▲的場文男騎手が、歴戦を重ねてきた大井ダ2000mをコース解説 (撮影:高橋正和)
GIが行われる舞台を、実際に勝ったことのある騎手やそのコースを得意としている騎手に解説していただくこのコーナー。今回は、地方競馬の暮れの大一番、東京大賞典をピックアップします。舞台の大井ダ2000mを解説いただくのは、大井の帝王・的場文男騎手です。今年8月に地方通算7152勝を達成し、地方競馬通算最多勝記録を更新したレジェンドが、攻略のカギを明かします。
(取材・文=不破由妃子)
砂の入り方をもとに作戦を立てます
──的場騎手がカウンテスアップで東京大賞典を勝利されたときは(86年)3000mの時代でしたが、その後、大井2000mのGIでは、ハシルショウグン(93年)、コンサートボーイ(97年)、ボンネビルレコード(07年)で帝王賞を3勝。そんな的場騎手に、ぜひ大井2000mのコース解説をお願いしたいと思っております。
▲同舞台の帝王賞、2007年ボンネビルレコードでの優勝時 (撮影:高橋正和)
的場 コース解説といってもね、その開催によって砂の入り方が違うので、一概には言えないんですよ。僕の場合は朝の調教にも乗るし、もちろんそれまでのレースにも乗るので、逐一その日の砂の状態を見ますけどね。
──そこで得た砂の入り方をもとに作戦を立てると。
的場 そうですね。大井の2000mは、スタートから最初のコーナーまで500m近くあるでしょう。だから、そのあいだに自分の作戦を実行に移すようにします。内が浅いときはやっぱり内が有利だけど、内が深ければ3頭目あたりの浅いところを走らせたりね。
──大井の馬場を知り尽くしているからこその戦略ですね。
的場 そうでしょうね。ポンと乗りにきて、当日だけレースに乗ったくらいでは、ある程度までしかわからないと思いますよ。
──馬の脚質にもよると思いますが、枠順の有利不利についてはどう感じてらっしゃいますか?
的場 それもね、結局は砂の深さ次第なんですよ。あとは、砂を読んだ上で1コーナーまでにいかにいい位置を取れるか。ボンネビルレコードで勝ったときは、やっぱり内が浅くてね。8枠14番だったけど、そこからスーッと内に入って。
──直線も内から力強く抜け出してきましたよね。
的場 はい。もともと内を狙っていたんだけど、あのレースは道中で武豊さん(シーキングザダイヤ5着)の後ろにつけられたことも大きかった。有力馬だったから、きっとこの馬が道を開いてくれるだろうと思って、ずっと後ろをついていきましたからね。コンサートボーイのときも、ボンネビルに負けないくらい最高に上手くいったレースでした。
──あのときは、3枠3番から道中は3番手の内。ゴール前の石崎騎手(アブクマポーロ)との追い比べは見応えがありました。
的場 最後はアブクマポーロとバトルラインと3頭で4着以下をちぎりましたからね。あのときも、逃げる武豊さん(バトルライン)の後ろにつけられたことが勝因でしょうね。そもそも、コンサートは後ろからいくことが多い馬だったから、あんなに前に行けるとは思っていませんでした。それに、急きょ乗り替わっての一戦だったので、余計に印象に残っています。
──展開もそうですが、当日の砂を読み切り、絶好のポジションを確保したことが勝利につながったわけですね。ということは、的場騎手のレースぶりを通して、ファンも砂の傾向を予測することができると。
的場 砂の入り方だけではなく、そのレースのペースもあるからね。スローペースになれば前が残るし、ハイペースになれば追い込みが利く。ジョッキーにとっては、そのあたりのペース判断もカギになってくると思います。でも、やっぱり大事になってくるのは、その日の馬場作り。人気がない馬であっても、砂の浅いところを走って最高のレースができればチャンスは生まれますから。
──今日はありがとうございました。最後に、東京大賞典というレースにはどんな思い入れがありますか?
的場 やっぱりカウンテスアップが思い出されますよね。大賞典は3歳だけではなく、全世代の有力馬が揃うレース。中央でいう有馬記念みたいなもんだから、みんなが乗りたいレースだと思いますね。
▲2018年8月12日に地方競馬通算最多勝の新記録を樹立、勝利したレースは特別な口取りに (撮影:高橋正和)
▲マトメーター・2に「7152」の数字が刻まれた (撮影:高橋正和)