▲第4弾は笹川翼騎手と木之前葵騎手(名古屋)の“同期対談”をお届け!
TCK騎手によるリレー連載・第4弾は特別編! 名古屋所属の木之前葵騎手をゲストにお招きして、笹川翼騎手との同期対談をお届けします。同時期にジョッキーを志し、JRAでいう競馬学校にあたる『地方競馬教養センター』の91期生として入学したふたり。現在の活躍ぶりからは想像できない木之前騎手の“劣等生エピソード”が明らかに! 対する笹川騎手は、センター生時代から冷静沈着で…?(構成:赤見千尋)
大化けした木之前騎手「ここまで活躍するなんて!」
――おふたりは91期騎手候補生として地方競馬教養センターで2年間一緒に過ごしたわけですが、センター時代から91期はレベルが高いと評判でした。ご自身でそういう自覚はありましたか?
笹川 いや、自分たちでは思っていなかったです。他の期と比較がわからないですし、上の先輩はやっぱり上手でしたから。ただ、みんな一生懸命頑張ってましたね。訓練とかはけっこうめちゃくちゃだったけど。
木之前 わたしがいつも暴走してた(笑)。
笹川 訓練で毎日無理難題を言われて、鍛えられたなっていうのはあります。全然折り合いついてない状態で併せ馬しろとかね。1頭でも掛かっているのに、2頭並んだら余計掛かるじゃないですか。
木之前 あと集団で走って順番を入れ替えたりしてたよね。
笹川 そうそう、集団で走ってて、一番後ろの人が前に行って、また次の人がっていうのを繰り返すんですけど、だんだんだんだん速くなって競馬みたいになっちゃって。
木之前 わたしが一番最初に暴走して、突っ込んでいったりしてました(笑)。
▲センター生時代の笹川騎手と木之前騎手(撮影:赤見千尋)
――担当教官の方も、かなりレベルの高い訓練をしていたと言ってました。おふたりはそれぞれの第一印象を覚えてますか?
笹川 え〜と…、覚えてないですね。自分のことに必死だったので。
木之前 翼っちは目の前に座ってた。
笹川 食堂の時?
木之前 そうそう。番号順で、たまたま目の前にいて。わたし、最初の頃はなかなか同期と馴染めなくって…、なんかそういうの、実は苦手なんですよね。
笹川 そうなの?
木之前 女子一人で部屋も違ったし、自由時間は皆と違う空間にいるので。今までと違って厳しい生活で、みんなイライラしていたし、ちょっと怖いなと感じることもあって。
笹川 木之前はめっちゃ泣いているイメージはある(笑)。
木之前 よくあんなに泣けるよね(笑)。
笹川 人って強くなるんですね(笑)。
▲木之前騎手のセンター生時代を振り返り「人って強くなるんですね(笑)」
木之前 翼っちは最初から馬乗りが上手だったし、技能審査とかも常に上位争いしてたイメージ。
笹川 乗馬やってたからね。
木之前 いや、わたしもやってたし!
――おふたりともデビュー直後から活躍されていますが、センター当時、お互いがこんなに活躍すると思いました?
笹川 いや、思わないです(笑)。
木之前 あははは(笑)。
笹川 だって最初は本当にやばかったから。簡単には辞めないだろうなとは思ったけど、ここまで活躍するなんてすごいよね。もうすぐ300勝?!
木之前 あと4勝(※取材日時点)。いい馬乗せてもらっているのに、取りこぼしも多いんだよね。
▲10月10日名古屋第6Rで通算300勝を達成!(撮影:大恵陽子)
笹川 すごいよね、女性騎手だと歴代2位くらい?
木之前 いや、全然! (宮下)瞳さん、(別府)真衣さん、岩永(千明)さんの次だから4番目かな。
笹川 でもかなり早いペースなんじゃないの?
木之前 ありがたいことに、重賞も5つ勝たせてもらってて。いい馬ばっかり乗せてもらってるから。
笹川 カツゲキキトキトにも最初の頃に乗ってたよね?勝って乗り替わってたけど。
木之前 そうそう。初めて重賞勝たせてもらって。最初の頃はあんなに走るようになるって思わなくて、でもどんどん成長して強くなってくれて。途中から乗り替わったけど、すごくいい経験になったから。
▲大井で開催されるジャパンダートダービーにも出走(撮影:高橋正和)
――大畑騎手が、カツゲキキトキトの攻め馬は本当に大変だと仰ってました。
木之前 そうなんですよ。1頭だと止まったりしちゃって、まともに調教できないんです。だから、毎日4時15分に待ち合わせして併せ馬してるんですけど。
笹川 なにその5分って? 15分間隔で1頭乗るの?
