同期や兄弟子の海外修行に刺激を受けて

──昨年は、同期の坂井瑠星騎手が約1年間、オーストラリアに武者修行へ。いろいろ話を聞いて、刺激を受けたのでは？


菜七子　はい。同期の瑠星からは、すごく刺激を受けますね。オーストラリアはそれほど時差がないので、瑠星が向こうにいるときから同期のみんなでしょっちゅう連絡を取っていました。「すごい女性ジョッキーがいるよ」って、そのジョッキーの動画を送ってくれたり。

──南サウス地区のリーディングジョッキー、ジェイミー・カーですね。

菜七子　そうです。「本当に上手い」と瑠星が絶賛していて。

──彼女の動画を見て、どんなことを感じましたか？

菜七子　曖昧な表現になってしまうんですが、鞍はまりがすごく良くて、ピタッと乗っている印象を受けました。それに、ただ乗っているだけではなくて、馬を操っている感じがしました。どうしてそう見えるのか、具体的に説明するのはなかなか難しいんですけど、レースの映像を観て、瑠星の言う通りすごく上手だなと思いましたね。一度近くでレースを観てみたいです。

──野中騎手や瑠星騎手が身近にいると、いつかは自分も…という気持ちになるのでは？


菜七子　そうですね。海外に行きたい気持ちはあります。でも、なかなか決断する勇気がなくて…。やっぱりタイミングを考えないといけないでしょうし、英語もしっかり勉強していかないとダメですしね。

──いつかチャレンジする姿を見てみたいです。

菜七子　はい。いつか海外に修行に行きたいという気持ちはずっと持っています。女性ジョッキーがたくさん活躍しているオーストラリアも魅力的ですし、フランスにも女性ジョッキーに対する減量特典がありますからね。

“今”を精一杯頑張って、どんどん変化していきたい

──JRAでも3月から女性ジョッキーの恒久減量制度が始まりますね。菜七子騎手は、現在の1キロ減から3キロ減になるわけですが、この“2キロ”の影響力についてはどう感じていらっしゃいますか？

菜七子　どうなんでしょう…。私自身が変わるというよりは、周りの見る目が変わってくるんじゃないかと思いますね。いろんな意味で、「3キロ減だから」と言われることがきっと多くなるのかなと思います。

──順調に競馬学校を卒業となれば、再来年には菜七子騎手に続く女性ジョッキーのデビューが予定されていますが、先輩として責任感のようなものは感じますか？

菜七子　このあいだ研修でうちの厩舎に来てくれて(永島まなみ騎手候補生)、いろいろ話をしたり、併せ馬をしたりしたんですけど、うかうかしていたらアッという間に抜かれてしまうなと。責任感というより、むしろより一層気を引き締めて頑張らなくちゃと思いましたね。今後、女性ジョッキーも増えてくると思いますが、“女性ジョッキーとして”というより、ジョッキーとしてしっかり結果を残していきたいです。


──周囲の評価にもあるように、ジョッキーとして日々進化している菜七子騎手ですが、3年後や5年後の自分を想像したとき、何かビジョンはありますか？

菜七子　ん〜、まだそこまでは想像できないですね。ホントに今は今のことを考えていたいですし、もっと言えば今週の競馬のことを考えていたい。自分が3年後にどうなっているのかはわかりませんが、自分でも3年後、5年後が楽しみに思えるようにまずは“今”を精一杯頑張って、どんどん変化していきたいです。

──その変化の先には、どんな自分を見据えていますか？

菜七子　「追い方がよくなったね」とか「上手くなったね」と言っていただけるのは本当にうれしくて、もっともっと頑張ろうという向上心につながっています。

　ただ、当然ですが、「上手くなったね」の比較対象は1年目とかの私ですよね。でも、そうではなくて、たとえば18頭の競走馬、18人のジョッキーが競馬をしているなかで、「あのジョッキー上手いね、誰だろう？」って言われるようなジョッキーになりたい。いい意味で、私だとわからないような、そんなジョッキーになりたいです。