オジュウチョウサンも、賞賛に値する走りを見せた
3歳牡馬ブラストワンピース(父ハービンジャー)が、断然人気の4歳レイデオロ(父キングカメハメハ)の追撃を封じ、力強く新鋭のGIホースとなった。
ブラストワンピースがこれからさらに強くなることは疑いない(撮影:下野雄規)
有馬記念は活躍馬の引退レースになることもあるが、来季に向けた出発点のレースでもある。グレード制が敷かれた1984年以降、3歳馬の勝利は35年間で最多の「14勝目」となった。これまでの3歳勝ち馬は日本ダービー、菊花賞などのGI勝ち馬がほとんど(GI2着馬が2頭)であり、ブラストワンピースのようにビッグレースに良績のない勝ち馬は初めてだった。
開業10年目の大竹正博調教師は初のGI制覇。この有馬記念は、父である元騎手の大崎昭一氏が初めてGI格の大レースをカブトシローで勝った記念すべきレース(1967年)であり、1973年生まれの名馬「TTG」の1頭グリーングラスで制したレースでもある。ブラストワンピースがこれからさらに強くなることは疑いない。未来展望にふさわしい勝ち馬の誕生だった。
池添謙一騎手のドリームレースでの勝負強さはすごい。これで7勝目「宝塚記念3勝、有馬記念4勝」。武豊騎手と並び最多勝利タイとなった。いつもは中位・後方からの追い込みが多いブラストワンピースを、好スタートから好位の外につけ、最後の4コーナー手前からのスパートも果敢。強気の積極戦法が最大の勝因だろう。ドリームレース7勝は、エンドスウィープの牝馬、ステイゴールド産駒の5勝、そして今回はハービンジャー産駒。サンデーサイレンスや、ディープインパクト産駒ではないところが、池添謙一である。
発表通りの稍重馬場のコンディションは、時計のかかるタフなコンディションに変化していたことも、パワー兼備のブラストワンピースに向いていた。1番人気のレイデオロは予測されたより後方追走になり、勝ち馬が一気にスパートした4コーナー手前で少し離されてしまった。仕掛け遅れではなく、天皇賞(秋)の快時計が示すようにこういう馬場は歓迎ではなかったろう。反応が遅れてしまった。だが、猛然と伸びて最後はクビ差同タイムの2分32秒2(上がりは最速タイの35秒4)。評価は少しも下がらない。中距離のチャンピオンとして5歳の来季も中心の座は譲れない。まだ12戦【7-2-1-2】である。
惜敗後の最終レースを猛然と差し切ったC.ルメールは今年JRA「211勝」に達した。武豊騎手の持つ年間212勝更新にリーチがかかった。最終日は中山で騎乗の予定。
2005年 武豊 212勝…855戦【212-128-112-403】勝率.248 連対率.398
2018年ルメール211勝…764戦【211−132−97−324】勝率.276 連対率.449
C.ルメール騎手のほうがずっと人気の有力馬に騎乗する比率は大きいものの、それにしてもすごい勝率、連対率である。
3着に突っ込んだシュヴァルグラン(父ハーツクライ)はゴール前の勢いをみると、いかにも外枠15番の不利が大きかった。理想は昨年のジャパンCを制した時のように、流れに乗って有力どころをマークしつつ早めに動く形だったはずだが、ずっと外を回されたうえ小回りコースで自分からスパートできなかった。7歳になる来季も現役続行を表明している。能力の衰えなど微塵もない。一段とタフなチャンピオンを目ざしたい。
タフなチャンピオンというと、今季4戦目になるキセキ(父ルーラーシップ)はここで結果を出したかった。各国の歴戦のトップホースはシーズンに4戦くらい珍しくない。でないとビッグレースを勝てないことがある。最大の敗因は、最初にカーブのある中山2500mの外枠14番だったろう。快速タイプではないからダッシュを利かせて先手を奪う戦法ではない。
ジャパンCの自身の前後半バランスは、「1分11秒7−1分09秒2」だった。
今回の2500mは「1分13秒4−(6秒3)-1分13秒1」=2分32秒8。
コースも馬場状態も、ラップも異なるが、気分良く走れる自分のリズムに乗った中盤からしだいにピッチを上げ、さらに離すように後続にも脚を使わせる形にならなかった。スタートして間もなく先頭を奪い、途中から離して差を広げたのは同じようにみえて、有馬記念は前後半バランスがほとんど同じ一定ペース。スタート直後に少々ムリな脚を求められ、3コーナー手前から離すときに再びラップを上げる非常に苦しい形だった。秋4走目で上積みがなかったのはたしかだが、秋4走目だから失速して負けたのだ、というのとは異なるだろう。
注目のオジュウチョウサン(父ステイゴールド)は、夢が現実になるような快走を展望したファンも、さすがに苦しいだろうと考えたファンも、みんなが「あれは立派なレース内容だった」と納得し、賞賛に値するレース内容だった。来季は8歳。しかし、競走馬としていまがピークではないかとする見方に賛成したい。平地か、ハードル界か、明言はされていないが、まだまだがんばるはずである。
モズカッチャン(父ハービンジャー)は果敢なレースを展開したが、ブラストワンピースと良く似た配合でも、牝馬のこの馬はタフな馬場は向いていなかった。
しんがり差詰めに終わったミッキースワロー(父トーセンホマレボシ)も、出遅れはともかく最初から走法のバランスが悪すぎた。滑る馬場をこなせなかった。