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週刊サラブレッド・レーシング・ポスト

  • 2005年07月19日(火) 12時58分
 アメリカやヨーロッパでは日本よりひと足早く2歳戦がスタート。北米では、東海岸、中部地区、西海岸でそれぞれ1レースずつの合計3レース、欧州では各国合わせて既に10レース以上の、2歳重賞を消化している。

 当然のように、現時点で2歳戦線のトップを走り、この世代のスター候補と目される馬たちが、欧米両大陸で既に出現している。

 ヨーロッパにおける最大の注目馬は、6月15日にロイヤルアスコットatヨークのG2クイーンメアリーSを制した牝馬フラッシーウィングスだろう。4月13日にニューマーケットのメイドンでデビュー勝ち。続いて5月13日にニューバリーで行われた一般戦も7馬身差で圧勝。そしてG2クイーンメアリーSで重賞初制覇と、いずれも5F戦ながら危なげのないレース振りで、デビューから3連勝でここまで来ている。

 父は92年の欧州2歳王者で、97年の欧州2歳王者ザールらを輩出して種牡馬としても成功しているザフォニック。母はG2ファルマスS・2着、G2リディアテシオ賞3着などの成績を残しているラヴアロックと、まずまずの血統なのだが、馬体に問題でもあったのか、昨年秋のイヤリングセールでは「その他大勢組」のオクトーバー・パート2に廻され、なおかつ32,000ギニー(約690万円)という廉価で購入されている。

 つまりは、下層階級からのし上がってきた健気な少女としてのキャラクターを持ち合わせた馬で、ファンの人気も高まっている。更に大手ブックメーカーも、来季の1000ギニーに向けたアンティポスト(前売り)で、彼女を16倍前後の1番人気に支持している。

 一方、アメリカでスター街道を駆け上がっているのが、7月16日にハリウッドパークで行われた、西海岸における初の2歳重賞、G3ハリウッド・ジュヴェナイルCSを勝ったホアットアソングだ。

 父がこの世代が初年度産駒となる新種牡馬ソングアンドアプレイヤー(その父アンブライドルズソング)で、母がホアットアナイトと聞けば、それだけでピンと来る読者もおられるかもしれない。今年3月のバレッツ・マーチセールで、190万ドルという最高価格で購買された、あの馬なのである。

 馬体が良い上に公開調教でも抜群の動きを披露する馬が多く、どこの2歳セールでも評判の高かったソングアンドアプレイヤーの初年度産駒。中でも特に関係者の垂涎の的となったのが、バレッツにおける1回目の公開調教で2F=20.6秒という一番時計を叩き出した、上場番号143番の牡馬だった。セールでは北米の主立つ馬主が多数参加して激しい争奪戦となり、最後はルイス夫妻とクレイグ夫妻という、アメリカ競馬界を代表するおしどり夫婦同士の戦いとなり、結局はルイス夫妻が競り勝ってボブ・バファート調教師の管理下へ。6月18日にハリウッドパークのメイドンを馬なりで楽勝してデビュー勝ち。更にいきなりの重賞挑戦となったハリウッド・ジュヴェナイルCSも制して、2連勝を飾った。

 現時点では自身の価格の20分の1も稼いでいないホアットアソングだが、「なぜあんな価格になったのか、皆さん、おわかりになったでしょう!?それだけの価値がある馬なのです」と、管理するバファート師もこの馬の更なる出世に自信を見せている。

 フラッシーウィングスとホアットアソング。上昇気流に乗った若駒2騎がどこまで登りつめるか、今後に注目したい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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