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▲アップトゥデイトと、コンビを組む白浜騎手
オジュウチョウサンの参戦で話題の有馬記念ですが、前日の中山大障害もオジュウ不在とあって注目を集めています。今月に入り栗東トレセンでは「もしかしたら少頭数になるんじゃないかって話があって、それならうちの馬も出走を考えようかなぁ」、「今年はオジュウがいないからチャンスだよね」といった声が各陣営から聞こえてきました。
実際には14頭が特別登録を行った中山大障害。「オジュウがいない障害界は俺に任せておけ!」と名乗りを上げる人馬は誰なのでしょうか。有力馬のジョッキー達にお話を伺いました。
「勝ってオジュウに勢いをつけられたら」
最も注目を集めているのはやはりアップトゥデイトでしょう。
昨年の中山大障害ではオジュウチョウサン相手に大逃げを打ち、見せ場を作りました。オジュウチョウサン伝説は好敵手の存在があったからこそ際立ったのかもしれません。
主戦の林満明騎手は今年6月、障害レース2000回騎乗を最後にレース騎乗から退きましたが、「我が子みたいなもので、やっぱり応援しますよ。今年はオジュウがいなくてチャンスだし、勝ってほしいよね。テレビの前で応援します」と笑います。
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▲12月6日、調教に向かうアップトゥデイトとその後ろをついて歩く林満明騎手
その言葉を聞いて「頼もしいです」と答えたのは新たに主戦になった白浜雄造騎手でした。
「アップトゥデイトに乗せていただくなら、中山大障害を勝つことが役割だと思っています。強い馬の実力をスムーズに発揮させることができたら、いい結果がついてくると思います」
コンビを組んで最初の小倉サマージャンプは2着。続く阪神ジャンプSでは途中から先頭に立ち、そのまま逃げ切り勝ちを決めました。
その阪神ジャンプSで最初の障害飛越の際、着地で少しバランスを崩したようにも見えたのですが、「たしかに躓いたように見えるのですが、乗っていて『危ない』とは思わなかったですね。それだけ馬がしっかりしているんでしょう」と白浜騎手。
佐々木晶三調教師も「この馬は体幹が強いね」と話します。
また佐々木師は今年3月の阪神スプリングジャンプを制覇した時、「また背が伸びて、鞍を置くのが大変だった」ともおっしゃっていました。林騎手も「初めて乗った時から5cmくらいは伸びた気がするなぁ」と同調。8歳馬ながら強さに磨きがかかっているのかもしれません。
「勝って、オジュウに勢いをつけられたらいいですね。って、なかなか考える余裕はないと思いますけど(苦笑)。どこまでいけるか分からないですが、レースでは引く(控える)気はないですよ」
3年ぶりにタイトルを取り戻せるでしょうか。
アップトゥデイトへ4本の矢!?
対アップトゥデイトで有力なのはタイセイドリーム、ニホンピロバロン、ルペールノエル、ミヤジタイガの4頭でしょう。
アップトゥデイトが2走前・小倉サマージャンプで2着に敗れた時、2周目向正面で次々とライバルたちが競りかけていくシーンがありました。まずはダンツキャンサーが早めに外から勝負を仕掛けに行き、同馬の脚色が怪しくなると、さらに外から迫ったのはヨカグラ。本命馬・アップトゥデイトに息つく暇を与えず、勝利したのはヨカグラだったのです。
ヨカグラに当時乗っていた西谷誠騎手は「だから1番人気は難しいよね」と本命馬ゆえのレースの組み立ての難しさを語ります。「3本の矢」のように、ライバルたちが結束すればアップトゥデイトに一矢報いることができるかもしれません。
西谷騎手が中山大障害で騎乗するのはミヤジタイガ。前走・イルミネーションジャンプS(鞍上は高田潤騎手)では1周目向正面の障害では逃げ馬の半馬身後ろで障害を飛んだはずが、着地の頃には半馬身前に出ていました。そうして先頭に立つと、中盤からグングンとスピードを上げて後続を離して完勝。
「前走はエグいくらい強かったよね。去年に中山大障害(10着)を経験しているけど、あの時とは体も能力も違うと思います。去年のこのレースを経験してまた馬が強くなっていっているように思うんです。4000mを超える距離がどうかな?って不安はあるんだけどね。サナシオンもそうだったから」
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▲ミヤジタイガに騎乗する西谷騎手
かつて西谷騎手が主戦を務めたサナシオンは障害レースで9戦して7勝(うち重賞2勝)。たった2回の敗戦はいずれも4000m超えの2015年中山大障害(3着)と2016年中山グランドジャンプ(2着)でした。
「3900mまではアップトゥデイトにも誰にでも勝てたけど、4000mを超えると残り200mとかで脚が鈍ってしまったんですよ……」。
しかし、そう話す西谷騎手自身にはストロングポイントが。中山大障害に騎乗予定ジョッキーの中では大障害コースは最多22回騎乗のアドバンテージがあります。(※1999年の障害競走改革に伴いグレード制が導入されて以降のデータ)
「ミヤジタイガ自身は順調にきているみたいだし、楽しみですよね」と笑う西谷騎手がどんなレースをするのかワクワクします。
一方で、大障害コースで最多5勝を挙げるのは石神深一騎手。所属は美浦ですが、今年は栗東のニホンピロバロンに騎乗予定です。
「調教に3回乗りました。徐々に良くなってきていますね。この春の中山グランドジャンプでは最後、コースに出ていく時にオジュウのすぐ後ろにいたくらいの馬だから、オジュウがいない今回はチャンスがありますよね。勝ち鞍トップなんですか? 強い馬があってこそ、そういう騎乗ができるっていうのはあると思いますが、今回も能力のある馬なので上手く誘導してあげたいですね。
5勝もさせてもらったので、坂の下り上りなどは上手に乗れるんじゃないかと思います。僕自身も3連覇がかかっているので、『アップの天敵ジョッキー』って言われるようにがんばりたいですね(笑)」
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▲自身の3連覇もかかる石神騎手「アップの天敵ジョッキーと言われるように」
ルペールノエルとコンビを組む高田潤騎手は重賞レース(障害)で複勝率48.2%と勝負強さを持ちます。
「ルペールノエルは中山がもってこいの馬ですよ。スタミナがあるし、とにかく飛越が上手い!お手本みたいな馬ですね。アップトゥデイトはたしかに強いですが、一矢報いるチャンスがあると思うんです。強いだけじゃ勝てないレース。運とかも味方につけて、人馬共にしっかり準備をしたいですね」
ちなみに高田騎手はライバルになるミヤジタイガにもニホンピロバロンにも騎乗経験があります。
「ライバルのことを分かっているから有利になるかっていうと、『どっちもスゲーよ』って思うくらいですよ」と笑います。
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▲ルペールノエルに騎乗する高田騎手は、ライバル馬にも騎乗経験有り
そしてタイセイドリームは今年の障害リーディングでトップと2勝差の2位につけている平沢健治騎手と出走。
「いい状態で帰厩しています。乗った感じも良さそうですね。タイセイドリームはコースも距離が長いのも飛越も問題ありません。いい能力を持っているので、がんばりたいですね」
練習でチークピーシズを着けてみて、良さそうならレースでも着用するかもしれないとのこと。
ここに紹介した馬以外にも楽しみなメンバーが顔を揃えた中山大障害。
オジュウチョウサンが平地に矛先を変えたいま、新たな王者に名乗りを上げるのはどの人馬なのでしょうか。