「こんにちは! こんしゅうのおうかしょうにでます、ぐらんあれぐりあです!」
桜花賞に出走を予定する藤沢和雄厩舎のグランアレグリア。デビュー戦(1着)からサウジアラビアRC(1着)、朝日杯FS(3着)とこれまで牡馬に混じって走り、2歳女王ダノンファンタジーにも唯一先着している彼女。男勝りな頼れるお姉さんなのかと思いきや、素顔はやっぱりまだあどけなくてかわいらしい女の子。そして、意外な一面も判明?! そんなグランさんの1日をちょこっと覗かせていただきました。
(取材=佐々木祥恵)
グランアレグリアが過ごす藤沢和雄厩舎を訪ねたのは、3月27日(水)。午後の作業をひと通り終えた16時半過ぎに、担当の渡部貴文調教助手に話を聞く。
厩舎では、グランと呼ばれている。渡部助手も、やはりグランと呼んでいる。渡部助手がグランの担当になったのは、2戦目のサウジアラビアRC(GIII)からだった。「小柄で華奢な女の子」というのが最初の印象で、顔立ちも可愛らしく、いかにも女の子というタイプの馬だった。だがいざ跨ってみると「この馬はちょっと違う」と感じたという。新馬、サウジアラビアRCと2連勝で、朝日杯FS(GI)に参戦。牡馬に交じって1番人気に推されていたが、3着に敗れて連勝はストップした。
「結果は残念でしたけど、男馬に混じってのGIレースで3着ですから、普通に考えればすごいことですよね」
渡部助手に教えてもらった、藤沢厩舎の午前の流れはざっと次の通り。
「仕事は調教開始時間の2時間半前から始まります」
今の時期は、6時から調教開始なので、仕事は3時半からだ。
「まず馬房の寝藁を上げた後は、飼い葉を作って、鞍を着けるなど馬装をして、前運動に出ます」
前運動とは調教前のウォーミングアップといったところか。その後、南馬場や北馬場等の調教コースへと向かう。
藤沢厩舎所属の杉原騎手を背に「きょうもがんばります」
取材をした27日(水)は、桜花賞の1週前追い切りが南のウッドチップコースで併せ馬で行われ、その後は上がり運動をしてクールダウン。厩舎に戻ってくると馬体の手入れをして、馬房に戻ってここでようやく朝飼い葉となる。これで午前のスケジュールは終了する。
「おいきり、おわったよ! どうだった?」
ちなみに藤沢厩舎では、飼い葉は1日3回。それぞれの馬の担当者が、愛情込めて飼い葉を作っている。
「飼い葉の時間は、朝の調教を終えてからの手入れの後と、午後4時半、午後7時ですね」
グランの好物は青草だが、主食ではないのでたくさんは与えてはいない。女の子らしく繊細な面があり、食欲旺盛というタイプではないようで「飼い葉を食べるきっかけになってくれればと青草をあげています」とのことだった。
この日は、午後3時から桜花賞に向けて競馬週刊誌、スポーツ紙等の立ち馬写真撮影も行われたのだが、カメラの前に登場したグランアレグリアは、スラッとした垢抜けた馬体が目を引き、その瞳はキラキラ輝いていた。
キラキラの瞳、とっても美人さんです!
「どう!? きれいにとれた?」
16時半過ぎ、再び厩舎を訪ね、馬房のグランアレグリアと対面する。扉を開けるとカメラに興味津々で、顔を伸ばしてきた。
「またかめらきた! こんどはなに!?」
「基本大人しい馬ですよ。人懐っこくて可愛いタイプですね。すぐにカッとなるところもありますが、競走馬ですからね」
1番ご機嫌斜めになるのは、待たされた時。
「時間に余裕を持って鞍を着けるので、運動に出るまでに何分か待たされるんですね。その時は怒っています。牡馬はどちらかというと威張っていることが多いんですけど、牝馬はよく怒ってますね」
そんなグランの普段の馬房での過ごし方は?
「よく寝ている馬もいますけど、この馬はいつまでも寝っ転がっているというタイプではないです。馬房ではボーっとしているか、ラジオを聴いているかですね」
馬房の外側にくくりつけてあるラジオのあたりに顔を近づけ、耳を傾けているそうだ。ただしFMが入らないため、流れているのはいつもAM。音に慣らすのが目的ではあるが、今ではすっかりグランの日課となっている。
「相撲中継が嫌みたいで、相撲が始まるとラジオから離れます。国会中継はよく聴いてるので、政治には詳しいと思いますよ(笑)」
グランが聴いているラジオ。高校野球もあんまり興味はないようで、トーク番組も好きなんだそう。
可愛くて、でも怒りっぽくて、ラジオが好き。走らせても凄いけれど、普段着のグランアレグリアもまた魅力的だった。