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ギャンブル要素の強い配合だが大仕事を期待したいモーベット

  • 2019年05月08日(水) 12時00分
●エブリワンブラック(牡 栗東・武幸四郎 父ブラックタイド、母シュガーハート)

 2年連続年度代表馬となったキタサンブラック(16年ジャパンCなどGIを7勝)の全弟。その4分の3兄ショウナンバッハ(父ステイゴールド)は中日新聞杯(GIII)2着、アメリカJCC(GII)3着、新潟記念(GIII)3着などの成績がある。キタサンブラックの非凡な能力は母のポテンシャルの高さがある程度ベースとなっている。

 本馬は2017年のセレクトセール当歳に上場された。ディープインパクトやロードカナロア産駒の良血馬ならともかく、「ブラックタイド×サクラバクシンオー×ジャッジアンジェルーチ」というマイナーな配合構成であるため、兄が走っても馬そのものが良くなければ値段は上がらない。本馬のデキは素晴らしく、血統を抜きにしてもそれなりの評価をされるであろうと思わされる馬体で、落札価格は1億4500万円(税抜)だった。

 偉大すぎる兄ほどの能力を発揮できるかどうは分からないが、重賞級の期待は掛けられる。芝向きの中距離タイプ。

●カトゥルスフェリス(牝 美浦・藤沢和雄 父ディープインパクト、母ステファニーズキトゥン)

 母ステファニーズキトゥンはブリーダーズCフィリー&メアターフ(米G1・芝9.5f)など米G1を5勝した芝の名牝で、Robertoクロスを持つKitten's Joy産駒、というニックス配合から誕生した。Kitten's Joyは芝向きでありながら北米リーディングサイアーとなった名種牡馬。母は血統構成が重厚でありながら末脚が切れたところが良く、Sadler's Wellsを持ち、Robertoクロスを併せ持つ、といった配合にありがちな鈍重さはないだろう。

 ディープインパクトはIntikhabと相性が良く、少ないサンプルからダノンプレミアム、サトノラーゼンといった活躍馬が出ている。本馬の2代母Unfold the RoseはIntikhabと配合構成が似ているのでおもしろい。芝向きの中距離タイプでクラシック向きの底力に恵まれている。

●サトノアレックス(牡 美浦・古賀慎明 父ヘニーヒューズ、母ミラクルレジェンド)

 グレートタイム(18年ジャパンダートダービー-Jpn1・3着、18年ユニコーンS-GIII・2着/父キングカメハメハ)の半弟。母ミラクルレジェンド(父フジキセキ)はエンプレス杯(Jpn2)をはじめ多くの重賞を勝って牝馬ダート路線の女王として君臨した。母の半弟ローマンレジェンドは東京大賞典(GI)など4つの重賞を制覇。2代母パーソナルレジェンドはターンバックジアラームH(米G3・ダ9f)、ステージドアベティH(米G3・ダ8.5f)の勝ち馬。このように優れたダートホースが続出するファミリーで、母はフジキセキとDeputy Ministerのニックス(カネヒキリ、サウンドトゥルー、ホワイトフーガなどが出る)を持つ。

 繁殖牝馬としてこれまで3頭の子を産んでいるが、いずれも勝ち上がっており、前述のグレートタイムのほかにコンプリートベスト(3勝/父エンパイアメーカー)が出ている。本馬の「ヘニーヒューズ×フジキセキ」という組み合わせは成功しており、北海道2歳優駿(Jpn3)を勝ったドンフォルティス、浦和桜花賞を勝ち東京プリンセス賞で2着となったプロミストリープが出ている。半兄グレートタイムと同じく重賞級の活躍を期待したい。

●ミレニアムクロス(牡 栗東・斉藤崇史 父ハーツクライ、母アドマイヤテレサ)

 コーフィールドC(豪G1)とダイヤモンドS(GIII)を制したアドマイヤラクティの全弟、ホープフルS(GI)2着馬アドマイヤジャスタ(父ジャスタウェイ)の4分の3弟。母アドマイヤテレサは阪神牝馬S(GII)4着馬。母の父エリシオは凱旋門賞(仏G1・芝2400m)を、2代母の父CaveatはベルモントS(米G1・ダ12f)を勝つというスタミナ豊富な血なので、父ハーツクライの長距離適性も相まって、アドマイヤラクティはステイヤーとして大成した。ハーツクライはSeattle Slewと相性良好で、このパターンから多くの重賞勝ち馬を出している。

 さらにNijinskyを併せ持つパターンからはカレンミロティック、エニグマバリエート、タウレプトンなどの良駒が出ている。全兄が頭角を現したのは古馬になってからなのでPOG向きとはいえない面もあるが、素質は確かだろう。芝向きの中長距離タイプ。

●モーベット(牝 美浦・藤沢和雄 父オルフェーヴル、母アイムユアーズ)

 母アイムユアーズは現役時代にフィリーズレビュー(GII)、クイーンS(GIII)など4つの重賞を制覇し、阪神ジュベナイルフィリーズ(GI)2着、桜花賞(GI)3着など、GIでも上位争いをした強豪だった。本馬はその2番子。

 母はFairy King=Sadler's Wells≒Nureyev 2×4・5で、本馬はサンデーサイレンス3×4、ノーザンテースト4・5×5。さらに、母が持つFairy King、Sadler's Wells、Nureyevは、オルフェーヴルの2代母エレクトロアートと配合構成が似ているので、エレクトロアート≒Fairy King=Sadler's Wells≒Nureyev 3×3・5・6。

 仮に牡馬に出ていたらパワー過多で避けたい配合だが、柔らかめに出る傾向がある牝馬ならばイチかバチかで狙ってみても面白い。底力抜群と思われるので気性とスピード面に問題がなければ芝中距離で大仕事をしてもおかしくない。

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68年生まれ。血統専門誌『週刊競馬通信』の編集長を務めたあと97年からフリー。現在は血統関係を中心に雑誌・ネットで執筆活動を展開中。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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