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2018年秋季・繁殖馬セール開催、最高落札価格馬はキングカメハメハ産駒

  • 2018年10月25日(木) 18時00分

社台グループなど大手牧場の動向は…


 10月24日(水)、毎年この時期に恒例となっている「繁殖馬セール」が北海道市場を会場に開催された。この日は朝から日高地方は雨に見舞われ、セリ開始の午前10時半頃にはかなり本格的な降り方になり、一時は叩きつけるような雨脚となった。前日までずっと晴天が続いていたので場内は泥濘ができるまでには至らなかったが、開始からしばらくの間、雨が降り続いた。

 結果はすでに公表されているように、名簿掲載222頭中、203頭(受胎馬163頭、空胎馬40頭)が上場され、150頭(受胎馬124頭、空胎馬26頭)が落札、売却率は73.89%(受胎馬76.07%、空胎馬65.00%)であった。

 売り上げ総額は税込みで7億5579万4800円(受胎馬6億4996万5600円、空胎馬1億582万9200円)。平均価格は503万8632円(受胎馬524万1658円、空胎馬407万354円)。

 さすがに10億円を突破した昨年秋季の同セール(208頭上場、157頭落札、75.48%、10億7132万7600円、平均価格682万3743円)には及ばなかったが、2015年(7億5843万円)、2016年(7億8023万5200円)と並ぶ、まずまずの売り上げを確保できた。

 当セールは国内唯一の繁殖馬市場であり、とりわけ秋季は、大手牧場からの上場馬が数多いのが特長だ。今年も、栄進堂14頭、下河辺牧場10頭、社台ファーム(コーポレーション、ブラッドメアを含む)30頭(ただし3頭欠場で27頭上場)、ダーレー・ジャパン17頭(2頭欠場で15頭上場)、ノーザンファーム(レーシングを含む)27頭など、これら大手だけで上場馬の半数近く(203頭中95頭)に達し、セリ会場には胆振や日高のみならず、青森などからも多くの生産者が訪れ、活況を呈した。

 また、近年、生産者のみならず、馬主層も繁殖牝馬を買い求める動きが顕著になってきており、販売申込者の中にも、生産地のどこかの牧場に預託していた繁殖牝馬を、オーナーが売りに出すというケースも散見した。繁殖牝馬が投機の対象として扱われ始めている傾向が窺える。

生産地便り

繁殖馬セール35番立ち

 今年のセールでも、注目度の高かったのが、社台グループからの上場馬だ。35番「ウルド」(父ハービンジャー、母ヴェルザンディ、5歳鹿毛、カレンブラックヒルを受胎、販売者・ノーザンファーム)が2052万円(税込)で落札されたのが最初の1000万円超の落札馬で、この馬以降も、62番「プランカ」(父ディープインパクト、母スプリングチケット、5歳鹿毛、ストロングリターンを受胎、販売者・社台ブラッドメア)が1566万円、63番「サトノサファイア」(父ステイゴールド、母ダリシア、4歳栗毛、クロフネを受胎、販売者・社台ファーム)が2052万円、64番「オルトリンデ」(父ダンスインザダーク、母オスティエンセ、12歳栗毛、ロードカナロアを受胎、販売者・社台ファーム)と、立て続けに社台グループからの上場馬が1000万円を突破する落札価格になった。

生産地便り

繁殖馬セール62番立ち


生産地便り

繁殖馬セール63番立ち

 最終的には、社台ファーム(コーポレーション、ブラッドメアを含む)が27頭中26頭を売却し、ノーザンファーム(レーシングを含む)が27頭中25頭を売却。ともにほぼ完売に近い成績を残し、このセールの売り上げに大きく貢献した。

 なお、最高落札価格馬は、81番「ランウェイ」(父キングカメハメハ、母ファーストナイト、6歳鹿毛、ディープインパクトを受胎、販売者・井高牧場)の、4320万円。本馬自身も3勝2着1回、3着1回の成績を残しており、今年度より供用を開始したばかりの若馬であり、何と言っても、「ディープインパクトを受胎」していることが大きなセールスポイントで、注目度がひじょうに高かった。結果的にはセリ上がることなく、一声だけで落札されたには、やや意外な結果でもあった。落札したのは(有)須崎牧場。

生産地便り

最高価格馬81番落札場面


生産地便り

最高価格馬81番立ち

 次点は、154番「レインボークォーツ」(父Mr.Greeley、母マンデラ、10歳栗毛、ミッキーアイルを受胎、販売者・ノーザンレーシング)の3888万円。本馬はワールドエースの半姉という良血である。落札者は(有)杵臼牧場。

生産地便り

次点154番落札場面


生産地便り

次点154番立ち

 また、空胎馬では、157番「ビリーブユアセルフ」(父Sebring、母Private、7歳栗毛、販売者・関口智弘氏)の1998万円が最高価格であった。落札者はARROWFIRLD PASTORAL。

生産地便り

空胎馬最高価格157番立ち

 セリ終了後、主催者の(株)ジェイエス・服部健太郎代表は「このセールは、上場馬の頭数や質によって左右される面がありますが、今回のこの結果については満足できる数字であったと思っています。9月6日の胆振中東部地震によって生産牧場や育成牧場が被害を受け、また朝からの雨という悪天候の中でしたが、多くのオーナー、また海外からもセリに参加して頂きまして、感謝申し上げます。このセールは牝馬の利用価値を高めるのが目的ですし、冬季セールに向けて、さらに出来る範囲で改善できる点を見直して行きたいと考えています」とコメントしていた。

 長らくサラブレッドの生産頭数は横ばいか微減の状態が続いていたが、このところの1歳市場の好況によって、来年は生産頭数が大きく増加すると見込まれている。そうした背景もあり、繁殖牝馬市場も1歳市場に連動する形で、まずまずの景気が続いている。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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