スマートフォン版へ

病気と戦いながら、騎手を引退しても馬と携わる仕事に…大下智助手の「執念」に迫る!

  • 2018年10月02日(火) 18時00分
職人

病気と戦いながら馬に携わる仕事を続ける、大下智調教助手



病気をしたからこそいい出会いができ、新しい自分を作っていける


 次々、襲ってくる台風と地震に日本列島が揺れに揺れる中ですが、競馬界では大きな記録が生まれました。

 前代未聞4000勝達成の武豊騎手。1日で3勝してこの大記録を達成するのも豊騎手の強運でしょうね。僕の手元に、2003年にウインプログレス号で年間200勝を達成した時のテレホンカードがあります。すごい!としか言葉が出ませんね。おめでとうございます!

職人

年間200勝達成時の、武豊騎手のテレホンカード


「5000勝を目指すためにまだまだ健康に気をつけ頑張ります。応援してくださるみなさんのおかげです」という感謝の気持ちも表しながら「早く4001勝したい」とも話す豊騎手に尊敬の念を抱きます。

職人

JRA通算4000勝を達成した武豊騎手 (C)netkeiba.com


 そして1週前に和田騎手が1200勝。藤岡康太騎手がワグネリアン号で神戸新聞杯を勝利し500勝を達成したのも凄いですね。競馬は揺るぎなく、前に前に前進です。

職人

JRA通算1200勝を達成した和田竜二騎手に、“ミサイルマン”武将様と一緒に取材中


職人

神戸新聞杯のワグネリアンで、JRA通算500勝を達成した藤岡康太騎手


 皆さんおめでとうございます。秋競馬は馬肥ゆる、ファンも肥ゆるレースを期待しています。

***

 今回は、騎手という仕事に誇りと執念を持ち続け、きっちり締めくくったうえで引退。そして騎手から調教助手へ転向した、大下助手に迫りました。

常石 大下助手、今日はよろしくお願いします。

大下 こちらこそよろしくお願いします。

常石 全く知らなかったんだけど大変だったんですね。

大下 その時はびっくりしたけど今思えばこうして馬にも乗れるようになったので、そう大したことではないのかもね。

職人

「その時はびっくりしたけど、今思えば馬にも乗れるようになったので…」


常石 怪我した時の健康診断で分かったんですか?怪我の功名と言うけど良かったのかもね。早く発見できて。

大下 「親呼んで」と言われた時は、さすがに驚いたけどね。

常石 俺なんか何が起こってるのか全く分からんかったけどね。今もあんまり分かってないようだけど(爆笑)。

大下 いやー、あんな状態からこうして取材していただけるようになったんだから凄いと思います。

常石 何とか。大下君の「もう1度騎手として馬と走りたい!」という思いは素晴らしいと思った。けじめをつけることって次へ進むにはとっても大事なことなんだなーと改めて思いました。

大下 もう1度騎手に戻りたい!とマジで思いました。いろんなところへお願いに行き、乗馬倶楽部でも仕事を手伝わせていただきながら馬探しをしました。池添学調教師の好意とメイショウの松本オーナーのおかげで騎手として最終レースに臨むことができました。凄い思いで実現しました。

 この時、幸先輩と同じオーナーの馬で幸先輩が勝ったので、口撮り写真の時、一緒に入れていただきました。幸騎手の絶妙な配慮に感謝です。いつも応援してくれてうれしいです。

常石 幸先輩は優しくて熱い方なんです。僕の時もずっと病院に来てくれて、面倒を見ていただき、元気をもらいました。何気ない行動がかっこいいですよね。先輩もだけど、同期もありがたい存在ですよね。ところでその「騎手に戻りたい!」というこだわりはどこから生まれたんでしょうか?

大下 どうして?何故?とよく聞かれますが、僕自身の生きる原点です。騎手になるために必死でやってきたことにキチンとけじめをつけ、改めて乗り役から馬を作る仕事に執着していきたいと思います。同期もいつも一緒ですね。みんな活躍して忙しいのによく集まってくれます。

職人

「改めて乗り役から馬を作る仕事に執着していきたいと思います」


常石 強い精神力、刺激を受けますね。

大下 常さんこそ凄い執念でしょう。パラリンピック頑張ってくださいよ!応援していますし、楽しみにしています。

常石 ありがとう!頑張るわ。乗馬は難しいね。大下君は乗馬してたんでしょう?

大下 小学生からやっていましたが、馬は可能性の多い動物なので知れば知るほど難しいですよね。

常石 そうなんですよ。毎日悪戦苦闘しています。ところで、デビューはどこの厩舎でしたか?

大下 梅内厩舎です。

常石 じゃあ植野先輩がいた厩舎ですね。先輩は元気いっぱいで楽しいし、熱心でしょう。

大下 はい。今でも競馬だけではなく食事にもよく連れて行っていただきます。

常石 いいなー。そんな時は俺も誘ってください(苦笑)。

大下 そうですね。にぎやかになる(笑)。笑いの中にちょこちょこっとアドバイスが入るのがいいスパイスになります。

常石 食事会や飲み会でもやっぱり馬の話になってしまうよね。またそれが面白い。現在の池添学厩舎へ入ったきっかけは何ですか?

大下 騎手として修行中、同じ競馬学校生だったから仲が良かったんです。乗馬の腕は抜群でしたね。いろいろアドバイスもいただきましたし、その頃からしっかり馬にもこだわっていましたね。ためになることをいっぱい教えていただきました。助手として働くならこの厩舎と思い、お願いしました。

 病気の後でリハビリしながら騎手として最後に乗りたいとお願いした時も、僕のためにいろいろ力を尽くしていただき、感謝しかないです。だからこの厩舎でいい馬作りを勉強したいと思います。

職人

調教後にしっかり馬体チェックをするのが池添学厩舎のモットー


常石 いい出会いができましたね。また馬に乗れるなんて羨ましいです

大下 常さんも馬に乗れてるでしょう。頑張ってください。

常石 違う形だけど馬に乗れる。だから乗りたいと思いましたね。馬に乗ってるとパワーが湧いてくるんですよね。それだけ魅力があるんです。

大下 僕もそうですね。だから、病気をしたことは最悪だったかもしれないけど、病気をしたからこそいい出会いができ、新しい自分を作っていけると思います。お互い頑張りましょう。

常石 大下君に会えてパワーもらったわ!ありがとう。

大下 僕の方こそ原動力になります。

常石 またよろしくお願いします。期待馬サラキアや、2歳馬セプタリアンもいい勝ち方だったので、楽しみですね。

大下 はい、秋に向けて楽しみがいっぱいです。

常石 今日はありがとうございました。

職人

大下助手、ありがとうございました!


 とっても明るくさわやかで馬に競馬に情熱を持っている。それでいておもしろい大下助手。同期や先輩ともうまく付き合って、いい馬を作ってくれそうですね。

***

 週末また台風接近とか?皆さん十分気をつけてください。競馬予想と台風予想は早め早めに対策を!!

つねかつこと常石勝義でした。

常石勝義
1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング