改修されたニューバリー競馬場でギニーズプレップを観る
シーズンを迎え3歳・古馬ともに注目のレースが実施
13日(土曜日)に、英国のニューバリー競馬場を舞台とした開催に出向いた。
近年ではフランケル(2011年)やキングマン(2014年)が制している、二千ギニーに向けたプレップレースのG3グリーナムS(芝7F)や、千ギニーに向けたプレップレースであるG3フレッドダーリンS(芝7F)が組まれた開催である。
筆者は、同じく二千ギニーや千ギニーに向けたプレップが行われるニューマーケット競馬場を舞台としたクレイヴン開催には毎年のように出向いているのだが、ニューバリーのギニーズプレップに足を運ぶのは90年代半ば以来のことで、ギニーズプレップに限らず、実に20年以上「ご無沙汰」をしていたのがニューバリー競馬場だった。
例年なら、火曜日〜木曜日に組まれたクレイヴン開催が終わった後の週末に行われるのがニューバリーのギニーズプレップで、クレイヴン開催が終わると追い立てられるように帰していた筆者は、これを長年にわたってスルーしていたのだ。
だが今年は、ニューバリー開催がクレイヴン開催の前の週末に組まれるという、多くの関係者が「初めてだろう」という日程になり、例年より2日早く英国入りすればニューバリー開催にアテンドすることが可能とわかった段階で、そういうスケジュールを組んだわけだ。
その後、無敗の2歳牡馬チャンピオンで、欧州2歳ランキングでフランケルと同等のレイティング126を獲得したトゥーダーンホット(牡3、父ドゥバウィ)が「グリーナムSで始動」というニュースが伝わり、これはツイていると大喜びしたのだが、最終追い切りが行われた10日(水曜日)の夜に、ソエが出て回避することになり、トゥーダーンホットの3歳緒戦に立ち会うことは、残念ながらかなわなくなった。だがそれでも、出向くだけの価値は充分にあった開催だったと思っている。
グリーナムSの冠スポンサーとして、今年を皮切りに3年契約を結んだのが、トゥーダーンホットを生産し所有するウォーターシップダウン・スタッドだ。ウォーターシップダウン・スタッドとは、作曲家アンドリュー・ロイドウェバー男爵と、夫人のマデレーヌ・ロイドウェバーのご夫妻によって、1992年から営まれている牧場だ。
ロイドウェバー男爵と言えば、「ジーザスクライスト・スーパースター」、「エビータ」、「キャッツ」、「オペラ座の怪人」など、数々の大ヒットミュージカルをこの世に送り出し、1992年にロード(卿)、1997年にバロン(男爵)の称号を賜った、近代の英国を代表する作曲家だ。
そのウォーターシップダウンズがスポンサードするレースとあって、当日のニューバリーには大作曲家ご本人も登場。競馬関係者と気さくな交わりを見せていた。そして、これは後になって知ったことだが、13日のニューバリーには、公衆の面前にはお出ましにならなかったものの、お忍びでエリザベス女王も来場されていたというから、格式という点で英国の競馬はやはりモノが違うのであった。
ニューバリーは2012年から施設の大改造に着手。駐車場を含む周辺エリアや、場内のパドックエリアなど、ほとんど新しい競馬場と見紛うほどの変貌ぶりだった。ニューバリーと言えば、目の前に鉄道駅がある競馬場として知られているが、最も驚いたのは、スタンドから見て左手側にあるパブリックパーキングのすぐ横に、鉄道を跨ぐ車両用のブリッジが建設されていたことだった。
地域社会と競馬場によるジョイントヴェンチャーによって建設されたブリッジとのことで、かつてに比べると、車でのアクセスも格段に便利になっていた。さて、肝心の競馬である。牝馬のG3フレッドダーリンSは、3頭が鼻面を揃えてゴールする大接戦となった中、ジェラール・モッセが乗る4番人気のダンドゥ(牝3、父ダンディマン)が優勝。
昨年9月にニューマーケットで行われたG2ロックフェルS(芝7F)で、ジャストワンダフルの2着となっていた馬で、順調に冬を越えたことをアピールした。この結果を受け、千ギニーの前売りでオッズ11〜13倍の2〜4番人気に浮上している。
牡馬のG3グリーナムSは、道中4番手で競馬をしたモアサー(牡3、父ショーケイシング)が、残り2F標識の手前で鞍上J・クロウリーのゴーサインが出ると、一気の瞬発力を発揮して先頭へ。抜け出してから大きく外に寄れる若さを見せながらも、後続に3/4馬身差をつけて優勝を飾った。血統背景から、1Fの距離延長は疑問で、果たして二千ギニーに向かうかどうかは、現段階では未定だ。
またこの日のニューバリーでは、古馬のG3ジョンポーターS(芝12F)も行われ、重賞3勝馬で、昨秋のG1メルボルンC(芝3200m)で2着に健闘しているマーメロ(牡6、父デュークオヴマーマレイド)が優勝を飾っている。
3歳勢も古馬勢も、本格的に動き始めたヨーロッパの競馬に、日本の皆様もぜひご注目いただきたい。