▲佑介騎手からセカンドキャリアについて提案! 岩田騎手の反応は…!?
岩田康誠騎手の騎乗論から勝負師としての心理まで、幅広く語り合ってきた対談も今回が最終回。「テッペン獲ったる!」という思いでJRAに移籍してきたという岩田騎手。そこから多くの実績を積み上げてきたいま、気になるのが岩田騎手のセカンドキャリア。佑介騎手からの提案に岩田騎手の反応は…!? (構成:不破由妃子)
外国人騎手の活躍をどう受け止めているのか
──現在、全国リーディングでは、クリストフとミルコが3位以下を大きく引き離しています。さらに、短期免許で騎乗中のモレイラも大活躍。正直、岩田さんはこういった現状をどう受け止めていらっしゃいますか?
岩田 俺だけではなく、みんな悔しい思いをしていると思う。でも、やっぱり数字に出てしまっているからね。そこは冷静に受け止めなアカンと思ってる。実際、彼らはミスも少ないし、確実に勝たせてくるってのもあるし。強い馬に巧いジョッキーが乗ることも、結果的に彼らが選びたい放題になることも、勝負の世界やから当然といえば当然。ただ、それを「仕方がない」と言ってしまったらそこで終わってしまうからね。
佑介 そうですよね。
岩田 結局、俺たちひとりひとりがもっと技術を上げて、彼らの勝ち星を奪い取るしかないねんな。将雅がイギリスに行ったのも、佑介がフランスに行ったのも、結局はそこにつながるわけやろ? 何かが足りないと思ったからこそチャレンジしたんやろうし、その答えは帰ってきてから見つけていけばいいわけやし。みんな本当に頑張ってるよね。俺は陰ながらみんなを応援しているよ。
佑介 ちょっと、ちょっと(笑)。なんで岩田さんが応援する側に回ってるんですか。
▲佑介「なんで岩田さんが応援する側に回ってるんですか」
──まるで保護者のような発言ですね(笑)。
岩田 この年になると、保護者みたいになるねんて(笑)。もちろんね、俺も頑張るけどさ。佑介くらいの年だったらもっとギラギラしていると思うし、実際そうだったからね、昔は。「絶対に誰にも負けへん!」と思っていたし、中央に移籍してきた頃は「テッペン獲ったる!」なんて威勢のいいことを言ってたけどさ。それができなかったっていう現実があるわけで。
──まだまだこれからテッペン狙ってくださいよ。それにしても、岩田さんがJRAに与えた影響は大きいと思いますよ。
岩田 ホント? もっとJRAの偉い人に言ってよ(笑)。俺のこの先の人生、保障してくれるかもしれないやん。
佑介 ないない(笑)。
岩田 うん、ないな(笑)。
佑介 岩田さんは大丈夫です。きっとどこででも生きていけますから(笑)。ちなみに、セカンドキャリアを考えることってありますか?
岩田 セカンドキャリアか……何すんのよ(笑)。もちろん考えたことはあるよ。でも、自分でも何すんのかなと思ってさ。
佑介 そうだなぁ、岩田さんは…庭師とか釣り小屋の店主とか(笑)。
岩田 それ、完全にイメージで言うてるやん!
佑介 そういえば、料理は嫌いじゃないって言ってませんでしたっけ?
岩田 うん、嫌いじゃないけど…。
佑介 じゃあ、たこ焼き屋とか、粉もん屋(笑)。なんか年を取った岩田さんをイメージすると、接客しているイメージしか湧いてこないんですよね。もうすべてを受け入れた感じで。
岩田 でも、儲けられるかどうか…。
佑介 儲けって、もうお金はいらないでしょ(笑)。
岩田 いるよ!
▲佑介「儲けって、もうお金はいらないでしょ(笑)」岩田「いるよ!」
「佑介が勝った函館記念のようなレースをしたい」
──そういえば以前、「俺は中央の的場文男になる!」っておっしゃってませんでしたっけ?
岩田 言うてたけど…、とてもじゃないけどなれへんよ。あの人、やっぱりすごいわ。
佑介 ホントですよね。ただ続けるだけだったらできるかもしれないけど、的場さんの場合、今でも年間130勝くらいして現役バリバリですからね。返し馬も誰よりも長くしてるし。
岩田 そうそう。誰よりも長く馬場を回ってるもんな。あんなふうには俺はなれへん。60歳まで乗るなんて無理やわ。もう誰も抜けへんよ。
佑介 抜こうと思うことすらないですよね。
──最後にですね、数字でもレースでもいいので、今現在、岩田さんが目指しているテーマを教えてください。
岩田 せやなぁ、なんやろ…。そうだ、佑介がエアアンセムで勝った今年の函館記念のようなレースをして勝ちたい。自信を持って乗ってたよな?
佑介 はい。
岩田 まぁ自信を持って乗るのはみんなそうだと思うけど、それ以上にあのときの佑介はレースを作ってた。そんなふうに、より内容にこだわって乗っていきたいっていうのはあるかな。
▲今年の函館記念をエアアンセムで勝利 岩田「佑介はレースを作ってた」 (撮影:武田明彦)
佑介 岩田さんはもともと、リズムなども含めて日本のジョッキーのなかでは独特じゃないですか。だから、外国人ジョッキーが乗りにきたときに、「日本にはこういうジョッキーがいる」ということをアピールし続けてほしい。彼らに“岩田康誠”という存在を意識させてほしいなと思います。
岩田 すでにめっちゃ意識されてるよ。「なんだアイツ!? おかしい乗り方をしているヤツがいるぞ」って(笑)。みんな「彼はああいうスタイルなんです」って言うてくれてるみたいやけど。
佑介 そうなんですね。たしかに岩田さんの騎乗スタイルは気になるでしょうね。「なんか思ってたのと違うヤツがいる!」みたいな(笑)。
岩田 そんな感じや(笑)。佑介はこの先、もっともっと大きくなるんやろうなぁ。うん、絶対になると思うわ。だって、明らかに変わってるもん。騎乗スタイル自体も変わっているし、何よりレース内容が前とは全然違う。次のGIも近づいてるんちゃうかな。
佑介 いつも言うんですけど、僕の次の目標は、ずっとコンビを組んできた馬とGIを勝つことです。
岩田 そりゃそうだよな。それは大事なテーマやわ。俺もそういう経験は少ないけど、やっぱり全然違うと思うから。でも、今はそういう馬にめぐり合うこと自体がなかなかね。
佑介 難しいですよね。でも、どんなにいい馬が集まっているジョッキーでも、最終的に乗れるのは1頭。選ばれなかった馬たちは、必ず誰かに回ってくるわけじゃないですか。そこで声が掛かる位置にいることが大事だと思うし、そういうところでチャンスを活かしていきたいなと思いますね。
岩田 うん、そうだね。どういうタイミングであっても、ひとつひとつの出会いを大切にしながら、楽しみを持って乗っていきたい。来年には(息子の)望来もデビューすることやし、俺ももっと頑張らんと!
(文中敬称略、了)