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明治以来110年の歴史を持つ伝統行事、西舎神社騎馬参拝が行われる

  • 2019年01月16日(水) 18時00分
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西舎神社騎馬参拝の様子


人馬の無病息災を祈願して約300人の参拝客が集まる


 新春2日、浦河で恒例の「西舎神社騎馬参拝」(主催・浦河町騎馬参拝実行委員会)が行なわれた。毎年、人馬の無病息災と生産馬の活躍を祈願して実施されるこの騎馬参拝は、明治以来110年の歴史を持つ伝統行事である。

 今年は直前に浦河町乗馬公園でインフルエンザが流行したことから、参加する人馬がポニー9頭と乗用馬4頭の計13頭というやや寂しい顔ぶれとなってしまったが、午前10時40分に13騎が西舎神社に姿を現すと、集まった約300人の参拝客が盛んにカメラを向ける光景が見られた。

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ポニー少年団整列


 ひと際目を引いたのは、浦河ポニー乗馬スポーツ少年団の子供たち。昨秋のジョッキーベイビーズ北海道代表として東京競馬場に遠征した藤原結美さん(三石小学校6年)を先頭に、まず女子団員4騎が和装で鳥居をくぐってくると、歓声が湧き起こった。

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ポニー少年団入場


 4騎はそのまま社殿前まで進み、横一列になったところで下馬。揃ってお賽銭を投げ入れ、無事に参拝を終えた。

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騎馬参拝の様子


 朝から雪の降るあいにくの天候だったが、人馬が西舎神社に到着する頃には雪も止んで、騎馬参拝の後は、恒例の「新春餅撒き」が行なわれた。紅白に彩られた餅が一斉に撒かれると、数多くの参拝客が縁起物を拾おうと大いに盛り上がった。

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恒例「新春餅撒き」の様子


 ところで、この騎馬参拝は、10年前まで浦河神社で実施されていた。JRA日高育成牧場から約10キロの道のりを騎馬の隊列でやってきて、多くの参拝客が見守る中、101段ある石段を騎馬で駈け上がるのだ。乗用馬のみならず、ポニーでも少年団の子供たちが(両側に大人が付き添って、だが)騎馬のまま駆け上がり、ひじょうに迫力のある行事であった。

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2009年の石段駆け上がり風景


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ポニーのみならず乗用馬も参加した


「騎馬参拝100周年」を記念して大々的に行なわれたのが2009年1月2日のこと。しかし、それを最後に浦河神社では実施できなくなってしまった。なぜ中止に追い込まれてしまったのかを説明するのは難しいのだが、要するに「神社側の希望」と「実行委員会側の希望」とが食い違うようになったのが最大の原因である。

 神社側は、「騎馬参拝そのものに反対しているのではなく、せめて三が日は一般の参拝客のために避けて頂けないか」という希望であり、実行委員会は「それぞれ仕事の都合などあり2日の実施は動かせない」と主張。双方の意見が平行線のまま調整がつかず、ついに浦河神社での実施が翌年から見送られることになったのである。

 以来、水面下で様々な折衝、話し合いが持たれたとも聞くが、妥協点を見いだせぬまま今日に至っている。歴史の浅い北海道において、100年の伝統を持つ行事などそうそうあるものではなく、中止を余儀なくされてしまったことは、今思えば、何とも残念な出来事であった。

 伝統行事は、続けてこそ価値がある。一度中止に至れば、復活、再開は並大抵のことではない。この10年間、騎馬参拝はやむなくJRA日高育成牧場から最も近いところの西舎神社にて実施されているが、携わる人々の負担こそ格段に軽減されてはいるものの、参拝客からしてみると「やはり石段駆け上がりがないと寂しい」との声が多々ある。

 浦河神社で実施していた時代には、報道各社もこぞって取材に訪れ、人馬が石段を駆け上がる勇壮な姿が、その日のニュースで取り上げられていた。まさしく「絵になる」行事だったのである。

 馬産地・浦河をPRする貴重な行事として、注目度抜群の催しものだっただけに、今更ながら中止の止むなきに至ったことは何としても残念でならない。

 復活はそうたやすいことではないとは思うが、石段駆け上がりがもう一度見たいと、西舎神社の騎馬参拝を見る度にかつての浦河神社騎馬参拝のことが思い出されるのだ。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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