので一世一代の大駆けだった。2代母エリンバードは伊1000ギニー(G2)の勝ち馬で、ブリーダーズCディスタフ(米G1)では4着と健闘している。エリンコートの子は、2頭が競走年齢に達し、いずれも勝ち上がっておりまずまずの成績。父がロードカナロアに替わった本馬は上2頭よりも大きな期待を掛けられる。芝向きのマイラーだろう。

●サトノダイナスティ(牡 美浦・萩原清 父ルーラーシップ、母ベストクルーズ)
 母ベストクルーズは現役時代、阪神ジュベナイルフィリーズ(GI)3着、ファンタジーS(GIII)2着、フラワーC(GIII)4着などの成績を残した。2代母マサコチャンはニッポーテイオー(87年天皇賞・秋-GI、87年マイルCS-GIなど重賞7勝)、タレンティドガール(87年エリザベス女王杯-GI)の半妹にあたる。

 5代母ワールドハヤブサ(1967年生)以来、千代田牧場に根付いている名門牝系で、ここ最近もヴィクトリアマイル(GI)を勝ったホエールキャプチャをはじめ、エーシンホワイティ(10年ファルコンS-GIII)、ルルパンブルー(07年フェアリーS-GIII)、パクスアメリカーナ(18年アーリントンC-GIII・2着)、シゲルスダチ(12年北九州記念-GIII・2着)、レジーナフォルテ(17年アイビスサマーダッシュ-GIII・3着)、ダンツキャンサー(16年クイーンS-GIII・3着)、ウインフェニックス(14年ラジオNIKKEI賞-GIII・3着)など多くの活躍馬が出ている。

 本馬の4分の3兄レジェンドソウル(父ロードカナロア)は現1勝馬。本馬と同じ「ルーラーシップ×クロフネ×サンデーサイレンス」の組み合わせは、競馬場で走ったわずか13頭からリリーノーブル(18年オークス-GI・2着、17年阪神JF-GI・2着)、ダノンディスタンス(17年京都新聞杯-GII・3着)、ロサグラウカ(18年水仙賞-3歳500万下)が出ており成功している。芝向きのマイラー。

●ダノンラスター(牡 美浦・堀宣行 父ディープインパクト、母プリンセスオブシルマー)
 母プリンセスオブシルマーはアメリカで走り、ケンタッキーオークス(米G1)、CCAオークス(G1)など4つのG1を勝つなど通算15戦9勝。14年に米ケンタッキー州キーンランドで行われたファシグティプトンノベンバーセールに出場し、社台ファームに310万ドルで落札された。母の父マジェスティックウォリアーはA.P.Indy系で、本馬の他にベストウォーリア(14、15年マイルCS南部杯-Jpn1)を出している。現在は日本に輸入され、浦河のイーストスタッドに繋養されている。

 わが国に入った海外の繁殖牝馬のなかでも指折りの高額馬となる母プリンセスオブシルマーは、初年度にディープインパクトを交配された。大きな期待の表れだろう。そして誕生したのが本馬。「A.P.Indy系×Storm Cat系」の繁殖牝馬にディープインパクトなのでハートレー(15年ホープフルS-GII)、ミディオーサ(現2戦1勝)などとアウトラインが似ている。母はDixieland Band 4×3があるので底力十分。なおかつ、本馬はHalo≒Sir Ivor≒Drone 3・5×5なのでおもしろい。芝中距離で大仕事をしても不思議はない。

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68年生まれ。血統専門誌『週刊競馬通信』の編集長を務めたあと97年からフリー。現在は血統関係を中心に雑誌・ネットで執筆活動を展開中。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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