▲有馬記念を過去2勝している蛯名正義騎手 (撮影:下野雄規)
GIが行われる舞台を、実際に勝ったことのある騎手やそのコースを得意としている騎手に解説していただくこのコーナー。暮れの中山の風物詩として、競馬ファンの枠を越えて親しまれる有馬記念。2001年マンハッタンカフェ、2007年マツリダゴッホと過去に2勝を挙げている蛯名正義騎手に、舞台となる中山内回り2500mの特徴、攻略の秘訣を聞きました。(取材・文=藤井真俊)
最も大切なのは最初のコーナーへの入り方
――一般的に“トリッキー”と言われる中山2500m。ドラフトで関係者に希望枠を選択させた2014年の枠順抽選会では、内めの枠から埋まっていきました。やはり内枠が有利なのでしょうか?
蛯名 そりゃあ、やっぱりね。馬の性格とか脚質にもよるだろうけど、基本的には内有利。なぜなら最も大切なのは最初のコーナーへの入り方だから。スタートしてすぐにカーブにさしかかるので、外枠だとなかなかスムーズに取りたいポジションが取りにくいよね。
――道中はどういう部分に気をつけて乗りますか?
蛯名 やっぱり折り合い。どんなレースにも言えるけど、とくに有馬記念は距離が長いから。あとはコース取り。カーブが6回もあるわけで、ずっと外を回っていてはロスが大きい。そういう意味でも内枠は有利だよね。自然とロスを少なくできる。
――2001年のマンハッタンカフェは4番枠でした。となると内枠を生かして思い通りのレースができましたか?
蛯名 いや、それが全然違う(笑)。マンハッタンの時は勝負どころで馬群に入ってしまって、動くに動けず…。完全に踏み遅れてしまった。4コーナーでもかなり外を回る形になってしまったんだけど、それでも勝てたのは彼の能力だろうね。本来ならば前半にもっといい位置を取るか、あるいは途中で早めに上がっていく形が正解だったと思う。馬に助けてもらった有馬記念だったよ。
▲最初の勝利は「馬に助けてもらった有馬記念だった」と振り返った (撮影:下野雄規)
――では2007年のマツリダゴッホは? こちらも2枠3番という好枠でした。
蛯名 こっちは納得のレース(笑)。道中ロスなく立ち回れたし、スパートのタイミングもうまくいった。あとは馬の個性とコース形体がうまくマッチしたよね。マツリダゴッホはコーナーで加速をするのがすごく得意で、この有馬記念でも最終コーナーで前にいたダイワスカーレットを内からビューンと交わしさることができた。
決して長くいい脚を使えるタイプじゃなかったけど、他馬にはない器用さをトリッキーな舞台で生かせたんじゃないかな。マンハッタンカフェのように力のある馬なら、多少強引なレースでも勝てるだろうけど、伏兵がアッと言わせるならマツリダゴッホのようなタイプがうまくハマった時なのかな。
▲2度目の勝利は納得のレースに (撮影:下野雄規)
▲ダイワスカーレットやダイワメジャーをおさえ、伏兵での大金星 (撮影:下野雄規)