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【騎手のGIコース解説】松岡正海騎手が語る春天攻略法&ウインブライトで挑む香港QEIICへの意気込み(無料公開)

  • 2019年04月21日(日) 18時02分
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▲松岡正海騎手が天皇賞(春)の攻略法ポイントをわかりやすく解説 (撮影:下野雄規)


現役騎手にコース指南をしてもらう当コーナー。天皇賞(春)の舞台となる京都外回り芝3200メートルについて解説するのは松岡正海騎手(34)。2009年に12番人気のマイネルキッツを勝利に導き、大波乱を起こした。コース攻略のポイントをレクチャーしてもらいつつ、天皇賞当日にウインブライトで挑む香港GI・クイーンエリザベス2世Cへの熱い決意を語ってもらった。

(取材・文=東京スポーツ・藤井真俊)


1200メートルのレースの感覚に近い


――これまで天皇賞(春)には5回騎乗して1着1回、2着が1回という成績。ともにマイネルキッツ(2009年、2010年)とのコンビでした。

松岡 マイネルキッツは折り合いに不安のない馬で、それが長距離で武器となりました。でも勝った2009年は正直、うまくいったレースでしたね。向正面から2周目の3コーナーにかけて、内がポッカリ空いていたので、思い切ってそこに飛び込んだんです。ハッキリ言ってギャンブルでしたけど、前哨戦の日経賞(2着)でアルナスラインに負けていましたから、どこかでその差を埋めないと…と思っていて。

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▲2009年の天皇賞(春)優勝時 (C)netkeiba.com


――結果、そのアルナスラインを3/4馬身下してV。ゴール後には随分と派手なガッツポーズをしていました。

松岡 若かったから(笑)。あとはホッとした気持ちもあったかな。もともと中京記念に向かう予定だったところを、お願いして日経賞から天皇賞へと使ってもらったんで。自分自身にプレッシャーもかけていたし、そこから解放された部分もあったかもしれない。

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▲「自分自身にプレッシャーもかけていたし…」と松岡騎手 (C)netkeiba.com


――翌2010年はジャガーメイルの2着。直線では一旦、完全に抜け出す場面を作りましたが…。

松岡 長らくコンビを組ませてもらって、マイネルキッツの乗り方はよく分かっていたので、自信を持って乗りました。外枠でしたけど、折り合いの不安はありませんから、積極的にポジションを取りに行って距離ロスを少なくするイメージ。勝負どころでは長所である“持久力”を生かすべく早めにスパートしました。

 最後に差されてしまいましたが、3着には5馬身差。あれより仕掛けを遅らせても、たぶん勝ててはいなかったんじゃないかな。王道の競馬をしての2着ですから、結果は残念でしたけど、内容的には悔いなし。清々しい気持ちでしたよ。

――それではコース攻略のポイントを教えてください。

松岡 “引っ掛からないこと”ですね。場所としては最初の3コーナーの下りが1番の肝。折り合いに不安のある馬だとそこで引っ掛かってしまうので、いかにスムーズにクリアできるか。

 でも折り合いに注力しすぎて、抑えすぎてしまってもダメ。そうこうしてるうちに、前との差が開きすぎてしまって、取り返しのつかないことになる。だから穴をあけるのは、得てして前に行ける馬ですよね。ビートブラック(2012年=14番人気)とか、イングランディーレ(2004年=10番人気)とか。

――確かに。2周目の坂の上り下りもポイントとしてよく挙がりますが?

松岡 う〜ん。個人的にはあんまり。2周目の3コーナーあたりからは、もう流れに乗っていくしかないですから。そこにいたるまでのプロセスこそが重要で、それが集約されるのが最初の3コーナーの下りだと思ってます。

――枠順はどうでしょう。やはり内枠が有利ですか?

松岡 それはもちろん。いいポジションを取りやすいので。ただスタートを出て、チンタラ走っていてはダメですよ。ある程度は出していかないと、外からどんどん前に入られてしまうので。でも折り合いに不安があるようだと、出してはいけない…。だからこれもさっきの話と重なりますが、やっぱり重要なのは“引っ掛からないこと”なんです。

――なるほど。となると長丁場ながら、様々なポイントが前半にあるといことですね。

松岡 はい。自分の中では1200メートルのレースの感覚に近いものがあります。最初のホームストレッチまでに、勝ち負けを意識できる態勢を整えておく必要があるので。おまけに古馬のレースですから、菊花賞のように適性の異なる馬が展開をかき乱すことも少ない。となると、より“前半”が大事になってきます。

ウインブライト、心身ともに充実


――大変参考になりました。ちなみに松岡騎手は今年、天皇賞(春)の当日は香港でクイーンエリザベス2世Cに騎乗しますね。コンビを組むウインブライトの手応えも聞かせてください。

松岡 順調ですよ。放牧から戻って、追うごとに体調は上向いてきています。出国検疫中の1週前追い切りにも乗って、当週は現地で火、水曜と乗る予定。その後は日本に戻って土曜の東京競馬に騎乗し、翌日また香港でレースを迎える段取りです。何ごとも無ければ、前回と同じくらいのコンディションで臨めると思いますよ。

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▲中山記念優勝時のウインブライト (撮影:下野雄規)


――初めての海外遠征。コースも走り慣れた中山ではありません。

松岡 コースに関しては全く気にしてないです。この馬は状態と結果がリンクする傾向にあるので、デキさえ良ければどんな舞台でも走れると思ってますから。シャティン競馬場は時計がかかるそうなので、むしろ向いているのではないかと思うくらい。

 ただ輸送に関してはやってみないと分からないですよね。ま、そこは自分の力の及ぶところではありませんから気にしても仕方がないかな、と。でもウインブライト自身は、去年の同時期より体が20キロくらい増えて、心身ともに充実してるんでね。きっとクリアしてくれると思ってます。

――2歳時から“この馬でGIを”と言っていましたが、ようやく叶えるチャンスがやってきました。

松岡 楽しみですね。今回は自分がこれまで騎手として経験してきたことの集大成だと思ってます。レースはもちろん、普段の調教から関わらせてもらっているので。自分の技術が一体、どこまで世界に通用するのか。ひとつの答えが出るはずです。いい結果が出たなら、自信を深めてさらに高い目標へ向けて進むのみ。

 あ、結果的にダメだったとしても騎手は辞めませんよ! そしたらまた一から勉強するんで(笑)。でも本当に騎手として…いや、これまで生きてきたことの、現時点での集大成だとは思ってます。

――相変わらず熱いですね。

松岡 熱いのは自分だけじゃないですよ。例えば“ウイン”のオーナー(岡田義広氏)だって相当に熱い。ウインマーレライがラジオNIKKEI賞(2014年)を勝った時に、泣いてくれたような人ですから。毎日のように北海道で寒い中、お産や馴致に汗を流してくれていて…。そうやってみんなで馬を作ってきて、最後のバトンを委ねられているのが自分なんですから、それに応えなきゃあ男じゃないでしょう。

 ウインブライトには5つ重賞を勝たせてもらいましたが、やはりGIを勝たなければ意味がない。本当にそれくらい特別な存在だと思ってるんで、あの馬のことは…。うん。頑張ってきます。

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▲「騎手としての自分の集大成」、大きな決意を持って香港へ挑む (撮影:下野雄規)

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