直接輸送の禁止を解除
オーストラリアと香港の間の検疫協定が緩和され、4月28日にシャティン競馬場で行われる香港チャンピオンズ・デイに、オーストラリア調教馬が参戦しやすくなる見通しであることが明らかになった。
香港ジョッキークラブが中国本土の広東省に従化トレーニングセンターを開設し、従化とシャティン競馬場の間で馬の行き来が始まるにあたって、オーストラリアの衛生当局が検疫規定を厳格化したのが、2017年10月のことだった。
中国本土を馬の疾病の「清浄地」とは認めていなかったオーストラリア当局は、シャティン競馬場も「汚染地」となることを懸念。香港からオーストラリアへ馬を直接輸送することを禁じたのである。香港に渡った馬がオーストラリアに入国するには、第三国に6か月以上滞在することを義務づけたため、これにより、オーストラリア調教馬が香港を舞台とした国際競走に出走することは、現実的にはほぼ不可能になった。
実は、昨年12月のG1香港マイル(芝1600m)に、クリス・ウォーラー厩舎のカミンスルーが参戦したのだが、カミンスルーはレース後に香港からドバイに移動。現在もドバイに滞在し、メイダン競馬場で開催されているカーニバル開催でここまで2戦している。
オーストラリア当局による検疫協定厳格化の影響は、実は日本馬にも及んでいた。というのも、4月の香港チャンピオンズ・デイに参戦した日本馬は、日本に帰国後、6か月経過しないとオーストラリアに入国できなくなったため、11月第1火曜日に開催されるメルボルンCに参戦することが難しくなっていたのである。
香港ジョッキークラブとオーストラリア当局はその後、局面打開に向けて折衝を続けてきたが、このたび、オーストラリア当局が広東省の従化トレーニッグセンターのあるエリアを「清浄地」と認定するメドが立ったのだ。そうなると、シャティン競馬場が「汚染地」となる懸念は解消したとの見解が成立し、検疫協定を緩和出来る見通しとなったのである。具体的には、シャティン競馬場で開催される国際競走に出走したオーストラリア調教馬が、レース後に直接オーストラリアに戻れることになるのだ。
まだ個別の馬名が挙がっているわけではないが、香港ジョッキークラブは、4月28日にシャティンで行なわれるG1クイーンエリザベス2世C(芝2000m)、G1チャンピオンズマイル(芝1600m)、G1チェアマンズスプリントプライズ(芝1200m)に、オーストラリアからの参戦があることを期待している。
さて、その香港シャティン競馬で今週末(17日)に行われるのが、香港4歳シリーズ最終戦の香港ダービー(芝2000m)である。
本命視されているのは、ジョン・サイズ厩舎のワイクク(セン4、父ハーバーウォッチ)だ。アイルランド産馬のワイククは、タタソールズ・アイルランドの9月1歳市場にて3万3千ユーロで購買され、ジョン・オックス厩舎からデビュー。2戦1勝の成績を残した後に、香港に移籍している。
今年1月1日にシャティンのクラス3のハンデ戦(芝1400m)で、移籍2戦目にして香港における初勝利を挙げると、これを皮切りに快進撃がスタート。3月2日にシャティンで行なわれたクラス2のハンデ戦(芝1800m)まで、4連勝を続けている。手綱を取るのは、香港に復帰したJ・モレイラだ。
ワイククのライバルと目されているのが、フランキー・ロー厩舎のダークドリーム(セン4、父オールアメリカン)である。オーストラリア産馬のダークドリームは、ケリー・パーカー厩舎から17年11月にデビュー。10戦し、G1クイーンズランドダービー(芝2200m)、G3ラフハビットプレート(芝2000m)という2つの重賞を含めて4勝を挙げている。
その後、香港に移籍。昨年12月23日にシャティンのクラス2のハンデ戦(芝2000m)を制して移籍2戦目にして香港における初勝利を挙げると、続いて出走した4歳シリーズ緒戦の香港クラシックマイル(芝1600m)が4着。更に4歳シリーズ2戦目の香港クラシックC(芝1800m)で2着となっている。この馬にとって距離が2000mに伸びるのは、間違いなくプラスに作用するはずだ。
この他、香港クラシックマイルの勝ち馬で香港クラシックCは4着だったフュローレ(セン4、父ピエロ)や、香港クラシックマイル2着の後に香港クラシックCを制したミッションタイクーン(セン4、父ウリトゥンタイクーン)らが有力視されているのが香港ダービーだ。
その内容次第では、G1クイーンエリザベス2世Cの勢力分布にも影響を及ぼす可能性があるだけに、日本の競馬ファンも注視すべき一戦と言えそうだ。