木之前 そうそう、わたしがいないと調教行けないの。
笹川 何頭乗ってるの?
木之前 多くて25頭くらい。1日何頭?
笹川 7頭くらい。
木之前 まぁ1頭にかける時間も違うもんね。
笹川 25頭はキツいなぁ。大井は多い人でも13頭くらいかな。馬場が使えるのが、2時半から8時までだから。けっこう短いよね。
木之前 ナイターはキツいよね。ナイターでやって朝2時半から攻め馬?
笹川 そう。一番キツかったのは2,3年目の頃。競馬もそこそこ乗せてもらってて、攻め馬もたくさん乗ってて。正直、疲れすぎて精神的に追い込まれてた。毎日睡眠3時間くらいだったから。
木之前 それはキツいなぁ。
▲「一番キツかったのは2,3年目の頃。毎日睡眠3時間くらいだったから」
ジョッキーの成長の裏にある、馬との出会い
――笹川騎手はこんなに活躍すると思っていましたか?
木之前 思ってました! やっぱり、センターにいるときから上手かったので。地方競馬で一番シビアな南関東でここまで活躍するなんてさすがだと思うし、同期として誇らしいです。
――センター時代と変わったなと感じるところはありますか?
笹川 メイクしているから、顔が全然違います(笑)。
木之前 そこ?(笑) けどよく痩せたって言われる!
笹川 痩せた、痩せた。だってセンターの頃は体重オーバーとかしてたよね?
木之前 当時はぷくぷくしていたので(笑)。
笹川 こいつ、マジかと思ってたし(笑)。
木之前 だよね〜(笑)。
笹川 腕とかはがっちりしてジョッキーっぽいけど、顔が痩せたよね。
木之前 翼っちは変わらないね。前からこんな感じ。
――笹川騎手が感情を爆発させているところを見たことあります?
木之前 う〜ん…、ないかも。
笹川 いや、あるある。全然あるよ。
木之前 うそ〜、思い出せない。ずっとこんな感じじゃない?
――黒潮盃をクロスケで勝った時、珍しくガッツポーズしてましたね。
木之前 嬉しかったんだ?
笹川 めちゃ嬉しかった…(照)。
▲クロスケで黒潮盃を勝利し喜びをあらわにする笹川騎手(撮影:高橋正和)
――デビューして5年、辞めたいと思ったことはありますか?
笹川 辞めたいはないですけど、ゆっくり休みたいと思ったことはありますね。
木之前 それはあるかも。勝てない時とか、すごく変なレースしちゃって先輩に怒られた時とか。デビューしてすぐの頃は相変わらず泣いてましたし。
――いつ頃から泣かなくなったんですか?
木之前 いつだろう。2年目くらいかな。いつの間にか強くなりました。
――きっかけになった馬はいますか?
木之前 最初に馴致からした2歳が、衝撃的な事故で引退しちゃった時があって。鞍付けからやって、すごく可愛がっていたんですけど、レースで脚が折れちゃって。それでも一生懸命走ろうとするんです。その姿を見て、かなり泣きました。でも、馬が命懸けて走っているんだから、わたしももっと頑張らなくちゃって。
笹川 かわいそうだよね。見るのも辛い…。
木之前 それがあってから強くなったと思います。命を背負っているんだなって。
笹川 本当にそうだよね。馬の命もだし、周りのジョッキーの命も懸かっているわけで。
僕はグランユニヴェールですね。ハイセイコー記念で2着に負けたんですけど、今の僕なら勝ったんじゃないかって。
木之前 そういうのあるよね。
▲ピンク帽が笹川騎手「今の僕なら勝ったんじゃないかって」(撮影:高橋正和)
笹川 技術の未熟さを痛感したし、いろんなことを教えてもらいました。ちょっと難しいところのある馬で、馬との向き合い方、レースへの持っていき方というのをものすごく考えさせられた。人間がいくら勝ちたい勝ちたいと思ってもダメなんだって。すごく勉強させてもらった馬です。
※次回の掲載は10月22日(月)18時予定です
『#祝7152勝キャンペーン〜的場騎手が選んだBEST20 投稿展』を開催!
次開催の大井競馬場では、地方競馬通算7152勝達成を記念して行われた、的場文男騎手にお祝いのメッセージを送るTwitterキャンペーン『#祝7152勝 的場騎手にお祝いのメッセージを送ろう』に寄せられた1千を超える投稿の中から、的場騎手が特にうれしいと感じたBEST20の画像を展示します!
▲展示イメージ
実施日:10月29日(月)〜11月2日(金)
時間:開門〜
場所:L-WING 1階
※外部サイトにリンクします